神経発達に由来するショウジョウバエの行動の個性

 ショウジョウバエの行動の個性に関する研究(Linneweber et al., 2020)が公表されました。日本語の解説記事もあります。動物の行動の個性の起源に関する通俗的な認識の大半は、「氏」(行動を導くのは遺伝ゲノム)か「育ち」(行動を導くのは経験と環境)か、という規範的な枠組みにあります。ほぼ全ての動物において、固有の行動癖は遺伝学的に同じ個体間でも普通に見られることで、脳の解剖学的構造の自然な発達変異と同じですが、脳の発達の個体差から個体の行動が予測できるか否かは、まだ研究されていません。

 この研究は、ショウジョウバエにおける行動の個性に関する神経発達の非遺伝性起源について報告しています。自由に歩くショウジョウバエに道筋を示すと、直線的に歩く傾向のある個体もいれば、うろうろする個体もいます。この研究は、キイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)を対象に、DCN(Dorsal Cluster Neurons)と呼ばれる視覚系神経細胞の配線の仕組みの個体差が、道筋をたどるというハエの行動における個性の現れにどうつながるのか、検証しました。

 その結果、DCN発達におけるランダム変異がハエ一匹一匹の脳回路に固有の非対称性をもたらし、それがハエの行動を強く誘導している、と明らかになりました。DCN配線の非対称性が強いほど道筋に合わせることが上手く、したがって直線的に歩いた、というわけです。この研究は、ランダムな神経変異と動物の行動の個性の関係を明示しています。正常な神経発達の先天的な混乱が遺伝的に類似する個体群に行動の多様性を生み出すポイントで、同様の仕組みはヒトなどの他の種にも存在すると考えられる、というわけです。


参考文献:
Linneweber GA. et al.(2020): A neurodevelopmental origin of behavioral individuality in the Drosophila visual system. Science, 367, 6482, 1112–1119.
https://doi.org/10.1126/science.aaw7182

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