二酸化炭素排出源だった熱帯

 熱帯は二酸化炭素排出源だった、と報告した研究(Palmer et al., 2019)が公表されました。熱帯の陸上生態系では、植物と土壌に大量の炭素が貯留しています。この炭素の運命(生物圏への炭素の貯留が続くのか、二酸化炭素として大気中に放出されるのか)を予測することは、熱帯全体の観測結果が少ないために困難でした。この研究は、複数の人工衛星観測の結果を用いて、2009~2017年の熱帯地域での二酸化炭素排出量の季節的傾向をマッピングしました。アジアとオーストラリアと南アメリカの各熱帯地域は、二酸化炭素を吸収・貯留する二酸化炭素吸収源ですが、アフリカの熱帯地域からは年間約1兆2500億kgの炭素が排出されており、これまでの推定値を大きく上回っている、と明らかになりました。この研究は、持続的な土地劣化を原因とする土壌からの二酸化炭素放出が、この観測結果に重要な役割を果たした可能性を指摘しています。

 これらの知見は、これまで知られていなかった二酸化炭素排出量の多い地域を特定し、パリ協定のような気候変動緩和策をどのように見直す必要があるのか、浮き彫りにしています。こうした緩和策は、天然の二酸化炭素吸収源が引き続き機能して、目標を達成することに大きく依存しています。しかし、熱帯地域の二酸化炭素排出量の急増という予想外の結果は、こうした目標を達成するための努力が、人為起源の変化によって妨げられる可能性を浮き彫りにしています。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用です。


【気候科学】熱帯が二酸化炭素排出源だったという意外な結果

 温室効果ガスの一種である二酸化炭素(CO2)の北アフリカの熱帯地域からの排出量は、これまで考えられていたよりもはるかに多いことが、人工衛星観測による研究で明らかになった。この研究で、熱帯地域全体が正味のCO2排出源だとする予想外の結果になった。この研究について報告する論文が、今週掲載される。

 熱帯の陸上生態系では、植物と土壌に大量の炭素が貯留している。この炭素の運命(生物圏への炭素の貯留が続くのか、CO2として大気中に放出されるのか)を予測することは、熱帯全体の観測結果が少ないために困難だった。

 今回、Paul Palmerたちの研究グループは、複数の人工衛星観測の結果を用いて、2009~2017年の熱帯地域でのCO2排出量の季節的傾向をマッピングした。アジア、オーストラリア、南米の各熱帯地域は、CO2を吸収・貯留するCO2吸収源であるが、アフリカの熱帯地域からは年間約1兆2500億キログラムの炭素が排出されており、これまでの推定値を大きく上回っている。Palmerたちは、持続的な土地劣化を原因とする土壌からのCO2放出が、この観測結果に重要な役割を果たした可能性があると考えている。

 以上の結果は、これまで知られていなかったCO2排出量の多い地域を特定し、パリ協定のような気候変動緩和策をどのように見直す必要があるのかを浮き彫りにしている。こうした緩和策は、天然のCO2吸収源が引き続き機能して、目標を達成することに大きく依存している。しかし、熱帯地域のCO2排出量の急増という予想外の結果は、こうした目標を達成するための努力が人為起源の変化によって妨げられる可能性のあることを浮き彫りにしている。



参考文献:
Palmer PI. et al.(2019): Net carbon emissions from African biosphere dominate pan-tropical atmospheric CO2 signal. Nature Communications, 10, 3344.
https://doi.org/10.1038/s41467-019-11097-w

気候変動懐疑論者のメディアにおける可視性の評価

 気候変動懐疑論者のメディアにおける可視性の評価に関する研究(Petersen et al., 2019)が公表されました。この研究は、気候変動懐疑論者の可視性と権威性の生成に関する調査を行ない、気候変動懐疑論者(学者・科学者・政治家・実業家)386人と、気候変動の一因が人間の活動だとする見解に同意する気候科学者386人の、デジタルフットプリントを追跡調査しました。この調査はおもに、北アメリカとヨーロッパに拠点を置くメディアソースの約10万点の記事とブログ記事に基づいています。

 全体では、気候変動懐疑論者のメディアにおける可視性は、気候変動科学者よりも49%高かった、と明らかになりました。これに対して、(従来の編集基準による情報の品質管理を実施している)30の主要メディアソースを特に調べたところ、両者の可視性はほぼ同じでした。この研究は、新しいメディア、とくに厳格な情報品質評価基準を適用していない可能性のある情報源やブログによるコンテンツ配信の拡張性が、気候変動懐疑論者の人目を引く発言に対して有利に働いている可能性がある、と指摘しています。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用です。


【気候変動】気候変動懐疑論者のメディアにおける可視性の評価

 2000~2016年にデジタルメディアと印刷メディアに掲載された記事の分析が行われ、気候変動懐疑論者を取り上げた記事が、人間の活動を気候変動の一因とする大多数の見解を支持する科学者を取り上げた記事よりも49%多かったことが明らかになった。しかし、主要報道機関だけに絞った比較では、この可視性の差は1%に過ぎなかった。この結果を報告する論文が、今週掲載される。

 今回、Alexander Petersenたちの研究グループは、気候変動懐疑論者の可視性、権威性の生成に関する調査を行い、気候変動懐疑論者(学者、科学者、政治家、実業家)386人と気候変動の一因が人間の活動だとする見解に同意する気候科学者386人のデジタルフットプリントを追跡調査した。今回の調査は、主に北米とヨーロッパに拠点を置くメディアソースの約10万点の記事とブログ記事を用いて行われた。全体では、気候変動懐疑論者のメディアにおける可視性は、気候変動科学者よりも49%高かったことが判明した。これに対して、(従来の編集基準による情報の品質管理を実施している)30の主要メディアソースを特に調べたところ、両者の可視性は、ほぼ同じだった。

 Petersenたちは、新しいメディア、特に厳格な情報品質評価基準を適用していない可能性のある情報源やブログによるコンテンツ配信の拡張性が、気候変動懐疑論者の人目を引く発言に対して有利に働いている可能性があると主張している。



参考文献:
Petersen AM, Vincent EM, and Westerling AL.(2019): Discrepancy in scientific authority and media visibility of climate change scientists and contrarians. Nature Communications, 10, 3502.
https://doi.org/10.1038/s41467-019-09959-4