三鬼清一郎『大御所徳川家康 幕藩体制はいかに確立したか』

 中公新書の一冊として、中央公論新社から2019年10月に刊行されました。本書は大御所時代の徳川家康、つまり征夷大将軍を息子の秀忠に譲ってから死去までの約10年を基本的には対象としています。この期間は、江戸幕府の体制確立においてたいへん重要となります。本書は、家康の大御所政治の前提として、養子も含めて息子に家督を譲った父親が、依然として実権を把握している事例を取り上げています。家康とよく比較対象になる織田信長も豊臣秀吉もそうでしたし、戦国大名においてもそうした事例は珍しくありませんでした。

 本書は大御所時代の家康の政治を概観し、大坂城の豊臣対策として、各地に城を築いたり、整備していったりしたことを指摘します。本書はこれらの築城を豊臣包囲網と評価していますが、家康存命時には、そうした性格が強かったことは否定できないのでしょう。本書は外交面では、豊臣政権での朝鮮出兵による日本の孤立からの脱却を家康は構想していた、と本書は指摘します。ただ、本書がおもに取り上げるのは朝鮮とヨーロッパ勢力で、明との直接的関係はほとんど言及されていません。

 本書が取り上げた時代と関連する小説もコラムとして取り上げられており、一般向けであることを強く意識した構成になっているように思います。ただ、本書の構成で疑問が残るのは、大御所時代の家康を対象としながら、水戸藩について1章を割き、『大日本史』ばかりか幕末の水戸藩の情勢までやや詳しく解説していることです。柳川一件や島原の乱までは、本書の主題を考えると言及されてもとくに問題ないと思いますが、幕末の水戸藩の情勢をそれなりに取り上げるのは、さすがに行き過ぎだと思います。

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