『ドラえもん』「ネアンデルタール人を救え」

 ネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)について検索していたら気づいたので、録画して視聴しました。『ドラえもん』を視聴するのはいつ以来なのか、思い出せないくらいですが、21世紀になってからは視聴していないと思います。本当に久しぶりの視聴でしたが、記憶にある声とはずいぶんと違っていたのには戸惑いました。そういえば、かなり前に、『ドラえもん』の声優陣が交代する、と報道があったように記憶しています。検索したら、2005年に主要キャラの声優が交代したそうです。

 話の方は、博物館でネアンデルタール人の展示を見てきた、と自慢げにスネ夫が語ったことから、のび太と静香がネアンデルタール人に興味を抱き、ドラえもんと共にタイムマシーンでネアンデルタール人の存在していた時代に行く、というものです。のび太たちの行った世界では、ネアンデルタール人と現生人類(Homo sapiens)が共存しており、ジャイアンに似たネアンデルタール人男性、スネ夫に似た現生人類男性、のび太に似た現生人類女性がいました。スネ夫の仲間の男性2人も登場します。

 もちろん、子供向け娯楽アニメ作品なので、かなりデフォルメされているわけですが、現生人類と比較してのネアンデルタール人の力強さや、ネアンデルタール人所産の壁画・ネックレスにも言及されており、かなり調べた上で書かれた脚本だと思います。ネアンデルタール人の方は1人しかおらず、現生人類の方は少なくとも4人いることも、両者がヨーロッパで遭遇した時、現生人類の方が人口はずっと多かった、との知見(関連記事)を踏まえたものだと思います。ネアンデルタール人にたいする一般的な印象に関しては、専門的な知見を踏まえた一般向け書籍やドキュメンタリー番組よりも、人気娯楽作品の方の影響が大きいでしょうから、今回のような最新の知見を踏まえたうえでの脚本は望ましいものだと思います。

 ジャイアンに似たネアンデルタール人男性は、のび太に似た現生人類女性に恋をします。ジャイアンに似たネアンデルタール人は気弱な男性なので、のび太に似た現生人類女性は彼を仲間に受け入れようとするものの、スネ夫たち現生人類男性3人は反対します。けっきょく、ジャイアンに似たネアンデルタール人は力強さを見せて現生人類の仲間に受け入れられるわけですが、のび太たちがタイムマシーンで現代に戻る時、現代人もネアンデルタール人のDNAを2%ほど受け継いでいる、とドラえもんが説明していることと関連していると思います。これは、ジャイアンに似たネアンデルタール人が自分たちの先祖かもしれない、との静香の発言とともに、ネアンデルタール人と現生人類との交雑という最新の知見を踏まえたものなのでしょう。子供向け娯楽アニメ作品の枠を守りつつも、最新の知見を踏まえた内容になっており、全体的にはなかなか良質な作品になっていたと思います。

ハリスホークの獲物追跡

 ハリスホーク(Parabuteo unicinctus)の獲物追跡に関する研究(Brighton, and Taylor., 2019)が公表されました。先行研究から、ハヤブサは「比例航法」と呼ばれる自動追尾ミサイルと同じ誘導則を用いて、獲物を迎撃すると明らかになっています。しかし、比例航法では、機動性の高い獲物に狙いを定めた時に、タカなどの他の鳥類種が頻繁に行き来する雑然とした生息域を飛行する実行可能な経路が得られません。この研究は、飼育下繁殖された5羽のハリスホーク(モモアカノスリ)が、不規則ですばやく飛行する人工標的を追跡するさいの飛行50回の軌跡を高速度カメラで撮影したうえで、その飛行をモデル化し、ハリスホークの攻撃軌跡との一致度が最も高い数学的誘導則を突き止めました。

 その結果、ハリスホークが混合誘導則を用いている、と明らかになりました。すなわち、追跡飛行における方向転換が、視線の変化率、およびハリスホークの攻撃方向と標的に対する視線の間の角度(偏差角)に関するフィードバックによって決まる、というわけです。この研究は、こえした混合則が応答速度を向上させ、追跡におけるオーバーシュート(追跡していた獲物より前に飛び出してしまうこと)のリスクを低減させ、獲物の不規則で機動的な飛行に惑わされないようにしている、と指摘しています。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用です。


【動物学】ハリスホークの狩猟に用いられる混合誘導システム

 タカ科のハリスホーク(モモアカノスリ)が獲物を追跡する際に飛行を誘導するために用いられ、獲物の不規則で機動的な飛行に惑わされないようにするフィードバックシステムが、数学的な混合誘導則に基づいていることを明らかにした論文が、今週掲載される。

 先行研究から、ハヤブサは自動追尾ミサイルと同じ誘導則(いわゆる「比例航法」)を用いて獲物を迎撃することが明らかになっている。しかし、比例航法では、機動性の高い獲物に狙いを定めた時に、タカなどの他の鳥類種が頻繁に行き来する雑然とした生息域を飛行する実行可能な経路が得られない。

 今回、Graham TaylorとCaroline Brightonは、飼育下繁殖された5羽のハリスホークが不規則ですばやく飛行する人工標的を追跡する際の飛行50回の軌跡を高速度カメラで撮影した上で、その飛行をモデル化して、ハリスホークの攻撃軌跡との一致度が最も高い数学的誘導則を突き止めた。その結果、ハリスホークが混合誘導則を用いていることが判明した。すなわち、追跡飛行における方向転換が、視線の変化率、およびハリスホークの攻撃方向と標的に対する視線の間の角度(偏差角)に関するフィードバックによって決まることが分かった。著者たちは、この混合則が応答速度を向上させ、追跡におけるオーバーシュート(追跡していた獲物より前に飛び出してしまうこと)のリスクを低減させていると主張している。



参考文献:
Brighton CH, and Taylor GK.(2019): Hawks steer attacks using a guidance system tuned for close pursuit of erratically manoeuvring targets. Nature Communications, 10, 2462.
https://doi.org/10.1038/s41467-019-10454-z