中曽根康弘元首相死去

 中曽根康弘元首相が今日(2019年11月29日)101歳で亡くなりました。ご冥福をお祈りいたします。中曽根氏は私が小中学生の頃の首相で、政治に関心を抱き始めて間もなくの頃に首相に就任したため、私にとっては強く印象に残っている政治家でした。各報道ではアメリカ合衆国のレーガン大統領(当時)との蜜月関係が指摘されていますが、中曽根政権期は、その前後も含めて日米貿易摩擦がたいへん深刻だった、との個人的印象を抱いています。中曽根政権は基本的に従米路線を強化したように思いますが、この選択は、少なくとも最悪の選択ではなく、むしろましな部類に入るのではないか、と私は考えています。当時の日本に、アメリカ合衆国から「自立」するだけの条件は整っておらず、無理に「自立」しようとすれば、史実よりも早く日本は(他国との相対的比較において)衰退していた可能性が高いように思います。また従米路線とも関連しますが、日本における「新自由主義」の始まりは中曽根政権だろうとも思います。それが現在の日本社会にどのような影響を及ぼしたのかというと、私の政治的信条からは否定的な評価になってしまうのですが、率直なところ、私の見識で的確な判断ができるはずもなく、今後、専門家の見解を少しずつでも学んでいくつもりです。

 中曽根政権は当初、田中曽根内閣とも揶揄されましたが、首相として実権を掌握していき、ついには後継者を指名して無投票で自民党総裁が選出されるような事態を作り上げた中曽根氏の政治手腕は見事だったと思います。正直なところ、中学生の頃の私は、中曽根氏の復古的な側面が気に入らず、かなり嫌っていましたが、権力者として優れていたことは否定できないでしょう。もっとも、権力者として優れていることが政策の良さを保証するわけではないので、政治的功績の評価はまた別問題ですが。また、中曽根氏は教養の点でも、宮澤喜一元首相などとともに政治家の中ではかなり優れていた方だと思います。旧制高校が廃止されて長年経過した現在、中曽根氏のような教養のある政治家が頭角を現すことはなかなか期待しづらいように思います。

 従米路線との関連で、今日たまたま見かけた呟きで気になったのは、

文政権というのは鳩山小沢政権2.0というシミュレーション的なところがあってね、小沢という人間が本当に危ういのは保守からリベラル、護憲から自主防衛、ネオコンからソーシャリズムまでその時その場で主張は幾らでも変わるくせに対米自立と親中だけは決してブレないところ。なあ怖いだろ。

というものです。しかし小沢氏は、石原慎太郎氏と野中広務氏という、自民党のなかでも対極の立ち位置だっただろう二人から行き過ぎた対米従属を批判された人物でした。もちろん、石原氏と野中氏の認識が妥当なのか、という問題はありますし、「普通の国」を目指した小沢氏は、短期的には対米従属を強化するように見えて、長期的には対米自立を目標としていたのだ、との評価も可能かもしれません。しかし、小沢氏が一貫して「親中」との評価にはかなり疑問が残ります。民主党への合流前の自由党時代の小沢一郎氏は、中国から警戒される政治家でした。それが、小泉政権で日中の政権間の関係が悪化し、自民党でも野中氏たち対中利権を掌握していた経世会の影響力が低下すると、中国に接近していったような印象があります。率直に言って、自由党時代の小沢氏の対中姿勢は、自民党在籍時に経世会での権力闘争に敗れたさい、中国利権の大半を掌握できなかったために「反中」となり、日中の政府関係の悪化や経世会の影響力低下などにより、対中利権に食い込めそうになったので「親中」に転向しただけで、とくに一貫した政治姿勢はないようにも思います。まあ、私は約30年にわたってずっと強烈な「アンチ小沢」なので、悪意に満ちた歪んだ小沢氏認識を抱いているのかもしれませんが。

血液におけるY染色体喪失モザイクの遺伝的要因

 血液におけるY染色体喪失モザイクの遺伝的要因に関する研究(Thompson et al., 2019)が公表されました。循環白血球におけるY染色体喪失のモザイク(LOY)は、細胞のクローン性増殖によるモザイク現象の最も一般的な形態ですが、その原因や結果についての知見は限られています。この研究は、新たな計算手法を用いて、イギリスのバイオバンク研究に登録されている男性集団(205011人)の20%が検出可能なLOYを有すると推定される、と示しています。

 この研究では、常染色体上の156のLOY遺伝的関連座位が特定され、これらはヨーロッパ系および日本系の男性757114人において再現性が確認されました。これらの座位からは、細胞周期の調節やがんの感受性に関わる遺伝子に加え、腫瘍増殖の体細胞性ドライバー変異や癌治療の標的に関与する遺伝子が明らかになりました。LOYの遺伝的感受性は、男性および女性の両方において、健康に及ぼす非血液学的影響に関連している、と実証されました。これは、クローン性造血が他の組織のゲノム不安定性のバイオマーカーである、という仮説を裏づけています。

 この研究では、単一細胞RNA塩基配列解読から、LOYの見られる白血球には複数の常染色体遺伝子の発現に調節異常がある、と明らかになり、このような細胞のクローン性増殖が起こる理由についての手掛かりが示されました。総合すると、これらのデータは、癌やその他の加齢関連疾患の根底にある基本的な機構を明らかにするために、クローン性モザイク現象を調べる価値がある、と示しています。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用です。


遺伝学:血液におけるY染色体喪失モザイクの遺伝的素因

遺伝学:Y染色体喪失のモザイク

 J Perryたちは今回、英国バイオバンクに登録されている男性の循環白血球において、細胞のクローン性増殖によるモザイク現象の一般的な形態であるY染色体喪失モザイク(LOY)について、ゲノム規模関連解析を行った結果を報告している。LOYを検出する新たな手法によって、この男性集団の約20%が検出可能なLOYを持つという推定が得られた。また、常染色体上の156のLOY遺伝的関連座位が特定され、これらは別のヨーロッパ系男性集団および日系男性集団で再現性が確認された。さらに、白血球LOYへの遺伝的感受性が、広範な非血液がんと相関することも分かった。



参考文献:
Thompson DJ. et al.(2019): Genetic predisposition to mosaic Y chromosome loss in blood. Nature, 575, 7784, 652–657.
https://doi.org/10.1038/s41586-019-1765-3