胎児への大麻の影響

 胎児への大麻の影に関する研究(Frau et al., 2019)が公表されました。大麻入手の合法化が進むにつれて、悪阻や不安などの症状を治療するために大麻を使用する妊婦が増えてきています。大麻の使用が乳児の脳の発達に長期的な影響を及ぼす可能性を示す証拠が提示され始めていますが、そのメカニズムは明らかになっていません。この研究は、妊娠中のラットに大麻の主要な精神活性成分であるテトラヒドロカンナビノール(THC)を投与して、その仔が青年期に達した時に検査を行なうことで、出生前大麻曝露のラットモデルを作製しました。

 その結果、多くの精神疾患において損なわれている行動調節の指標となるプレパルス抑制パラダイムで、仔ラットのTHC感受性において雄は上昇しましたが、雌は上昇していない、と明らかになりました。また、報酬や動機付けに関与する脳領域(腹側被蓋野)のドーパミンニューロンの活動が亢進していることも観察されました。この研究は、アメリカ合衆国食品医薬品局(FDA)の承認薬であるプレグネノロンで青年期のラットを治療することにより、これらの行動とニューロンの変化を修正できました。プレグネノロンについては、大麻使用障害・統合失調症・自閉症・双極性障害の治療薬として臨床試験が行なわれています。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用です。


【神経科学】母胎内でTHCにさらされたラットの脳と行動に生じる変化

 雄ラットでは、大麻の主要な精神活性成分であるTHCへの出生前の曝露が、前青年期におけるドーパミンニューロンの活動亢進と、THCの行動的影響に対する感受性の上昇に関連していることを示唆する論文が掲載される。

 大麻入手の合法化が進むにつれて、つわりや不安などの症状を治療するために大麻を使用する妊婦が増えてきている。大麻の使用が乳児の脳の発達に長期的な影響を及ぼす可能性のあることを示す証拠が出始めているが、どのようにしてそうなるのかは分かっていない。

 今回、Miriam Melisたちの研究グループは、妊娠中のラットにTHCを投与して、その仔が青年期に達した時に検査を行うことで、出生前大麻曝露のラットモデルを作製した。今回の研究では、多くの精神疾患において損なわれている行動調節の指標となるプレパルス抑制パラダイムにおいて、仔ラットのTHC感受性が雄は上昇したが、雌は上昇していないことが明らかになった。また、報酬や動機付けに関与する脳領域(腹側被蓋野)のドーパミンニューロンの活動が亢進していることも観察された。Melisたちは、米国FDAの承認薬であるプレグネノロンで青年期のラットを治療することにより、これらの行動とニューロンの変化を修正できた。プレグネノロンについては、大麻使用障害、統合失調症、自閉症と双極性障害の治療薬として臨床試験が行われているところだ。



参考文献:
Frau R. et al.(2019): Prenatal THC exposure produces a hyperdopaminergic phenotype rescued by pregnenolone. Nature Neuroscience, 22, 12, 1975–1985.
https://doi.org/10.1038/s41593-019-0512-2

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