真核生物の起源

 真核生物の起源に関する研究(Imachi et al., 2020)が公表されました。真核生物の起源は未解明ですが、近年の研究は、「アスガルド類」と呼ばれる系統のアーキア(古細菌)から真核生物が進化した可能性を示唆しています。アスガルド類古細菌のゲノムには真核生物様の特徴が報告されていますが、培養株および関連する生理学的知見が得られていないため、古細菌から真核生物への進化の道筋は未解明です。

 この研究は、ロキアーキオータ門に属するアスガルド類アーキアを10年以上かけて深海堆積物から分離した、と報告しています。「Candidatus Prometheoarchaeum syntrophicum」と名付けたこの古細菌のMK-D1株は、増殖速度が14~25日ときょくたんに遅い嫌気性の極小球菌(直径約550 nm)で、栄養共生によってアミノ酸を分解します。真核生物の細胞は、核膜に覆われた核など、膜で区画化された細胞小器官を特徴としています。アスガルド類古細菌には真核生物様の細胞小器官が存在すると示唆されていましたが、この分離株の細胞内部には小器官様の構造体は認められませんでした。

 その代わり、この古細菌の細胞形態は複雑で、長くて分岐がある独特の突起を有する、と明らかになりました。これらの突起により通り掛かった細菌が捕らえられ、次にそうした細菌が内部に取り込まれ、その後ミトコンドリアなどの膜に閉じ込められた小器官へと進化し、複雑な生命体への準備が整えられた可能性がある、というわけです。培養およびゲノム解析から得られたデータ、ならびに既存の文献の合理的な解釈に基づき、この研究は真核生物の誕生について、仮説モデル「entangle–engulf–endogenize(巻き込み–飲み込み–内部で発達)モデル(別名E3モデル)」を提案しています。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用です。


微生物学:原核生物と真核生物の境界に位置するアーキアの分離

Cover Story:細胞のつながり:初めて培養されたアスガルド類アーキアから得られた真核生物の進化の手掛かり

 植物から動物まで、複雑な生命体は全て真核生物である。真核生物の細胞は、核膜に覆われた核など、膜で区画化された細胞小器官を特徴としている。しかし、真核生物の起源はまだよく分かっていない。井町寛之(海洋研究開発機構)と延優(産業技術総合研究所)たちは今回、初期の真核細胞を生み出した進化経路の解明に役立つ可能性がある新たな単細胞微生物について報告している。著者たちは、真核生物の祖先に最も近縁と考えられている現生の微生物群であるアスガルド類アーキアの1種の培養と分離に初めて成功した。著者たちは、このアーキアを「Candidatus Prometheoarchaeum syntrophicum」と命名し、細胞の倍加時間が14〜25日と増殖速度が極めて遅く、増殖を維持するには共生微生物が必要であることを見いだした。興味深いことに、この微生物の外表面には、表紙に示すような分岐した突起があることが多い。これらの突起によって通り掛かった細菌が捕らえられ、次にそうした細菌が内部に取り込まれ、その後ミトコンドリアなどの膜に閉じ込められた小器官へと進化して、複雑な生命体への準備が整えられた可能性がある。



参考文献:
Imachi H. et al.(2020): Isolation of an archaeon at the prokaryote–eukaryote interface. Nature, 577, 7791, 519–525.
https://doi.org/10.1038/s41586-019-1916-6

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