末期更新世における大型動物の絶滅の影響

 末期更新世における大型動物の絶滅の影響に関する研究(Tóth et al., 2019)が報道されました。現生大型哺乳類はヒトの活動に起因する絶滅の危険性が高く、その絶滅は生態系に深刻な影響を与える可能性があります。たとえば大型草食動物の絶滅は、景観全体を変えるかもしれません。本論文は、長年理由が議論されてきた北アメリカ大陸の更新世末期の大型哺乳類の大量絶滅と、その後の影響を検証します。具体的には、更新世から完新世にかけて生き残った大型哺乳類の、占有率と生態的地位サイズと種の共存パターンを利用して、絶滅種と比較するとともに、相互作用とその影響を調べました。時代区分は、21000~11000年前頃の末期更新世、11000~2000年前頃の(過去2000年を除く)完新世、2000年前頃~現代です。

 生存種では全体的な傾向として、更新世から完新世にかけて、優勢種はより優勢にさえなり、希少種はそのままか、より地位を低下させました。完新世と過去2000年の間では、占有パターンに実質的な変化はありませんでした。一方絶滅種は、末期更新世の生存種よりも気候と地理で範囲が小さくなっています。これに対して生存種の気候および地理的範囲は平均して、末期更新世から完新世にかけて拡大しました。末期更新世の生存種ではコミュニティにおいて凝集が優勢で、完新世と過去2000年では分離が優勢です。更新世から完新世への移行は、占有率・生態的地位サイズ・関連パターンのかなりの変化により特徴づけられます。生存種が絶滅種よりも大きな潜在的範囲を示したという事実は、狭い範囲に特殊化すると絶滅の危険性がより高い、という見解と一致します。完新世における生存種の気候的生態的地位の拡大は、大型動物の絶滅による競争から解放された空白の生態的地位を埋めていったことが反映されているかもしれません。

 完新世に始まる分離への全体的な変化は、種の共存の生物的および非生物的構成の相対的効果における変化に起因しました。気候および地理的生態的地位における増加は、完新世における種間の潜在的な範囲の重なりを増加させ、これが生物的および非生物的関連の凝集における変化を引き起こしました。対照的に、相互の潜在的範囲内の共存は減少しました。環境要因への種の反応は、顕著な気候変化にも関わらず、一貫して時間が経過してもコミュニティ凝集へとつながります。一方、生物的相互作用に起因する共存パターンは、末期更新世の後には減少しました。生物的相互作用は凝集を促進する傾向があるので、生物的関連の喪失は分離を増加させます。したがって共存の減少は、生物的関連の弱化と集約される生物的関連の傾向の減少の複合効果により促進されました。そのため本論文は、気候変化ではなく、大型動物相の消滅もしくはヒトの出現といった生物的要因の変化を、生態系激変の原因と評価しています。

 生存種の共存における変化が、生存種と犠牲種の相互作用の損失の直接的結果だったのか、あるいは大型動物の消滅もしくはヒトの影響の増加のような他の同時的変化に間接的に影響されたのか、本論文の結果から決定するのは困難です。更新世の捕食者はしばしば特殊化しており、その消滅により生存種はより広い範囲の獲物種を消費できるようになるため、共存への必要性を減少させます。さらに、大型の獲物の消滅は、獲物種により多くより小柄な分類群への移行を引き起こし、特定の獲物種への適合度を減少させたかもしれません。分離もまた、相互の潜在的範囲内の量と大きさにおいて増加しました。

 これらの事象の潜在的な説明の一つは、捕食種と競合種の消滅は、最終的には競争を強化して排除を増加させた急速な競合的開放シナリオにおいて、生存種の数を増加させた、というものです。生態系において比較的少ない生物量でも生態系へ大きな影響を与えるキーストーン種(中枢種)の消滅は、生物的相互作用の損失を通じて、他の種やコミュニティへの直接的および間接的効果を引き起こします。そのような損失は、しばしば生物多様性の減少と生態系健康の低下をもたらします。大型動物の絶滅は、類似の経路、とくに捕食圧と資源の解放を通じて、コミュニティにおいてかなりの変化を引き起こしたかもしれません。凝集から離れる傾向は、共存がより高次の相互作用を通じての生物多様性を増大させ、生物多様性は現代の保全努力の中心的焦点である、ことからも重要です。

 末期更新世の絶滅は、単純な生物多様性の損失を越えた、哺乳類コミュニティへの測定可能で永続的な効果を引き起こしました。本論文の分析が示唆するのは、これらの損失は、凝集の高水準を支持した種の相互作用のネットワークを破壊し、大陸規模の種の関連が現在では気候と拡散の制限により強く制御され、分離によりますます特徴づけられる現代の動物相へとつながる、ということです。種の相互作用や範囲の動態のような生物的メカニズムは、種が大陸規模で共存した在り様に一貫して影響を及ぼすことにより、哺乳類コミュニティ凝集において測定可能な役割を果たした、と本論文は指摘します。完新世に生存した種間の相互作用はおそらく、より小さい規模で、もしくはより短い時間の枠組み内で日和見的に起きます。全体的に、生物的メカニズムは今や、大陸規模での種の共存を更新世よりも減少させ、この変化はおそらく、更新世の大型動物相の絶滅により促進されただろう、と本論文は推測しています。アメリカ大陸に限らず、現生人類(Homo sapiens)は後期~末期更新世にかけての大型動物の絶滅に大きな影響を及ぼしたと考えられますが(関連記事)、その後の生態系への影響も大きいと示されたことは、第六の大量絶滅が進行中とも言われる現在、今後の生物保全にも重要になってくると思います。


参考文献:
Tóth AB. et al.(2019): Reorganization of surviving mammal communities after the end-Pleistocene megafaunal extinction. Science, 365, 6459, 1305–1308.
https://doi.org/10.1126/science.aaw1605

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