音楽と発話に対するヒトとサルの脳の応答

 音楽と発話に対するヒトとサルの脳の応答に関する研究(Norman-Haignere et al., 2019)が公表されました。この研究はオンライン版での先行公開となります。発話と音楽はヒトに特有なものと考えられており、そこに含まれる倍音の周波数成分が、ピッチ(音の高低の度合い)として認識されます。ピッチを判別する能力は、発話と音楽にとって重要です。ヒトの場合、ピッチの知覚に関係していると考えられている脳の聴覚野は、雑音よりも倍音に対して強く応答しますが、これと類似した脳領域が他の動物に存在するのか、分かっていません。

 この研究は、機能的MRIを用いて、人工の倍音と録音されたマカクザルの発声などの天然の倍音に対するヒトとマカクザルの脳の応答を測定し、ピッチのない雑音に対する応答と比較しました。1つの実験では、4人のヒト被験者が倍音に対して強い応答を示しましたが、3匹のマカクザルにはこのような応答はほとんど見られませんでした。別の実験では、マカクザルの自然な発声と、それを加工して倍音の代わりに雑音を組み込んだ音声に対する、6人のヒトと5匹のマカクザルの脳の応答が測定され、ヒトの脳は倍音の発声に対する選択性がマカクザルの脳よりも強い、と明らかになりました。この研究は、聴覚皮質の構成がヒトとマカクザルで異なっており、発話と音楽がヒトにとって独自の重要性を持っていることが原因かもしれないと結論づけています。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用です。


音楽と発話に対するヒトとサルの脳の応答

 ヒトの脳の聴覚野には倍音に対する選好性が見られるが、マカクザルの脳にはこれが見られないことを報告する論文が、今週掲載される。

 発話と音楽はヒトに特有なものと考えられており、そこに含まれる倍音の周波数成分が、ピッチ(音の高低の度合い)として認識される。ピッチを判別する能力は、発話と音楽にとって重要だ。ヒトの場合、ピッチの知覚に関係していると考えられている脳の聴覚野は、雑音よりも倍音に対して強く応答するが、これと類似した脳領域が他の動物に存在するかは分かっていない。

 今回、Sam Norman-Haignereたちの研究グループは、機能的MRIを用いて、人工の倍音と録音されたマカクザルの発声などの天然の倍音に対するヒトとマカクザルの脳の応答を測定し、ピッチのない雑音に対する応答と比較した。1つの実験では、4人のヒト被験者が倍音に対して強い応答を示したが、3匹のマカクザルにはこのような応答はほとんど見られなかった。別の実験では、マカクザルの自然な発声と、それを加工して倍音の代わりに雑音を組み込んだ音声に対する6人のヒトと5匹のマカクザルの脳の応答を測定した。ヒトの脳は、倍音の発声に対する選択性がマカクザルの脳よりも強かった。

 Norman-Haignereたちは、聴覚皮質の構成がヒトとマカクザルで異なっており、発話と音楽がヒトにとって独自の重要性を持っていることが原因かもしれないと結論付けている。



参考文献:
Norman-Haignere SV. et al.(2017): Divergence in the functional organization of human and macaque auditory cortex revealed by fMRI responses to harmonic tones. Nature Neuroscience, 22, 7, 1057–1060.
https://doi.org/10.1038/s41593-019-0410-7

フランスのブドウの歴史

 フランスのブドウの歴史に関する研究(Ramos-Madrigal et al., 2019)が公表されました。ヨーロッパブドウ(Vitis vinifera)は6000年前に初めて栽培化され、多くの場合クローン化によって栽培されます。このため、種子が手に入る限り古くまで、系統をたどることができます。歴史資料によれば、ブドウは紀元前6世紀にギリシア人によりフランスへ持ち込まれたものの、フランス南部の大部分にワイン生産が広がったのは、紀元前1世紀になってローマ人に占領されてからのことでした。数千品種のブドウが文書記録により記録または特定されていますが、これまで現代の品種をその歴史的祖先と結び付けることは困難でした。

 この研究は、フランスの考古学的遺跡9ヶ所から得られた28個の種子のゲノムを解析しました。その年代は、中世からローマ時代、さらには鉄器時代(紀元前510~475年)までさかのぼります。解析の結果、全ての試料は野生ブドウではなく栽培品種のもので、現在のワイン生産に使用されている品種に近縁と明らかになりました。紀元後1050~1200年のものとされた試料1点は、現在の「サヴァニャン・ブラン」と遺伝的に同一であると確認され、この品種がフランスで900年近くにわたって栽培されてきたことが示されました。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用です。


ブドウの歴史

 フランスのブドウの遺伝的祖先を明らかにした論文が、今週掲載される。この研究は、何百年も前に栽培されていたブドウ品種の一部が現在も使用されていることを示している。

 ヨーロッパブドウ(Vitis vinifera)は6000年前に初めて栽培化され、クローン化によって栽培されることが多い。このため、種子が手に入る限り古くまで、系統をたどることができる。歴史資料によれば、ブドウは紀元前6世紀にギリシャ人によってフランスへ持ち込まれたが、フランス南部の大部分にワイン生産が広がったのは、紀元前1世紀になってローマ人に占領されてからのことであったという。数千品種のブドウが文書記録によって記録または特定されているが、これまで現代の品種をその歴史的祖先と結び付けることは困難であった。

 今回、Nathan Walesたちの研究グループは、フランスの考古学的遺跡9か所から得られた28個の種子のゲノムを解析した。その年代は、中世からローマ時代、さらには鉄器時代(紀元前510~475年)までさかのぼる。解析の結果、全ての試料は野生ブドウではなく栽培品種のものであり、現在のワイン生産に使用されている品種に近縁であることが明らかになった。西暦1050~1200年のものとされた試料1点は、現在の「サヴァニャン・ブラン」と遺伝的に同一であることが確認され、この品種がフランスで900年近くにわたって栽培されてきたことが示された。



参考文献:
Ramos-Madrigal J. et al.(2018): Palaeogenomic insights into the origins of French grapevine diversity. Nature Plants, 5, 6, 595–603.
https://doi.org/10.1038/s41477-019-0437-5