高温と早産

 高温と早産に関する研究(Barreca, and Schaller., 2020)が公表されました。気候変動を原因とした高温気象の発生が増えると、乳児の健康への悪影響の可能性が高まりますが、この脅威の規模に関してじゅうぶんな研究は行なわれていませんでした。妊娠期間の短縮は、新生児のその後の健康および認知機能の低下と関連する、と考えられています。また高温気象は、早産傾向と妊娠期間の短縮をもたらすことが、先行研究によって示唆されています。しかし、高温気象のために妊娠期間が何日短縮されたのかは、正確には分かっていません。

 この研究は、アメリカ合衆国における郡レベルの1日の出生率の推定変動率を用いて、20年間にわたる高温気象に関連した妊娠期間の短縮日数の総数を定量化しました。この研究で用いられた標本には、5600万人の出産が含まれています。この研究は、最高気温が摂氏32.2度(華氏90度)を超える日に出生率が5%上昇し、平均妊娠期間が6.1日短縮する、と推定しています。一部の出産は、2週間の早産でした。全体的には、アメリカ合衆国では高温気象のため、1969~1988年に年間平均25000人の乳児が早産で生まれ、妊娠期間が年間15万日以上短くなった、と推定されます。この研究は、気候の将来予測によれば、今世紀末までに妊娠期間がさらに年間25万日短縮する可能性がある、と結論づけています。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用です。


【気候変動】高い気温と早産のつながり

 米国では、高温気象のため、1969~1988年に年間平均2万5000人の乳児が早産で生まれ、妊娠期間が年間15万日以上短くなったことを示唆する論文が掲載される。高温気象が発生すると、その日の出産件数が増え、最大2週間の早産になることもあるとされる。

 気候変動を原因とした高温気象の発生が増えると、乳児の健康に悪影響が及ぶ可能性が高まるが、この脅威の規模に関しては十分な研究が行われていなかった。妊娠期間の短縮は、新生児のその後の健康と認知機能の低下と関連すると考えられている。また、高温気象は、早産傾向と妊娠期間の短縮をもたらすことが、先行研究によって示唆されている。しかし、高温気象のために妊娠期間が何日短縮されたのかは正確には分かっていない。

 今回、Alan BarrecaとJessamyn Schallerは、米国内の郡レベルの1日の出生率の推定変動率を用いて、20年間にわたる高温気象に関連した妊娠期間の短縮日数の総数を定量化した。今回の研究で用いられたサンプルには、300万郡・日以上にわたる5600万人の出産が含まれていた。論文著者は、最高気温が摂氏32.2度(華氏90度)を超える日に出生率が5%上昇し、平均妊娠期間が6.1日短縮すると推定している。一部の出産は、2週間の早産だった。

 論文著者は、気候の将来予測によれば、今世紀末までに妊娠期間がさらに年間25万日短縮する可能性があると結論付けている。



参考文献:
Barreca A, and Schaller J.(2020): The impact of high ambient temperatures on delivery timing and gestational lengths. Nature Climate Change, 10, 1, 77–82.
https://doi.org/10.1038/s41558-019-0632-4

現代アフリカ人におけるネアンデルタール人の遺伝的影響(追記有)

 現代アフリカ人におけるネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)の遺伝的影響に関する研究(Chen et al., 2020)が報道されました。『サイエンス』のサイトには解説記事が掲載されています。この研究はオンライン版での先行公開となります。現生人類(Homo sapiens)は絶滅した他のホモ属(古代型ホモ属)と交雑してきました(関連記事)。具体的には、ネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)や種区分未定のホモ属であるデニソワ人(Denisovan)です。すべての非アフリカ系現代人のゲノムには、約2%のネアンデルタール人由来の領域があり、その中でもオセアニア系には、デニソワ人由来の領域が追加で2~4%存在します(関連記事)。

 しかし、古代型ホモ属のゲノムの中には現代人に継承されていない大きな領域も確認されており、選択が生じた可能性も指摘されています(関連記事)。一方で、古代型ホモ属由来の配列が有益だった可能性も指摘されています(関連記事)。ただ、古代型ホモ属から現生人類への遺伝子流動における、機能的影響や選択については、まだ研究が始まったばかりである、と本論文は指摘します。また、非アフリカ系現代人のゲノムにおける古代型ホモ属由来の領域の割合について、アジア東部系がヨーロッパ系よりも20%ほど高いことなど(関連記事)、地域差が見られることも指摘されてきました。これに関しては、ヨーロッパ系現代人の祖先集団が、まだ化石の確認されていない仮定的な存在(ゴースト集団)で、ネアンデルタール人の遺伝的影響をほとんど受けていなかったと推測される「基底部ユーラシア人」と交雑したからだ、との仮説(希釈仮説)や、選択の違いを想定する説や、ボトルネック(瓶首効果)説や、複数回交雑説など、さまざまな仮説が提示されており、まだ確定していません(関連記事)。

 こうした現生人類と古代型ホモ属との間の遺伝子流動について、近年では研究が飛躍的に発展してきました。それは研究手法改善の結果でもあり、古代型ホモ属の参照ゲノムを利用せずとも、現代人のゲノム配列の比較により古代型ホモ属との交雑の痕跡と思われる領域を検出する方法では、以前には検出できなかったデニソワ人と現生人類との複数回の交雑が明らかになりました(関連記事)。本論文は、古代型ホモ属と交雑していない参照現代人ゲノム配列を必要とせず、現代人のゲノムにおけるネアンデルタール人系統を検出する新たな手法であるIBDmixを用いて、現生人類とネアンデルタール人の交雑を検証します。本論文はIBDmixを、ユーラシア・アメリカ・アフリカの現代人の大規模ゲノムデータセットに適用し、現代アフリカ人におけるネアンデルタール人系統に関する新たな知見を提示し、ユーラシア人におけるネアンデルタール人系統の相対的な水準を再検証するとともに、適応的な遺伝子移入の事例を調査します。

 これまで、現代人のゲノムにおけるネアンデルタール人由来の領域の識別には、一般的にヨルバ(YRI)などネアンデルタール人と混合していないとされる現代人のゲノムを参照配列として利用し、共有配列を特定したうえで決定します。しかし、参照配列にネアンデルタール人配列が含まれていると、対象となる現代人のネアンデルタール人配列を見落とす場合があります。本論文が用いる新たな手法であるIBDmixの名称は、遺伝的原理である「同祖対立遺伝子(identity by descent)」に由来します。IBDmixでは、現代人の参照配列は利用されません。同祖対立遺伝子(IBD)とは、かつて共通祖先を有していた2個体のDNAの一部が同一であることを示します。IBD領域の長さは、2個体が共通祖先を有していた期間に依存し、たとえばキョウダイよりもハトコの方が短くなります。

 本論文は、現生人類のゲノムにおけるネアンデルタール人配列に関して、5万年前頃の両者の交雑に起因する配列と、50万年前頃かそれ以前に共通祖先を有していたことに起因する配列とを区別するために、IBDmixを用いました。以前の手法は、ネアンデルタール人と交雑していないとされる現代人のゲノムを参照配列として、現生人類のゲノムにおける、共通祖先に由来しないネアンデルタール人由来の領域を特定しました。しかし本論文は、この方法では、どの集団の個体のゲノムを参照配列として用いるかにより、ネアンデルタール人由来の領域の推定に相違が生じる可能性を指摘します。IBDmixでは、変異頻度やIBD領域の長さのようなネアンデルタール人の配列の特徴を用いて、共通配列が最近の交雑なのか、それとも共通祖先に起因するのか、区別します。

 IBDmixの使用により、現代人のゲノムにおけるネアンデルタール人系統の領域をより正確に検出できるようになりました。ただ、以前の研究では、現代人に遺伝的影響を残しているネアンデルタール人は、南シベリアのアルタイ山脈のデニソワ洞窟(Denisova Cave)で発見された女性個体(関連記事)の集団(東方系ネアンデルタール人)とは遺伝的にやや異なる集団(西方系ネアンデルタール人)と推測されています(関連記事)。そのため本論文は、参照古代型ゲノム(本論文では南シベリアのネアンデルタール人)が遺伝子移入をもたらした古代型ゲノム(西方系ネアンデルタール人)と離れた関係にある場合、IBDmixがどのように機能するのか、検証しました。その結果、短い配列でわずかな低下が観察されましたが、全体的なパフォーマンスは一貫していました。本論文は、IBDmixが古代型ホモ属からの遺伝子移入を検出する強力な手法であることを指摘します。

 本論文は、1000ゲノム計画に登録された地理的に多様な現代人集団からの2504人のゲノムにIBDmixを適用し、南シベリアのネアンデルタール人個体の参照ゲノムを利用して、現代人のゲノムにおけるネアンデルタール人由来の配列を特定しました。2504人の現代人のゲノムでは、重複分を除くと、合計でネアンデルタール人由来の12億9千万塩基対が特定されました。上述のように、IBDmixは現代人の参照配列にネアンデルタール人と交雑していないと推定されるアフリカ集団を利用しなかったため、現代アフリカ人集団におけるネアンデルタール人由来の領域を初めて堅牢に特定できました。

 アフリカ人では、ナイジェリアのエサン(ESN)集団の1640万塩基対(16.4 Mb)からケニアのルヒヤ(Luhya)集団の1800万塩基対まで、平均して1700万塩基対のネアンデルタール人配列が特定されました。これは、以前の推定である26000~500000塩基対よりもはるかに多くなります。また、アフリカ人のゲノムのネアンデルタール人配列のうち94%以上は、非アフリカ人と共有されていました。非アフリカ系現代人のゲノムに見られるネアンデルタール人配列の平均は、ヨーロッパ系が5100万塩基対、アジア東部および南部系がともに5500万塩基対で、以前の推定である20%よりもずっと低く、8%ほどの違いしかありませんでした。なお、アメリカ合衆国やカリブ海のアフリカ系のゲノムに見られるネアンデルタール人配列は、非アフリカ系との交雑を反映してかアフリカ人よりは多いものの、アジア系よりはずっと少なくなっています(2270万~2750万塩基対)。

 アフリカ人に見られる、以前の推定よりもずっと多いネアンデルタール人配列の起源について本論文は、ネアンデルタール人と交雑した出アフリカ現生人類集団の一部がアフリカに「戻って」きたことに加えて、非アフリカ系現代人の主要な祖先集団の出アフリカの前に、アフリカからユーラシアへと拡散した現生人類がネアンデルタール人と交雑したことを想定すると最も整合的である、と見出しました。また、アフリカに戻って来た現生人類は、大きく分けると、アジア東部系と分岐した後のヨーロッパ系(ユーラシア西部系と言う方がより正確かもしれませんが)であることも明らかになりました。

 上述のように、本論文が示す現代人のネアンデルタール人配列の割合は、以前にも推定されていたようにヨーロッパ系よりもアジア東部系の方が高いものの、その違いは以前の推定である20%増よりもずっと低い8%増である、と明らかになりました。これは、以前の手法では、ネアンデルタール人と交雑していないという前提の現代アフリカ人のゲノムを参照配列として用いていたことに起因する、と本論文は指摘します。IBDmixでアフリカ人に見られるネアンデルタール人配列を除去して計算すると、ネアンデルタール人配列はヨーロッパ系よりもアジア東部系が18%ほど増加します。これは、ヨーロッパ系(ユーラシア西部系)現生人類がアフリカに「戻って」きたことにより、アフリカ人のみと共有されるネアンデルタール人配列が、アジア東部系よりもヨーロッパ系(ユーラシア西部系)の方でずっと多いためです(前者が2%なのに対して後者が7.2%)。以前の推定ではこの効果が無視されていた、というわけです。

 本論文は、現代人に見られる高頻度のネアンデルタール人由来のハプロタイプについても検証しています。これらは現生人類の適応度を高めたかもしれないため、以前から注目されていました。本論文は固有の高頻度ネアンデルタール人ハプロタイプを、非アフリカ系現代人で38、アフリカ人で13特定し、以前に特定されている高頻度ハプロタイプと比較しました。非アフリカ系現代人の38ハプロタイプのうち19は、以前の研究で報告されていました。また、アフリカ人とヨーロッパ人が共有する高頻度ネアンデルタール人ハプロタイプも特定されました。これはIBDmixの威力を示しています。アフリカ人固有となる13の高頻度ネアンデルタール人ハプロタイプには、免疫機能に関連する遺伝子(IL22RA1およびIFNLR1など)や紫外線感受性関連遺伝子(DDB1およびIL22RA1など)があります。これらのうちいくつかは、非アフリカ系現代人の主要な祖先集団の出アフリカの前に、アフリカからユーラシアへと拡散した現生人類からネアンデルタール人への遺伝子流動でもたらされたかもしれませんが、アフリカ人とヨーロッパ人で共有される高頻度のネアンデルタール人ハプロタイプのうちの一つ(3番染色体に位置します)のみが、現生人類から南シベリアのネアンデルタール人への遺伝子移入(関連記事)の結果として特定された遺伝子座と重なっており、その他は重なっていません。こうした高頻度のネアンデルタール人ハプロタイプは、アフリカ人の進化史における選択の考察に有益です。

 上述のように、古代型ホモ属のゲノムの中には現代人に殆どあるいは全く継承されていない大きな領域(不毛領域)も確認されており、選択が生じた可能性も指摘されています。その結果、ネアンデルタール人に関しては、以前に報告されていた6ヶ所の不毛領域のうち、7番染色体の発話能力に関連するFOXP2と、3番染色体の脳細胞の突起抑制に関連するROBO1およびROBO2を含む4ヶ所で改めて確認されました。これは、デニソワ人の不毛領域とも一致します。古代型ホモ属の不毛領域の頻度はアフリカ人全体の標本を含めても含めずとも大きく変わらず、アフリカ人のゲノムにおけるネアンデルタール人配列がおもに非アフリカ系現生人類からの遺伝子移入に起因する、という推測と一致します。

 本論文は、現生人類と古代型ホモ属との交雑の検出にIBDmixがきわめて有効であることを示しました。しかし本論文は、IBDmixは古代型人類の参照ゲノム配列を必要とするため、未知もしくは配列されていない人類系統から現生人類へと遺伝子移入された配列の検出には適していない、と注意を喚起しています。また本論文は、IBDmixにおいて、ゲノムおよび集団間の遺伝的組換え率の不均一性による影響があることも指摘しています。そのため、標本サイズが限定され、アレル(対立遺伝子)頻度と遺伝的組換え率の推定が不正確である個体のゲノムへの適用は困難です。IBDmixはゲノム解析におけるこれまでの手法の上位互換ではなく、相互補完的手法になる、というわけです。

 本論文は上述のように、アフリカ人のゲノムに見られるネアンデルタール人由来の領域の割合が、以前の推定よりもずっと高いことを明らかにしました。とはいえ、その割合は非アフリカ系現代人の約1/3と低くなっています。しかし、じゅうらいの推定よりもずっと高いこの割合は、アフリカの人類集団が静的ではなく動的で、現生人類の出アフリカ後も同様だったことを示します。それは、最近のアフリカ西部の古代DNA研究でも改めて示されました(関連記事)。

 出アフリカ現生人類集団の一部がアフリカへと「戻り」、アフリカ集団に遺伝的影響を与えたことは、以前から指摘されていました。古代DNA研究では、現代アフリカ東部集団の遺伝子プールの25%ほどはユーラシア西部集団に由来し、アフリカ西部・中央部・南部の現代人集団にも、この「逆流」の遺伝的影響は及んでいる、とすでに2015年の研究で推測されていました(関連記事)。2017年の古代DNA研究では、現代人では早期に分岐した集団とされるコイサンも、アフリカ東部やユーラシアの集団から9~30%の遺伝的影響を受けている、と推定されています(関連記事)。また現代人のゲノムデータに基づく2015年の研究では、アフリカ西部のヨルバ(Yoruba)人集団と、古代ユーラシア人集団との10500~7500年前頃の交雑の可能性が指摘されています(関連記事)。

 本論文は、アフリカ全土の集団において、多様な水準でゲノムにネアンデルタール人由来の領域が見られても不思議ではない、と指摘します。私も、漠然とした想定よりも高かったものの、とくに不思議な結果ではない、と思います。「純粋なサピエンスはアフリカ人のみ」といった認識もネットで見られますが、それには大きな問題があります(関連記事)。また近年では、現生人類の形成過程がたいへん複雑であることを指摘した見解も提示されており(関連記事)、そもそも「純粋な種」という概念自体に問題があるのでしょう。

 また上述のように、非アフリカ系現代人の主要な祖先集団の出アフリカの前に、アフリカからユーラシアへと拡散した現生人類からネアンデルタール人への遺伝子流動の可能性が指摘されています。この年代に関しては、10万年前頃から25万年前頃まで、議論が続いていますが、本論文は15万~10万年前頃と推定しています。ただ本論文は、追加のデータが必要とも指摘しています。ネアンデルタール人やデニソワ人など古代型ホモ属と現生人類との交雑は、たいへん複雑だった可能性が高そうです。

 アフリカ人のゲノムにおける以前の推定よりもずっと高いネアンデルタール人配列の割合を明らかにしたことと共に、本論文の知見で重要なのは、上述のように、ヨーロッパ系とアジア東部系の間でゲノムに占めるネアンデルタール人由来の領域の割合の違いが以前の推定よりもずっと小さい、と示したことです。以前はこの違いについて、上述の希釈仮説も提示されていました(関連記事)。希釈仮説に対しては、ヨーロッパ系とアジア東部系の間の、ゲノムに占めるネアンデルタール人由来の領域の割合の違いを説明できるほどではない、との批判もありますが、本論文によりその違いは以前の推定よりもずっと小さい、と見直されたので、希釈仮説がより説得的になった、とも言えるかもしれません。ただ本論文は、現生人類の特定の集団とネアンデルタール人との追加の交雑が起きた可能性を排除するわけではない、と注意を喚起しています。


参考文献:
Chen L. et al.(2020): Identifying and Interpreting Apparent Neanderthal Ancestry in African Individuals. Cell, 180, 4, 677–687.E16.
https://doi.org/10.1016/j.cell.2020.01.012


追記(2020年2月4日)
 ナショナルジオグラフィックでも報道されました。

大河ドラマ『麒麟がくる』第3回「美濃の国」

 斎藤利政(道三)は美濃に侵攻してきた織田信秀の軍勢を撃退し、信秀と通じていた美濃守護の土岐頼純を毒殺します。1548年(西暦は厳密な換算ではなく、1年単位での換算です)、夫の土岐頼純を父の斎藤利政に毒殺された帰蝶が明智光秀(十兵衛)を訪ねてきます。幼き頃、明智家で1年ほど過ごした帰蝶にとって、心の休まる場所でした。利政は息子の高政(義龍)とともに土岐頼芸を訪ね、美濃守護への復帰を要請します。しかし、頼芸も利政を嫌い、信秀と通じて利政を追い落とそうとします。頼芸から我が子と思って頼りにしていると言われた高政は、母の深芳野に、実父は利政ではなく頼芸ではないか、と尋ねますが、深芳野は即座に否定します。利政・高政親子の確執は初回から描かれていましたが、その確執は深まっていき、和解の兆候は見えません。この親子関係は前半の見どころとなりそうです。

 今回、高政が光秀に、父の利政は戦が上手いものの、内政には問題があり、強引なやり方で国衆に反感を買っており先はない、と打ち明けます。ここまで、大物感溢れる人物として描かれている斎藤利政(道三)ですが、あくまでも高政の視点ではあるものの、重大な欠陥もある、と示されました。高政が光秀を頼りにしていることも明示され、両者の関係の推移も注目されます。今回は帰蝶の出番が多く、全て昨年(2019年)11月下旬以降に撮り直したのかと考えると、どうしても帰蝶の登場場面への評価は甘くなってしまいますが、それを割り引いても、悪くはない演技だと思います。とくに、凛とした感じはなかなかよいと思います。今後、慣れてくるともっとよくなるのではないか、と期待しています。幼少時の駒を救った男性の話はすでに語られていましたが、今回、美濃と関係があるのではないか、と示唆されました。これはかなり重要な設定のようなので、謎解きに注目しています。

喫煙と飲酒による脳の高齢化

 喫煙と飲酒による脳の高齢化に関する研究(Ning et al., 2020)が公表されました。以前の研究で、特定の生活習慣(過度の喫煙やアルコール摂取など)が特定の脳領域に悪影響を及ぼす、と示されていますが、とくに脳全体を考えた場合に、喫煙とアルコール摂取が脳年齢とどのように関連しているのか、明らかではありません。この研究は、機械学習のいくつかの手法とMRIを用いて、イギリスバイオバンクにデータ登録されている45~81歳の被験者(合計17308人)の相対脳年齢を決定しました。相対脳年齢は、MRI測定に基づく脳年齢を同世代の平均脳年齢に照らして算定されます。

 この研究は、喫煙習慣に関する情報が収集された11651人において、1日の大半または1日中喫煙していた者の相対脳年齢が、喫煙頻度が低い者や禁煙している者より高かったことを見いだしました。喫煙量が1パック・年増えると、相対脳年齢が0.03年上昇していました。1パック・年は、1年を通じて平均1日1箱のタバコを吸うことと定義されます。また、飲酒行動に関する情報が収集された11600人において、ほぼ毎日飲酒していた者の相対脳年齢が、それよりも飲酒頻度が低い者又は全く飲酒しない者の相対脳年齢より高いことも明らかになりました。また、1日当たりのアルコール摂取量が1グラム増えると、相対脳年齢が0.02年高くなりました。

 これらの知見は、喫煙と飲酒が脳年齢に及ぼす有害な影響は、おもに喫煙と飲酒の頻度が高い者に生じており、脳年齢がわずかに上昇することを示唆しています。この研究は、喫煙とアルコール摂取以外にも、さまざまな環境因子と遺伝因子が脳年齢に関連しているかもしれない点にも注意を喚起しています。また、こうした関連の解明をさらに進めるには、より大きなサンプルを用いた研究が必要とも指摘されています。脳年齢のわずかな上昇とはいえ、煙草と酒が心底嫌いな私にとって、勇気づけられる研究です。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用です。


【健康】毎日の喫煙と飲酒が脳の高齢化につながっているかもしれない

 飲酒と喫煙を毎日行う者は、それよりも飲酒と喫煙の頻度が低い者と比べて、相対脳年齢がやや高いという研究結果を報告する論文が掲載される。

 以前の研究で、特定の生活習慣(過度の喫煙やアルコール摂取など)が特定の脳領域に悪影響を及ぼすことが示されているが、特に脳全体を考えた場合に、喫煙とアルコール摂取が脳年齢とどのように関連しているのかは明らかでない。

 今回、Arthur W. Togaたちの研究チームは、機械学習のいくつかの手法とMRIを用いて、英国バイオバンクにデータ登録されている45~81歳の被験者(合計1万7308人)の相対脳年齢を決定した。相対脳年齢は、MRI測定に基づく脳年齢を同世代の平均脳年齢に照らして算定される。

 Togaたちは、喫煙習慣に関する情報が収集された1万1651人において、1日の大半または1日中喫煙していた者の相対脳年齢が、喫煙頻度が低い者や禁煙している者より高かったことを見いだした。そして、喫煙量が1パック・年増えると、相対脳年齢が0.03年上昇していた。1パック・年は、1年を通じて平均1日1箱のタバコを吸うことと定義される。また、飲酒行動に関する情報が収集された11600人において、ほぼ毎日飲酒していた者の相対脳年齢がそれよりも飲酒頻度が低い者又は全く飲酒しない者の相対脳年齢より高かった。また、1日当たりのアルコール摂取量が1グラム増えると、相対脳年齢が0.02年高くなった。以上の知見は、喫煙と飲酒が脳年齢に及ぼす有害な影響が、主に喫煙と飲酒の頻度が高い者に生じており、脳年齢がわずかに上昇することを示唆している。

 Togaたちは、喫煙とアルコール摂取以外にも、さまざまな環境因子と遺伝因子が脳年齢に関連している可能性がある点にも注意を要するとしている。こうした関連の解明をさらに進めるには、より大きなサンプルを用いた研究が必要とされる。



参考文献:
Ning K. et al.(2020): Association of relative brain age with tobacco smoking, alcohol consumption, and genetic variants. Scientific Reports, 10, 10.
https://doi.org/10.1038/s41598-019-56089-4

菜食による尿路感染症のリスク低減

 菜食(ベジタリアン食)による尿路感染症のリスク低減に関する研究(Chen et al., 2020)が公表されました。尿路感染症は多くの場合、腸内細菌(大腸菌など)が原因になっています。腸内細菌は尿道から尿路に侵入し、腎臓と膀胱に悪影響を及ぼします。以前の研究で、尿路感染症の原因と知られている大腸菌株の主要な貯蔵場所の一つは食肉と明らかになっていますが、食肉の摂取を避ければ、尿路感染症のリスクが低減するのかどうかは、分かっていません。

 この研究は、台湾の仏教徒の健康転帰における菜食の役割を調査する研究(慈濟ベジタリアン研究)に参加した台湾の仏教徒(9724人)における尿路感染症の罹患率を調べました。その結果、尿路感染症の全体的なリスクは、菜食主義者(ベジタリアン)の方が非菜食主義者より16%低い、と明らかになりました。また、研究対象となった3040人の菜食主義者のうち217人が尿路感染症を発症したのに対して、非菜食主義者6684人のうち、尿路感染症を発症したのは444人でした。菜食に関連した尿路感染症リスクの低減は、女性よりも男性の方が大きかったものの、男性の尿路感染症の全体的なリスクは、食事に関係なく女性よりも79%低いことも明らかになりました。

 大腸菌が存在していることの多い鶏肉や豚肉を食べないことが、尿路感染症の原因となり得る大腸菌の摂取を避ける方法になるのではないか、とこの研究は推測しています。また、この研究は、多くの菜食主義者の高食物繊維食が腸内大腸菌の増殖を阻止し、腸内の酸性度を高めることにより尿路感染症のリスクの低減を図れる、との見解も提示しています。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用です。


【健康】尿路感染症のリスク低減にベジタリアン食が役立つかもしれない

 ベジタリアン食(菜食)が、尿路感染症(UTI)のリスク低下につながる可能性があることを報告する論文が掲載される。

 UTIは、腸内細菌(大腸菌など)が原因になっていることが多い。腸内細菌が、尿道から尿路に侵入し、腎臓と膀胱に悪影響を及ぼすのだ。以前の研究で、UTIの原因であることが知られた大腸菌株の主要な貯蔵場所の1つは食肉であることが明らかになっているが、食肉の摂取を避ければ、UTIのリスクが低減するのかどうかは分かっていない。

 今回、Chin-Lon Linたちの研究チームは、台湾の仏教徒の健康転帰における菜食の役割を調査する研究(慈濟ベジタリアン研究)に参加した台湾の仏教徒(9724人)におけるUTIの罹患率を調べた。その結果、UTIの全体的なリスクは、ベジタリアン(菜食主義者)の方が非ベジタリアンより16%低いことが判明した。また、研究対象となった3040人のベジタリアンのうちの217人がUTIを発症したのに対し、非ベジタリアン6684人のうち、UTIを発症したのは444人だった。ベジタリアン食に関連したUTIリスクの低減は、女性よりも男性の方が大きかったが、男性のUTIの全体的なリスクは、食事に関係なく女性よりも79%低かった。

 大腸菌が存在していることの多い鶏肉や豚肉を食べないことが、UTIを引き起こす可能性のある大腸菌の摂取を避ける方法になるとLinたちは考えている。また、Linたちは、多くのベジタリアンの高食物繊維食が腸内大腸菌の増殖を阻止し、腸内の酸性度を高めることによってUTIのリスクの低減を図れるという考えも示している。



参考文献:
Chen YC. et al.(2020): The risk of urinary tract infection in vegetarians and non-vegetarians: a prospective study. Scientific Reports, 10, 906.
https://doi.org/10.1038/s41598-020-58006-6

村井良太『佐藤栄作 戦後日本の政治指導者』

 中公新書の一冊として、中央公論新社から2019年12月に刊行されました。本書は、日本の首相として連続在職日数の最長記録を有する佐藤栄作(2020年8月には佐藤栄作の姪孫である安倍晋三首相がこの記録を抜くかもしれませんが)の伝記で、誕生から政治家になる前までに1章、政治家になってから首相に就任する前までに2章、首相時代に3章、首相退任後に1章が割かれています。佐藤栄作の人生のうち、政治家になる前の期間の方が長いのですが、首相時代を中心に政治家としての側面に焦点を当てた構成になっています。

 本書は佐藤栄作を、軽武装・経済中心・対米防衛依存という吉田茂路線を政権の長期化により新たな意味づけとともに固定化した政治家として位置づけています。吉田路線は敗戦後間もない時期の選択であり、日本が経済成長後も吉田路線を踏襲することは必然ではなかった、と言えるかもしれません。その意味で、長期の佐藤政権は戦後日本において重要な役割を果たした、と言えるでしょう。じっさい、戦後の政界において、自主路線と軍備の強化、それを可能とするための日本国憲法改正への動きは決して無視できるほど弱くはなかった、と思います。また第二次世界大戦後において、日本の軍備強化と軍国主義復活の可能性には世界の国々から厳しい視線が注がれており、それは日本の経済成長とともにより現実的な脅威として受け止められた、という側面もあるとは思います。

 経済大国が軍事大国化しないことはあり得るのか、という疑念は高度経済成長後の日本に対して多くの人々が抱いた疑念でしょうが、佐藤は対米防衛依存という形で軍事大国化を志向しようとはせず、日本国憲法改正に消極的で、佐藤の兄の岸信介はこうした佐藤政権の姿勢に不満だったようです。これは、安全保障・外交をアメリカ合衆国に丸投げしている、との批判になりますし、じっさい、アメリカ合衆国の動揺や政策方針の転換により、危うい立場に陥ることもあり得ます。佐藤内閣以後の政権はこの問題に苦慮し続けている、とも言えるでしょうが、戦争の惨禍を痛感していた佐藤栄作の方針は、当時の日本の状況を考慮すれば、少なくとも大間違いではなかった、と思います。

『卑弥呼』第3集発売

 待望の第3集が発売されました。第3集には、

口伝15「言伝」
https://sicambre.at.webry.info/201904/article_31.html

口伝16「情報戦」
https://sicambre.at.webry.info/201905/article_3.html

口伝17「秘儀」
https://sicambre.at.webry.info/201905/article_36.html

口伝18「舞台設定」
https://sicambre.at.webry.info/201906/article_12.html

口伝19「黄泉返り」
https://sicambre.at.webry.info/201906/article_40.html

口伝20「イサオ王」
https://sicambre.at.webry.info/201907/article_13.html

口伝21「戦闘開始」
https://sicambre.at.webry.info/201907/article_42.html

口伝22「血斗」
https://sicambre.at.webry.info/201908/article_9.html

が収録されています。連載時には「第*話」となっていましたが、単行本では「口伝*」となっています。単行本では「真説・邪馬台国伝」との副題がつけられています。それぞれの話については、上記の記事にて述べているので、ここでは繰り返しません。本作は207年(西暦は厳密な換算ではなく、1年単位での換算です)頃の九州を舞台としています。これまでに明かされている世界観から推測すると、本作の邪馬台国は宮崎県(旧国名の日向)に設定されているようです。しかし、神武東征説話も取り入れられていることから、やがては畿内というか纏向遺跡が舞台になるかもしれません。本作の神武は、天照大神から数えて6代目の日見彦という設定です。おそらくは現在の奈良県にいるだろう神武(サヌ王)の子孫とヤノハがどう関わってくるのか、ということも今後注目されます。

 現時点ではほぼ九州の諸国・人物しか登場していませんが、今後は本州・四国、さらには朝鮮半島と後漢や魏も舞台になりそうで、司馬懿など『三国志』の有名人物の登場も予想されますから、ひじょうに雄大な規模の物語になるのではないか、と期待されます。本作の人物造形はたいへん魅力的で、この点でもとくに楽しめているのですが、第3集で初登場となったトメ将軍は、とくに魅力的に描かれています。おそらくトメ将軍は、倭国から魏に派遣された大夫の難升米でしょうから、今後も活躍場面が多そうで、注目しています。本作は現時点でもたいへん楽しめていますが、今後さらに面白くなりそうな要素が多いだけに、何とか長期連載になってほしいものです。