益尾知佐子『中国の行動原理 国内潮流が決める国際関係』

 中公新書の一冊として、中央公論新社から2019年11月に刊行されました。本書は、中国の対外行動(国際関係)が、国内の政治潮流、さらに根本的には中国の社会構造に規定される、と論じます。その社会構造とは外婚制共同体家族で、家父長が家族に対して強い権威を有します。息子たちは家父長に服従し、家父長の地位を継承すべく兄弟たちと激しく競争します。兄弟の関係は比較的平等ですが、激しい競合があります。また、息子たちが常に家父長に従順とは限らず、「父殺し」も起き得るため、家父長と息子たちの間には潜在的に緊張した関係が存在します。これが中国社会全体を貫いており、中国全体の「家父長」は中国共産党政治局常務委員である「党中央」、その「息子」たちは共産党の下部機関や国家機関や軍部になる、というのが本書の基本的な認識です。一方日本社会では兄弟間の格差が明確で、権限が家父長1人に集約されているのではなく分散しており、組織全体としては時期を問わず安定しているものの、責任の所在が明確ではない、と本書は指摘します。

 本書はこの認識に基づき、中国の内政と外交の行動原理を説明していきます。正直なところ、通俗的な比較文化論ではないか、多民族の中国社会を単純化しているのではないか、などといった疑問が残りますが、専門家ではない私の的外れな疑問かもしれません。家父長の権威のもと息子たちは家父長の意向を忖度して競合的に動き、息子同士の連携は弱い、という構造が中国全体にも当てはまる、と本書は指摘します。共産党の下部機関も国家機関も軍部も、中国全体の「家父長」たる「党中央」の意向を忖度し、むしろ先取りして「家父長」から高い評価を得ようとして、他の組織と連携せずに競合していく、というわけです。

 ただ、家父長の権威が強いとはいっても個人差があり、それにより中国の行動も変わってくる、と本書は指摘します。強力な最高指導者であれば、その意向に基づいて一定以上統制された行動となりますが、弱い最高指導者とみなされれば、各組織が表面上は最高指導者に敬意を払いつつも、自らの利害のために比較的自由に行動する、というわけです。そのため、外国からは中国が強硬路線と穏健路線のどちらを採用しているのか、分かりにくくなることがある、というわけです。本書は、強力な最高指導者の具体例として毛沢東元主席や習近平主席、弱い指導者の具体例として胡錦濤前主席を挙げています。中国の行動原理をすっきりと説明してくれる本書ですが、鵜呑みにするのではなく、自分でも少しずつ調べていくつもりです。

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