後天性細菌間防御系を含むヒトの腸内細菌

 ヒトの腸内細菌の後天性細菌間防御系に関する研究(Ross et al., 2019)が公表されました。ヒトの消化管は、密で多様な微生物群集によって構成されており、その組成は健康と密接に結びついています。この群集の構成要素を説明するには、食餌や宿主免疫などの外因性の要因だけでは不充分で、共存する微生物間の直接的な相互作用が腸内微生物叢(ヒトの体内に住む微生物群、 マイクロバイオーム)組成の重要な駆動要因として関与している、とされています。腸内微生物叢由来の細菌のゲノムには、接触依存的な細菌間拮抗作用を仲介するいくつかの経路が含まれています。バクテロイデス目のグラム陰性菌の多くはVI型分泌装置(T6SS)をコードしており、T6SSは毒性のあるエフェクタータンパク質の隣接する細胞内への送達を促進します。

 この研究は、ヒトの腸内微生物叢に存在するバクテロイデス目の種において、後天性細菌間防御(AID)遺伝子クラスターが存在する、と報告しています。これらのクラスターは、T6SSを介した種内および種間の細菌の拮抗作用を防ぐ一連の免疫遺伝子の配列をコードしています。さらに、これらのクラスターは可動性エレメントに存在して、それらの移動が試験管内やノトバイオートマウスにおいて毒素に対する抵抗性の付与に充分である、と明らかになりました。また、バクテロイデス目のゲノムに広く存在するリコンビナーゼ関連AIDサブタイプ(rAID-1)の防御能も特定・確認されました。これらのrAID-1遺伝子クラスターは、活発な遺伝子獲得を示唆する構造を持ち、多様な生物に由来する毒素の予測免疫因子を含んでいます。この研究は、AID系による接触依存的な細菌間拮抗作用の中和が、ヒトの腸内微生物叢の生態環境形成を助けている、と示唆しています。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用です。


微生物学:ヒトの腸内細菌は後天性細菌間防御系を含む

微生物学:腸内微生物群を免疫で武装

 微生物が高密度で存在する腸内環境では、細菌は隣接する細菌からの攻撃を防ぐ必要がある。J Mougousたちは今回、同じ種あるいは異なる種のVI型分泌装置(T6SS)が分泌する毒素に対して作用する、免疫遺伝子のクラスターが関与する新しい防御戦略を特定した。この細菌間防御系は、バクテロイデス属(Bacteroides)の種の間で広く見られると考えられ、この系が種間を移動できることによって、in vitroおよびマウスで毒素に対する抵抗性の移動が起こる。これらの後天性細菌間防御(AID)遺伝子クラスターは、腸内微生物相の生態学的相互作用を形作るのに重要であると予測される。



参考文献:
Ross BD. et al.(2019): Human gut bacteria contain acquired interbacterial defence systems. Nature, 575, 7781, 224–228.
https://doi.org/10.1038/s41586-019-1708-z