アメリカナキウサギの気候応答要因

 アメリカナキウサギ(Ochotona princeps)の気候応答要因に関する研究(Smith et al., 2019)が公表されました。同じ生物種でも気候に対する応答が異なっている原因と、それが気候変化に対する生物種の適応性にどのように影響するのか理解することは、保全活動にとって重要です。こうした差異が生じる原因は、個体群間の遺伝的差異だと考えられていました。アメリカナキウサギは、ウサギと野ウサギに近縁な小型動物種で、北アメリカ大陸西部の高地に典型的に見られ、その極端な気候に対する感受性を調べる研究が長く行なわれてきました。

 この研究は、博物館や野生生物機関や個々の研究者や科学文献からデータを幅広く集め、アメリカナキウサギの気候に対する応答が個体群により異なっている原因を分析しました。この研究では8仮説が検証され、アメリカナキウサギの個体群を生態地域によって分類すると、気候に対する応答の差異を最もよく説明できる、と明らかになりました。これは、アメリカナキウサギの分布が、単にその進化史を反映しているのではなく、むしろ、その生息域の特徴に強く関連している、と意味しています。その理由として、アメリカナキウサギがさまざまな植物を食餌とし、日よけに使っている可能性や、微小逃避地(岩陰や地下氷の近くなどの生息域内の涼しい場所)に依存して温暖化を生き延びている可能性が挙げられています。

 この研究は、保全政策を策定するさいに地理的要因を考慮すべきことが示唆されている、と結論づけています。またこの研究の知見は、懸念される種に対する地域限定的な管理と回復の必要性にとって重要な意味を持っており、ある地域で成功した管理手法が、別の地域では不適切なものとなり、悲惨な結果をもたらす場合さえあるかもしれない、とも指摘されています。「第六の大量絶滅」が強調されるようになってきたなか、保全活動の難しさを改めて指摘する研究と言えそうです。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用です。


アメリカナキウサギの気候に対する応答に影響を及ぼすのは遺伝的要因ではなく地理的要因

 アメリカナキウサギの気候に対する応答の時空間的差異を予測する際に遺伝的要因より地理的要因の方が重要な役割を果たすという見解を示す論文が掲載される。

 同じ生物種でも気候に対する応答が異なっている原因とそのことが気候の変化に対する生物種の適応性にどのように影響するのかを理解することは、保全活動にとって重要だ。こうした差異が生じる原因は、個体群間の遺伝的差異だと考えられていた。アメリカナキウサギは、ウサギと野ウサギに近縁な小型動物種で、北米西部の高地に典型的に見られ、その極端な気候に対する感受性を調べる研究が長い間行われてきた。

 今回、Adam Smith、Erik Beeverたちの研究グループは、博物館、野生生物機関、個々の研究者、科学文献からデータを幅広く集め、アメリカナキウサギの気候に対する応答が個体群によって異なっている原因の分析を行った。この研究では、8つの仮説の検証が行われ、アメリカナキウサギの個体群を生態地域によって分類すると、気候に対する応答の差異を最もよく説明できることが明らかになった。このことは、アメリカナキウサギの分布が、単にその進化史を反映しているのではなく、むしろ、その生息域の特徴に強く関連していることを意味している。そうなっているのは、アメリカナキウサギがさまざまな植物を食餌とし、日よけに使っているからかもしれないし、あるいは微小逃避地(岩陰や地下氷の近くなどの生息域内の涼しい場所)に依存して温暖化を生き延びているからかもしれない。

 保全政策を策定する際に地理的要因を考慮すべきことが以上の知見から示唆されていると論文著者は結論づけている。一方、この論文と関連したMeagan OldfatherのNews & Viewsには、「[これらの知見]は、懸念される種に対する地域限定的な管理と回復の必要性にとって重要な意味を持っている。すなわち、ある地域で成功した管理手法が、別の地域では不適切なものとなり、悲惨な結果をもたらす場合さえあるかもしれないのだ」と記されている。



参考文献:
Smith AB. et al.(2019): Alternatives to genetic affinity as a context for within-species response to climate. Nature Climate Change, 9, 10, 787–794.
https://doi.org/10.1038/s41558-019-0584-8