白亜紀/古第三紀境界後の回復期間

 白亜紀/古第三紀境界後の回復期間に関する研究(Alvarez et al., 2019)が公表されました。約6600万年前、ユカタン半島北部のチクシュルーブでの小惑星衝突により、海洋生態系がほぼ瞬時に崩壊しました。この白亜紀/古第三紀(K/Pg)境界においては、おそらく、海洋食物網の底辺における多様性の壊滅的な喪失が引き金となり、全栄養水準にわたる連鎖的な絶滅が引き起こされ、海洋の生物地球化学的な機能が著しく破壊されました。とくに、海面と深海との間の炭素循環の擾乱が生じたと考えられます。絶滅後の期間全体にわたる充分に詳細な生物データが存在しないため、生態系の復元力および生化学的機能がどのように回復したのかに関して、理解は限られており、生態系の「回復」に要する時間の見積もりには、100年未満から1000万年までの開きがあります。

 本論文は、K/Pg境界が13000年単位とひじょうに細かく、1300万年に及ぶナノプランクトンの時系列を用いて、絶滅後の群集では180万年にわたって極めて不安定な状態が続き、その後、復元力の特徴を示すより安定な平衡状態の群集が出現したことを明らかにしています。より多様な細胞サイズを有する、この新たな平衡状態の群集への移行が起きたのは、炭素循環の回復および充分に機能する生物ポンプの存在を示す指標と同時期でした。これらの知見は、生態系の回復と生物地球化学的な循環との間には、これまで移出生産の代理指標から示唆されてきたよりも長いものの、分類学的な豊富さの回復よりはずっと短い時間スケールにわたって、根本的なつながりが存在することを示唆しています。群集の安定性と生物ポンプの効率の両方が再び出現しても種の豊富さが低いままであったという事実は、群集の復元力および生化学的な機能には種数よりも生態学的機能の方が重要であることを示唆しています。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用です。


生物地球化学:大量絶滅からの回復では多様性が生態系の機能と復元力から切り離される

生物地球化学:白亜紀/古第三紀境界の後の回復期間

 白亜紀/古第三紀(K/Pg)境界におけるチクシュルーブでの小惑星衝突は、恐竜を絶滅させただけでなく、全球の生態系にも著しい影響を及ぼした。例えば、炭素を海面から深海底へと輸送する「炭素ポンプ」にも大規模な破壊が起こったが、最近の一部の研究からは、こうした炭素ポンプは衝突から約170万年後までに回復したことが示唆されている。これに対し、種の多様性によって評価される生態系の回復には、最長で1000万年を要したことがよく知られている。今回S AlvarezとS Gibbsたちは、K/Pg境界が非常に細かく(1万3000年単位で)記録されている国際深海掘削計画(ODP)の掘削コアから得られた、石灰質ナノプランクトンの極めて詳細な記録を提示している。この記録からは、石灰質ナノプランクトン群集では、衝突の約200万年後まで極めて不安定な状態が続き、その後ほぼ安定した状態に回復してさらなる大半の摂動に対して復元力を備えるようになったが、種の豊富さは低いままだったことが明らかになった。それらの時期からは、安定性の回復と炭素ポンプの回復とが同時に起きていたことも示唆された。



参考文献:
Alvarez SA. et al.(2019): Diversity decoupled from ecosystem function and resilience during mass extinction recovery. Nature, 574, 7777, 242–245.
https://doi.org/10.1038/s41586-019-1590-8

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