マラリアを伝搬する蚊の熱源探索行動

 マラリアを伝搬する蚊の熱源探索行動に関する研究(Greppi et al., 2020)が公表されました。日本語の解説記事もあります。温血宿主を発見して吸血するために不可欠なマラリアを伝搬する蚊の熱源探索行動は、昔は体温を低く保つための熱の回避に特化していた温度受容体に依存しています。現在マラリアを伝搬する蚊がこの受容体を持っているのは、熱源を標的にする、つまり餌を見つけるためです。この研究は、蚊の熱源探索阻止の方法を示唆しており、マラリアのような蚊が媒介する病気を抑制する新しい方法の開発指針になる、と期待されます。

 あらゆる媒介昆虫の中でもおそらく蚊は最もよく知られており、さまざまな病原体の宿主の伝搬に関与しています。ワクチンの使用や媒介蚊への殺虫剤使用といった方法でマラリアを抑制するのは難しい、と判明しており、研究者たちは代替手段を模索しています。病気を拡大する他の昆虫と同様に、蚊は体温感知の特殊な受容体を使って、餌である血液源を狙っています。しかし、蚊の熱源探索行動の分子基盤は解明されていません。この研究は、祖先伝来の冷却活性化受容体が、サハラ砂漠以南のアフリカの大半の地域でマラリアを伝搬する主要媒介蚊である、ガンビエハマダラカ(Anopheles gambiae)の熱感知に関与しているのかどうか、評価しました。

 この研究は、ゲノムレベル解析と標識CRISPR-Cas9突然変異体を用いて、進化過程で保存された感覚温度受容体IR21aを熱源探索行動の主要推進源として特定しました。Ir21aは他の昆虫では冷却受容体として熱の回避を仲介しており、これにより昆虫は最適な体温を維持できるようになっています。この研究は、ガンビエハマダラカの吸血習性が高温感知を促進するためのこの先祖伝来の温度受容体を転用して進化した、と推測しています。Ir21aの阻止により熱源探索行動が完全になくなることはありませんでしたが、雌の蚊が血液源を発見する能力は大幅に低下しました。これまでの媒介者生態の研究の中心は化学受容で、温度受容は比較的軽視されていましたが、この研究が熱感覚の大本を特定することで、生物の媒介による病気を抑制できる可能性が開けました。


参考文献:
Greppi C. et al.(2020): Mosquito heat seeking is driven by an ancestral cooling receptor. Science, 367, 6478, 681–684.
https://doi.org/10.1126/science.aay9847

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