異なる気候下におけるシロイヌナズナのゲノム選択

 異なる気候下におけるシロイヌナズナのゲノム選択に関する研究(Exposito-Alonso et al., 2019)が公表されました。気候変動は、生物個体群にたいして、変化して適応するか、絶滅に直面するか、いずれかを強いる自然選択の要因となります。しかし、気候変動に伴う生物多様性のリスクについての現在の評価では通常、自然選択による各個体群への影響がそれらの遺伝的構成に応じてどのように異なるのか、考慮されていません。この研究は、シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)について入手可能な広範なゲノム情報を利用し、スペインとドイツで栽培した517のシロイヌナズナ自然系統の適応度が、降雨量の操作によってどのような影響を受けるのか、測定しました。これにより、ゲノム全体に働く選択の直接推測が可能になりました。

 その結果、自然選択がとくに強く働いていたのはスペインの高温乾燥地域で、そこでは系統の63%が死滅し、ゲノム規模の全多様体の約5%で自然選択による頻度の著しい変化が見られました。気候に駆動されるこうした多様体の自然選択の大部分は、実験場所により似た気候を有する地理的領域で見つかった遺伝的多様体が正の選択を受けていたことから、局所適応の特徴により予測可能でした。これらの予測はシロイヌナズナの分布域全域にわたり野外実験によって裏づけられ、こうした予測からは、この種の環境限界の辺縁に位置する地中海とシベリア西部の個体群が現在、気候に駆動されるものとして最も強い選択を受けている、と示されました。ヨーロッパでは旱魃の頻度や気温が上昇していることから、方向性のある自然選択はヨーロッパの南端から北へと移動するにつれて強まり、結果として多くのシロイヌナズナ在来個体群が進化のリスクにさらされる、とこの研究は予測しています。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用です。


生態遺伝学:現在および将来の気候においてシロイヌナズナのゲノムが受ける自然選択

生態遺伝学:異なる気候でシロイヌナズナのゲノムが受ける選択

 D Weigelたちは今回、スペインとドイツの2つの野外研究施設で、517のシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)系統を用いて異なる気候をシミュレートする実験を行った。そして、得られたデータセットを解析することで、ゲノム規模での自然選択のパターンや、そうした選択の環境の違いとの相関を調べた。著者たちはまた、シロイヌナズナのゲノムが受ける環境に関連した選択のシミュレーションを行い、こうした手法が、植物ゲノムが受ける気候変動に駆動される選択を予測するための原理証明方法となると提案している。



参考文献:
Exposito-Alonso M. et al.(2019): Natural selection on the Arabidopsis thaliana genome in present and future climates. Nature, 573, 7772, 126–129.
https://doi.org/10.1038/s41586-019-1520-9

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