神経性無食欲症の遺伝的基盤

 神経性無食欲症の遺伝的基盤に関する研究(Watson et al., 2019)が公表されました。神経性無食欲症は、複雑で重篤な疾患で、死亡率は他の精神疾患よりも高いとされています。この研究は、神経性無食欲症遺伝学イニシアチブ(Anorexia Nervosa Genetics Initiative)と精神医学ゲノミクスコンソーシアム(Psychiatric Genomics Consortium)の摂食障害ワーキンググループ(Eating Disorders Working Group)が収集したデータを基に、神経性無食欲症の患者(16992人)と対照被験者(55525人)のゲノムを解析しました。

 その結果、神経性無食欲症に関連する8種類の遺伝的マーカーが突き止められ、神経性無食欲症の遺伝的構造の解析がこれまでよりも正確に行なわれました。また、神経性無食欲症は、強迫性障害や大鬱病などの精神疾患との間だけでなく、身体活動や代謝特性との間にも遺伝的相関関係がある、と明らかになりました。この研究は、以上の知見は神経性無食欲症が代謝精神疾患の一種であることを示す証拠であり、代謝疾患と精神疾患の両方の側面に気を配ることで、有効性を高めた治療法に到達できる可能性がある、との結論を提示しています。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用です。


神経性無食欲症の遺伝学的解明を前進させる新知見

 神経性無食欲症(約1万7000症例)の解析によって8種類の重要な遺伝的マーカーが見つかったことを報告する論文が、今週掲載される。今回の研究は、神経性無食欲症についてこれまでで最大規模のゲノムワイド関連解析である。

 神経性無食欲症は、複雑で重篤な疾患で、死亡率は他の精神疾患よりも高い。

 今回Cynthia Bulikたちの研究グループは、神経性無食欲症遺伝学イニシアチブ(Anorexia Nervosa Genetics Initiative)と精神医学ゲノミクスコンソーシアム(Psychiatric Genomics Consortium)の摂食障害ワーキンググループ(Eating Disorders Working Group)が収集したデータを基に、神経性無食欲症の患者(1万6992人)と対照被験者(5万5525人)のゲノム解析を行った。その結果、神経性無食欲症に関連する8種類の遺伝的マーカーが突き止められ、神経性無食欲症の遺伝的構造の解析がこれまでよりも正確に行われた。また、神経性無食欲症は、強迫性障害や大うつ病などの精神疾患との間だけでなく、身体活動や代謝特性との間にも遺伝的相関関係があることも分かった。

 Bulikたちは、以上の知見は神経性無食欲症が代謝精神疾患の一種であることを示す証拠であり、代謝疾患と精神疾患の両方の側面に気を配ることで、有効性を高めた治療法に到達できる可能性があると結論している。



参考文献:
Watson HJ. et al.(2018): Genome-wide association study identifies eight risk loci and implicates metabo-psychiatric origins for anorexia nervosa. Nature Genetics, 51, 8, 1207–1214.
https://doi.org/10.1038/s41588-019-0439-2

鳥の胚は卵の中で成鳥の警戒声を知覚する

 鳥の胚の警戒声知覚に関する研究(Noguera, and Velando., 2019)が公表されました。多くの種において、胚は両親からホルモンや音声によって情報を受け取っており、こうした情報は、出生後の環境に対処するために発生をプログラムするのに役立っています。巣の中で卵として発生する種では、発生の速さを卵の振動によって伝えられるため、きょうだいが同時に孵化できます。しかし、外部環境に関する情報が卵によって知覚され、それが巣の中で伝達され得るかどうかは、知られていませんでした。

 この研究は、異なるキアシセグロカモメ(Larus michahellis)の、卵3個のきょうだいのグループを複数作り、これらを録音した成鳥の捕食者警戒声、または無音状態に曝露しました。録音した成鳥の捕食者警戒声を再生したきょうだいでは、巣内の卵3個のうち2個だけにその音声を聞かせ、警戒声が胚発生に影響を与えるかどうか、その情報が第3の卵に伝達されるかどうかを確かめました。

 その結果、無音状態に置かれた対照の卵と比べ、警戒声を聞かされた卵は、振動が活発であまり声を出さず、孵化が遅れる、と明らかになりました。警戒声を聞かされた卵のヒナは、孵化後のストレス関連ホルモンのレベルが高く、捕食者警戒声に対して、より素早くうずくまって反応しました。きょうだいが警戒声を聞かされた第3の卵のヒナもストレス関連ホルモン値が高く、きょうだいと同じ行動を取る、と明らかになり、その情報源がきょうだいの振動であると示唆されました。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用です。


鳥の胚はきょうだいが出す振動による捕食リスク信号を知覚する

 鳥の胚は卵の中で成鳥の警戒声を知覚し、その情報を振動によって巣内の他の卵へ伝達することができることを示した報告が、今週掲載される。こうした情報は、発生する胚の孵化後の外部環境適応に役立っている可能性がある。

 多くの種において、胚は、両親からホルモンや音声によって情報を受け取っており、こうした情報は、出生後の環境に対処するために発生をプログラムするのに役立っている。巣の中で卵として発生する種では、発生の速さを卵の振動によって伝えることができるため、きょうだいが同時に孵化することができる。しかし、外部環境に関する情報が卵によって知覚され、それが巣の中で伝達され得るかどうかは知られていない。

 今回、Jose NogueraとAlberto Velandoは、異なるキアシセグロカモメの、卵3個のきょうだいのグループを複数作り、これらを録音した成鳥の捕食者警戒声、または無音状態に曝露した。録音した成鳥の捕食者警戒声を再生したきょうだいでは、巣内の卵3個のうち2個だけにその音声を聞かせ、警戒声が胚発生に影響を与えるかどうか、そしてその情報が第3の卵に伝達されるかどうかを確かめた。

 その結果、無音状態に置かれた対照の卵と比べ、警戒声を聞かされた卵は、振動が活発であまり声を出さず、孵化が遅れることが明らかになった。警戒声を聞かされた卵のヒナは、孵化後のストレス関連ホルモンのレベルが高く、捕食者警戒声に対して、より素早くうずくまって反応した。きょうだいが警戒声を聞かされた第3の卵のヒナもストレス関連ホルモン値が高く、きょうだいと同じ行動を取ることが明らかになり、その情報源がきょうだいの振動であると示唆された。



参考文献:
Noguera JC, and Velando A.(2019): Bird embryos perceive vibratory cues of predation risk from clutch mates. Nature Ecology & Evolution, 3, 8, 1225–1232.
https://doi.org/10.1038/s41559-019-0929-8