産業革命以前のメタンから示される人為起源のメタン排出

 産業革命以前のメタン排出に関する研究(Hmiel et al., 2020)が公表されました。大気中のメタン(CH4)は強力な温室効果ガスで、そのモル分率は産業革命以前の時代の2倍以上になっています。化石燃料の抽出と使用は、最大の人為的メタン排出源の一つですが、こうした寄与の正確な規模は議論になっています。炭素14のメタンを使って、化石メタン(炭素14を含まないメタン)の排出と同時期の生物起源の放出源とを区別できます。しかし、20世紀半ば以降、原子炉からの炭素14メタンの直接排出が充分に絞り込まれていないため、この方法は難しくなっています。

 さらに、人為的な排出源と天然の地質学的放出源(水溜りや泥火山など)の間での化石メタンの総排出量の分配については、議論が続いています。現在、年間172〜195Tg(テラグラム)です。排出インベントリーは、後者が総排出量の中で年間約40〜60Tgを占めている、と示唆します。約11600年前の更新世末期には、地質学的な放出は年間15.4Tg未満でしたが、この時期は陸域を大きな氷床が覆っており、海水準が低く、永久凍土が広範囲に及んでいたため、現在の放出と完全には類似していません。

 本論文は、産業革命以前の氷床コアの炭素14メタンの測定結果を用いて、当時の大気への自然な地質学的メタン放出量は年間約1.6 Tg 、最大で年間5.4 Tgと、現在の推定より1桁少なかった、と示します。この結果は、人為起源の化石メタン排出量が、年間約38~58 Tg、つまり最近の推定の25〜40%ほど過小評価されていることを示しています。この記録は、大気と気候に及ぼす人間の影響を浮き彫りにしており、全球のメタン収支のインベントリーの確固たる目標を与え、排出量削減目標の策定に役立ちます。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用です。


気候科学:産業革命以前の14CH4が示す、より大きな人為起源の化石CH4排出

気候科学:大気中のメタンに残されたヒトの痕跡

 メタンは強力な温室効果ガスであり、メタンの排出は地球温暖化全体の重要な要素である。しかし、メタン排出源の解明にはまだ問題が残っている。今回B Hmielたちは、氷床コアから得られた同位体の証拠を用いて、産業革命以前の天然のメタン排出源が、これまで考えられていたよりずっと小さかったことを示している。従って、人間が生み出すメタンの排出量は、これまで示唆されていたよりずっと多い。



参考文献:
Hmiel B. et al.(2020): Preindustrial 14CH4 indicates greater anthropogenic fossil CH4 emissions. Nature, 578, 7795, 409–412.
https://doi.org/10.1038/s41586-020-1991-8

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