保阪正康『昭和の怪物 七つの謎』第3刷

 講談社現代新書の一冊として、講談社より2018年7月に刊行されました。第1刷の刊行は2018年7月です。本書は、昭和時代の「怪物」とそれにまつわる「謎」を取り上げています。具体的には、東條英機は何に脅えていたのか(第1章)、石原莞爾は東條暗殺計画を知っていたのか(第2章)、石原莞爾の「世界最終戦論」とは何だったのか(第3章)、犬養毅は襲撃の影を見抜いていたのか(第4章)、渡辺和子は死ぬまで誰を赦さなかったのか(第5章)、瀬島龍三は史実をどう改竄したのか(第6章)、吉田茂はなぜ護憲にこだわったのか(第7章)です。

 本書の全体的な論調として気になるのは、勧善懲悪的な側面がやや強いように思えるところです。本書は概して大日本帝国軍部に厳しく、吉田茂など部に対抗した人々に好意的です。もちろん、教条的・精神論的・保身的な軍人と対立し、むしろ敵視されていたような軍人は好意的に取り上げられています。たとえば、二・二六事件で殺害された渡辺錠太郎です。本書では、その娘である渡辺和子への著者による取材も取り上げられていますが、渡辺和子は二・二六事件を終生赦さなかった、と指摘されています。渡辺和子がとくに嫌っていたのは、二・二六事件で父を殺害した実行犯の軍人たちよりも、それを煽りながら、「後ろにいて逃げ隠れした人たち」でした。具体的には、真崎甚三郎と荒木貞夫です。

 本書第1章は、東條英機が何に脅えていたのか、論じています。本書は、昭和天皇から非戦を期待されて首相に就任した後の東條が「自らの影」、陸相時代など首相就任前に自らが煽った強硬論に脅えていた、と論じます。本書の描く東條英機は、大日本帝国の統治機構をろくに理解しておらず、視野狭窄で意固地な器の小さい人物で、首相どころか師団長の器でさえなかった、との印象を受けます。正直なところ、本書は東條を過小評価しているのではないか、と思うのですが、東條が首相の器ではなかったことは否定できないでしょう。そうした人物が難局で首相に就任したことに、東條個人の力量だけではなく、大日本帝国とその軍部の問題も潜んでいるのだと思います。

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