頻繁に手が触れる場所における多剤耐性菌の存在度

 頻繁に手が触れる場所における多剤耐性菌の存在度に関する研究(Cave et al., 2019)が公表されました。この研究は、感染症を引き起こすと知られている細菌群である抗生物質耐性ブドウ球菌の存在度を比較するため、ロンドン東部とロンドン西部で人間の手が触れることの多い部位の表面を検査用綿棒で拭き取って試料を採取しました。具体的には、一般市民が利用する場所のドアの取っ手や肘掛けやトイレの便座などの表面と、受付やトイレや廊下やエレベーターなど病院内の共用部分です。この研究は、採取された試料から、計600のブドウ球菌分離株を特定しました。そのうちの281株(46.83%)は2種類以上の抗生物質に耐性を示し、耐性の多かった順は、ペニシリン(80.42%)→フシジン酸(72.4%)→エリスロマイシン(54.45%)でした。

 多剤耐性菌の割合が高かったという点では、病院内の共用部分(49.5%)が病院以外の一般市民の利用場所(40.66%)を上回り、ロンドン東部で採取した試料(56.7%)がロンドン西部で採取した試料(49.96%)を上回りました。この研究は、病院内での抗生物質使用の増加と、ロンドン西部より高いロンドン東部の人口密度が、結果に反映されている可能性がある、と指摘しています。これらの試料からは、抗生物質耐性を付与するさまざまな遺伝子が見つかっており、その中には以前明らかにされていなかったものも含まれていました。こうした一般市民の利用する場所で発見された抗生物質耐性菌が最初に出現した場所を確定するには、さらなる解析が役に立つかもしれません。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用です。


【微生物学】英国ロンドンで頻繁に手が触れる場所における多剤耐性菌の存在度

 英国ロンドンの地下鉄の駅やショッピングセンターのように、一般市民が利用する場所やロンドン内の病院の共用部分の表面から採取した試料に多剤耐性菌がどの程度含まれているのかを評価する研究が行われ、その結果について報告した論文が、今週掲載される。

 今回、Hermine Mkrchytanたちの研究グループは、感染症を引き起こすことが知られている細菌群である抗生物質耐性ブドウ球菌の存在度を比較するため、ロンドン東部とロンドン西部で人間の手が触れることの多い部位の表面を検査用綿棒で拭き取って試料を採取した。具体的には、一般市民が利用する場所のドアの取っ手、肘掛け、トイレの便座などの表面と病院内の共用部分(受付、トイレ、廊下、エレベーターなど)である。Mkrchytanたちは、採取された試料から、計600のブドウ球菌分離株を特定した。そのうちの281株(46.83%)は、2種類以上の抗生物質に耐性を示し、耐性の多かった順はペニシリン(80.42%)、フシジン酸(72.4%)、エリスロマイシン(54.45%)だった。

 多剤耐性菌の割合が高かったという点では、病院内の共用部分(49.5%)が病院以外の一般市民が利用する場所(40.66%)を上回り、ロンドン東部で採取した試料(56.7%)がロンドン西部で採取した試料(49.96%)を上回った。Mkrchytanたちは、病院内での抗生物質使用の増加とロンドン東部の人口密度がロンドン西部より高いことが結果に反映されている可能性があると述べている。これらの試料からは、抗生物質耐性を付与するさまざまな遺伝子が見つかっており、その中には以前明らかにされていなかったものも含まれていた。このような一般市民が利用する場所で発見された抗生物質耐性菌が最初に出現した場所を確定する上では、さらなる解析が役に立つかもしれない。



参考文献:
Cave R. et al.(2019): Whole genome sequencing revealed new molecular characteristics in multidrug resistant staphylococci recovered from high frequency touched surfaces in London. Scientific Reports, 9, 9637.
https://doi.org/10.1038/s41598-019-45886-6

ヒトスジシマカの根絶方法

 ヒトスジシマカの根絶方法に関する研究(Zheng et al., 2019)が公表されました。ヒトスジシマカ(Aedes albopictus)は世界各地に侵入している蚊で、デング・チクングニア・ジカなどのウイルスの伝播を媒介します。ヒトスジシマカの個体数を従来の手法によって減らすのは難しいと証明されています。放射線照射によって雄を不妊化してから野生に戻すという昆虫の個体数調節法は、こうした雄の繁殖上の競争力が野生の個体群より劣るため、蚊では充分には成功していません。別の方法として、雄を共生細菌の一種であるボルバキア属(Wolbachia)細菌に感染させるというものもあります。この雄が同じボルバキア属細菌株に感染していない雌と交尾すると、不和合を起こして卵が育たなくなります。ただし、この方法では、同じボルバキア属細菌株に感染した雌が偶発的に野外に放たれると、その地域の個体群に取って代わり、このボルバキア属細菌株に依存した将来的な個体数抑制が阻害される恐れもあります。

 この研究は、野生の個体群において生じる可能性が低い3種のボルバキア属細菌株の組み合わせを新たに作り出し、ヒトスジシマカに感染させた上で、同じボルバキア属細菌株を保有する雌の偶発的放出の回避のために放射線照射を実施し、その際には、雄の繁殖上の競争力が損なわれないよう放射線量を低く抑えました。中国の広州で行われた野外試験では、3種のボルバキア属(Wolbachia)細菌株に感染した数百万匹のヒトスジシマカが放出され、2年間で野生のヒトスジシマカの個体群がほぼ消失しました。野生型ヒトスジシマカの平均個体数は1年で約83~94%減少し、蚊の放出から最大6週間後まで野生型ヒトスジシマカが検出されませんでした。集団遺伝学解析では、残存する少数のヒトスジシマカはおそらく、研究対象外地域から移動してきた個体である、と示されました。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用(引用1および引用2)です。


【感染症】ヒトスジシマカの根絶を目指した二重の処置

 侵入性が高く病気を媒介する蚊をほぼ根絶できることが、中国で行われた野外試験で実証された。今週掲載される論文では、蚊の個体数を調節するために雌の不妊化と雄の細菌感染を組み合わせた、環境に優しく費用対効果の高い方法が説明されている。

 ヒトスジシマカ(Aedes albopictus)は、世界各地に侵入している蚊で、デング、チクングニア、ジカなどのウイルスの伝播を媒介する。ヒトスジシマカの個体数を従来の手法によって減らすのは難しいことが証明されている。放射線照射によって雄を不妊化してから野生に戻すという昆虫の個体数調節法は、こうした雄の繁殖上の競争力が野生の個体群より劣るため、蚊では十分に成功していない。別の方法として、雄を、共生細菌の一種であるボルバキア属(Wolbachia)細菌に感染させるというものもある。この雄が同じボルバキア属細菌株に感染していない雌と交尾すると、不和合を起こして、卵が育たなくなる。ただし、この方法では、同じボルバキア属細菌株に感染した雌が偶発的に野外に放たれると、その地域の個体群に取って代わり、このボルバキア属細菌株に依存した将来的な個体数抑制が阻害される恐れがある。

 今回、Zhiyong Xiたちの研究グループは、野生の個体群において生じる可能性が低い3種のボルバキア属細菌株の組み合わせを新たに作り出し、ヒトスジシマカに感染させた上で、同じボルバキア属細菌株を保有する雌の偶発的放出を避けるために放射線照射を実施し、その際には、雄の繁殖上の競争力が損なわれないよう放射線量を低く抑えた。中国の広州で行われた野外試験では、3種のボルバキア属細菌株に感染した数百万匹のヒトスジシマカが放出され、2年間で野生のヒトスジシマカの個体群がほぼ消失した。野生型ヒトスジシマカの平均個体数は、1年で約83~94%減少し、蚊の放出から最大6週間後まで野生型ヒトスジシマカが検出されなかった。集団遺伝学解析では、残存する少数のヒトスジシマカはおそらく、研究対象外地域から移動してきた個体であることが示された。


感染症:不和合虫放飼法と不妊虫放飼法の組み合わせによる蚊の除去

感染症:蚊の侵入種の野外におけるほぼ完全な除去

 Z Xiたちは今回、デングウイルス、チクングニアウイルス、ジカウイルスを媒介する強健で侵略的な蚊であるヒトスジシマカ(Aedes albopictus)の個体群抑制を目的として、中国で行われた野外試験の結果について報告している。中国広州市の2つの実験場で、ボルバキア属(Wolbachia)の細菌を感染させて放射線照射した蚊を放飼した結果、標的とした蚊個体群がほぼ完全に除去された。



参考文献:
Zheng X. et al.(2019): Incompatible and sterile insect techniques combined eliminate mosquitoes. Nature, 572, 7767, 56–61.
https://doi.org/10.1038/s41586-019-1407-9