口蓋の差と母音の進化

 口蓋の差と母音の進化に関する研究(Dediu et al., 2019)が公表されました。言語は、文法や語だけでなく音も異なります。これまでの研究では、言語の進化に対する文化的および環境的な影響に焦点が合わせられており、声道の構造に差異があっても、言語の多様性にはほとんど影響はない、と考えられてきました。この研究は、ヒトの口蓋の形状が、異なる語族で聞かれる5つの母音の発音にどのように影響を及ぼすかについて調べました。

 4つの広域の民族言語グループ(ヨーロッパ人およびヨーロッパ系の北米人、北インド人、南インド人、中国人)を代表する被験者107人のMRIスキャンに基づくコンピューターモデルを用いた結果、全てのグループにおける硬口蓋のさまざまな形状が、5つの母音全ての音響および調音のわずかな差を生む、と明らかになりました。この研究はさらに、そうした個人レベルの発話の特異性は、世代を経るごとにさらに大きくなった可能性がある、と示しています。この研究は、言語の進化に声道の構造が果たす役割を深く理解するためには、さらなる研究が必要だと指摘しています。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用です。


口蓋の差が、母音の進化を方向付けてきた可能性

 ヒトの口蓋の形状は、異なる言語集団にわたる小さな系統的な発話パターンに影響を及ぼしている可能性のあることを示した論文が、今週掲載される。

 言語は、文法や語だけでなく音も異なる。これまでの研究では、言語の進化に対する文化的および環境的な影響に焦点が合わせられていた。声道の構造に差異があっても、言語の多様性にはほとんど影響はないと考えられてきた。

 今回Dan Dediuの研究チームは、ヒトの口蓋の形状が、異なる語族で聞かれる5つの母音の発音にどのように影響を及ぼすかについて調べた。4つの広域の民族言語グループ(ヨーロッパ人およびヨーロッパ系の北米人、北インド人、南インド人、中国人)を代表する被験者107人のMRIスキャンに基づくコンピューターモデルを用いた結果、全てのグループにおける硬口蓋のさまざまな形状が、5つの母音全ての音響および調音のわずかな差を生むことが明らかとなった。Dediuたちはさらに、そうした個人レベルの発話の特異性は、世代を経るごとにさらに大きくなった可能性があることを示している。

 研究チームは、言語の進化に声道の構造が果たす役割を深く理解するためには、さらなる研究が必要だと結論している。



参考文献:
Dediu D, Janssen R, and Moisik SR.(2019): Weak biases emerging from vocal tract anatomy shape the repeated transmission of vowels. Nature Human Behaviour, 3, 10, 1107–1115.
https://doi.org/10.1038/s41562-019-0663-x