極地域では優位な内温性の海洋捕食者

 極地域における内温性の海洋捕食者の優位に関する研究(Grady et al., 2019)が公表されました。日本語の解説記事もあります。地球の生物多様性の大部分は熱帯付近に集中し、赤道に向かって多様性が増すという緯度勾配を形成しており、これが陸上・海洋のほぼすべての動物・植物・昆虫で広範に観測されるパターンです。しかし、海洋哺乳類と海鳥の分布パターンはそれと正反対になっています。高緯度にある極寒の海では内温(恒温、温血)性の海洋哺乳類や海鳥が繁栄しており、海水温の低さによって動きが鈍く遅くなった外温(変温、冷血)性の被食者を常食として摂取しています。この研究は、熱帯にはアザラシやクジラやペンギンといった内温性の哺乳類や鳥類はほとんどおらず、熱帯の暖かい海に実際にコロニーを作っているのはイルカだけである、と指摘します。動物がこれほど異なる多様性パターンを示すのかは、まだ不明です。

 この研究は、クジラ・サメ・魚類・海鳥・爬虫類など上位998種の海洋捕食者の分布をデータベース化し、内温動物と外温動物の生物地理学における著しい違いを明らかにしました。この研究は次に、これらの種の捕食率と代謝と海水温をモデル化し、概して内温性の捕食者は「とろくて、まぬけで、冷血の」獲物を好む、と見出しました。海水温が下がれば、こうした条件で獲物を狩ることにかけは、内温動物のほうが外温動物よりも代謝的に有利、つまり代謝が速いというわけです。内温動物は代謝によって熱が発生して眼や脳の温度が上がり、場合によっては、狩りのさいの感覚能力が高まることもあります。またこの研究は、極地域の海水温上昇が続いた場合に、クジラやアザラシやペンギンなどの動物が直面すると思われる、新たな問題を浮き彫りにしています。


参考文献:
Grady JM. et al.(2019): Metabolic asymmetry and the global diversity of marine predators. Science, 363, 6425, eaat4220.
https://doi.org/10.1126/science.aat4220