森林火災の増加による北方林からの炭素放出

 森林火災の増加による北方林からの炭素放出に関する研究(Walker et al., 2019)が公表されました。北方林で自然発生する火災は、おもに有機土壌の燃焼を通して大気中へ大量の炭素を放出します。しかし、これらの火災では毎回、燃えた層の下の土壌の一部の土壌が燃焼を免れ、その後の度重なる火災を経て、土壌に閉じ込められた有機土壌炭素(レガシー炭素)の蓄積を形成します。レガシー炭素の蓄積に助けられ、こうした森林は正味の炭素シンクとなり、陸域炭素の約30~40%を保持しています。しかし、気候の温暖化と乾燥化によって、森林火災がより激しくより頻繁になっているため、北方生態系の炭素収支が正味の蓄積から正味の損失へ変わり、正の気候フィードバックをもたらす恐れがあります。

 この研究は、カナダのノースウェスト準州の乾燥した若い森林(林齢60年未満)で2014年に起きた森林火災後の、レガシー炭素の損失を定量的に評価しました。その結果、カナダ北西部の北方林の過去の森林火災発生間隔より古い森林では、レガシー炭素が燃焼した証拠は見いだされませんでした。乾燥地域にある火災発生時に林齢60年未満の森林では、以前の火災サイクルで燃焼を免れたレガシー炭素が燃焼していました。この研究は、2014年の森林火災で燃えた34万haの若い森林(林齢60年未満)で、レガシー炭素の燃焼が生じていた可能性を指摘しています。これは、連続的な森林火災において炭素循環が変化し、北方林が大気に対する正味の炭素シンクではなく正味の炭素源になっていることを示唆しています。レガシー炭素の燃焼が起こる若い森林の面積はおそらく、北方の森林火災の規模・頻度・強度が増大するにつれて増大し、北方の炭素収支の変化に重要な役割を担うことになります以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用です。


生物地球化学:森林火災の増加によって脅かされる北方林の土壌の古い炭素シンク

Cover Story:火急の課題:森林火災の増大は北方林を炭素シンクから放出源に変える恐れがある

 表紙は、カナダのアルバータ州で2016年に起こった森林火災の様子である。北方林で自然発生する火災は、主に有機土壌の燃焼を通して大気中へ大量の炭素を放出する。しかし、これらの火災では毎回一部の土壌が燃焼を免れ、その後の度重なる火災を経て、土壌に閉じ込められた「レガシー炭素」の蓄積を形成する。レガシー炭素の蓄積に助けられてこうした森林は正味の炭素シンクとなり、陸域炭素の約30~40%を保持している。今回X WalkerとM Mackたちは、カナダのノースウェスト準州の乾燥した若い森林(林齢60年未満)で森林火災後に起こった、レガシー炭素の損失を明らかにしている。著者たちの知見は、北方林の森林火災の規模、頻度、強度が増大するのに伴って、連続的な火災の間に若い森林が正味の炭素放出源になり、北方の炭素収支がシンクからソースに変わる可能性があることを示唆している。



参考文献:
Walker XJ. et al.(2019): Increasing wildfires threaten historic carbon sink of boreal forest soils. Nature, 572, 7770, 520–523.
https://doi.org/10.1038/s41586-019-1474-y

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