マウスの高塩分摂取と認知機能低下

 マウスの高塩分摂取と認知機能低下に関する研究(Faraco et al., 2019)が公表されました。食習慣や血管リスク因子は、アルツハイマー病と血管性の要因による認知障害の両方を促進します。さらに、過剰リン酸化タウの蓄積(タウは微小管結合タンパク質で、アルツハイマー病の病理学的特徴でもあります)も、血管性認知障害と関連しています。マウスでは、高塩分の食餌が脳の内皮細胞で一酸化窒素欠乏や脳低灌流に関連する認知機能障害を引き起こす、と明らかになっています。この関連性の基盤となる正確な機序は解明されていませんが、血管機能不全とニューロンにおけるタウタンパク質の凝集は、認知機能障害の発生に関わっていると考えられています。この研究は、マウスにおいて、食餌中の塩がタウの過剰リン酸化に続いて認知機能障害を誘導し、これらの効果は内皮の一酸化窒素産生の回復により抑えられることを報告しています。

 通常の食餌の塩分の8~16倍という高塩分の食餌を与えたマウスは、新しい対象物をうまく認識できず、迷路試験の成績もよくありませんでした。この研究は、高塩分摂取により一酸化窒素の合成が低下し、その結果としてタウのリン酸化にかかわる酵素(CDK5)が活性化される、と明らかにしました。一酸化窒素の合成を元に戻すと、マウスの認知機能障害は回復しました。なお、この研究は注意すべき点として、マウスに与えた高塩分の食餌は、ヒトについて報告されている塩分摂取量の最高値を超えて、ヒトの推奨摂取量である1日4~5グラムの3~5倍に達していたことを挙げています。しかし、これらの知見は、食習慣と認知機能の健康を結び付ける未知の経路を明らかにしており、この経路の存在は、高塩分食を避けることで認知機能を維持できる可能性のあることを示しています。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用(引用1および引用2)です。


【健康】マウスの高塩分摂取が認知機能低下に結び付いている

 マウスの塩分摂取と認知機能との間に因果関係が認められたことを報告する論文が、今週、掲載される。今回の研究では、マウスに極端な高塩分食を与えると、変異型タウ(アルツハイマー病などの認知症の原因となる病態に関連するタンパク質)が蓄積することが明らかになった。ただし、この結果をヒトに応用できるかどうかは、今後の研究で調べる必要がある。

 塩分の過剰摂取は、認知機能障害と関連付けられており、認知症のリスク因子である。この関連性の基盤となる正確な機序は解明されていないが、血管機能不全とニューロンにおけるタウタンパク質の凝集は、認知機能障害の発生に関わっていると考えられている。今回、Costantino Iadecolaたちの研究グループは、タウの凝集が認知機能障害の発生に関わっていることを示す証拠を発見し、リン酸化タウの濃度を最終的に上昇させるシグナル伝達カスケードを突き止めた。

 通常の食餌の塩分の8~16倍という高塩分の食餌を与えたマウスは、新しい対象物をうまく認識できず、迷路試験の成績もよくなかった。Iadecolaたちは、高塩分摂取によって一酸化窒素の合成が低下し、その結果としてタウのリン酸化にかかわる酵素(CDK5)が活性化されることを明らかにした。一酸化窒素の合成を元に戻すと、マウスの認知機能障害は回復した。なお、Iadecolaたちは注意すべき点として、今回の研究でマウスに与えた高塩分の食餌は、ヒトについて報告されている塩分摂取量の最高値を超えて、ヒトの推奨摂取量である1日4~5グラムの3~5倍に達していたことを挙げている。しかし、今回の研究結果は、食習慣と認知機能の健康を結び付ける未知の経路を明らかにしており、この経路の存在は、高塩分食を避けることで認知機能を維持できる可能性のあることを示している。


神経科学:食餌中の塩がタウのリン酸化を介して認知障害を促進する

神経科学:食餌中の塩が認知機能に影響を及ぼす仕組み

 今回、一連の動物実験により、塩の摂取と認知機能障害を結び付ける生物学的機構が調べられた。この過程には、脳低灌流による機構とタウ関連機構が関係することが示唆されているが、著者たちは、認知障害が脳低灌流ではなくタウ関連機構を介して起こることを示している。この経路は、リンパ球の免疫応答、インターロイキンの産生、一酸化窒素合成の減少、それに続く(ニトロシル化の減少による)カルパインの活性化、カルパインによるp35のp25への切断、サイクリン依存性キナーゼ5(CDK5)の活性化、CDK5によるタウのリン酸化を介して進行する。タウのヌルマウスあるいは抗タウ抗体を投与したマウスでは、脳低灌流や神経血管機能障害が持続するにもかかわらず、高塩分の食餌を摂取させても認知機能が維持された。これらの結果がヒトに拡張できるのであれば、過剰な塩の摂取を避けて血管の健康を維持することは、高齢期の認知機能低下の原因となる病態の防止に役立つ可能性がある。



参考文献:
Faraco G. et al.(2019): Dietary salt promotes cognitive impairment through tau phosphorylation. Nature, 574, 7780, 686–690.
https://doi.org/10.1038/s41586-019-1688-z

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