クラウン群鳥類の起源(追記有)

 クラウン群鳥類の起源に関する研究(Field et al., 2020)が公表されました。クラウン群鳥類の進化の最初期に関する理解は、中生代の鳥類の化石記録がきわめて少ないため、進んでいません。クラウン群鳥類の最も古い系統分岐は白亜紀に起きたと知られていますが、クラウン群鳥類の最も古く分岐したサブクレードである古顎類(ダチョウとその仲間)、キジカモ上目(キジ類およびカモ類)、新鳥上目(それ以外の全ての現生鳥類)を代表する中生代のステム系統は、化石記録の空白、とくに2億5千万~6600万年前頃となる中生代の確実な化石が1個しか見つかっていないため、明らかになっていません。そのため、祖先的なクラウン群鳥類の生態・生物地理学・分岐年代に関する重要な疑問にはまだ答えが得られていません。

 本論文は、キジカモ上目の最終共通祖先の付近に位置づけられ、クラウン群鳥類の進化史の初期において重要な系統的空白を埋める、新たな中生代化石について報告しています。ベルギーで発見されたこの化石の年代は白亜紀末のマーストリヒチアン期となる6680万~6670万年前頃で、三次元的に保存されたほぼ完全な頭蓋および付随する頭蓋後方の要素から構成され、新属新種(Asteriornis maastrichtensis)に分類されました。「Asteriornis」という名称は、ギリシャ神話に登場するウズラに姿を変えた流星の女神Asteriaに由来します。この化石は、中生代のクラウン群鳥類であるとじゅうぶんに裏づけられている数少ない一つで、優れた頭蓋化石を有する化石としては初めての中生代クラウン群鳥類です。他にこれと近い年代でよく知られているクラウン群鳥類は、南極で発見された種(Vegavis iaai)だけです。

 この推定体重400g弱の新属新種クラウン群鳥類には、キジ類様の特徴とカモ類様の特徴を併せ持つこれまで報告されたことのない特徴が見られ、以前に報告された同地域のイクチオルニス様の分類群とほぼ同時期に存在したことは、クラウン群鳥類と鳥群ステム鳥類とが共存していたことを示す直接的な証拠となります。北半球におけるその存在は、クラウン群鳥類の起源がゴンドワナ大陸にあるとする生物地理学的な仮説に疑義を唱えるもので、その比較的小さなサイズと沿岸生態環境に生息していた可能性は、クラウン群鳥類が白亜紀末の大量絶滅を生き延びるのに影響を与えたとする、生態学的フィルター説を裏づけているかもしれません。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用(引用1および引用2)です。


進化:現生鳥類が初めて出現した頃

 新たに発見された鳥の頭蓋骨化石は、これまでに報告された中で最古の「現生」鳥類の一種とされ、鳥類が多様化した時期に関する手掛かりになるという考えを示した論文が、今週、Nature に掲載される。この化石は、年代測定によって約6680~6670万年前のものとされ、現代のカモやニワトリに見られる特徴がある。今回の研究によって得られた知見は、現生鳥類が白亜紀末の大量絶滅の直前に出現したことを示している。この大量絶滅は、大型の小惑星または彗星の衝突によって引き起こされた。

 クラウン群鳥類には、全ての現生鳥類とその全ての子孫(現生種と絶滅種)の共通祖先が含まれる。その初期進化については、化石記録に空白部分があるため、あまり解明が進んでいない。特に中生代(およそ2億5000万年から6600万年前)については、十分な裏付けのある分類群がわずか1つしかなく、後はクラウン群鳥類とのつながりがあいまいな数点の化石断片だけだ。このほど、ベルギーのマーストリヒト層で発見された中生代の化石鳥が、新属新種(Asteriornis maastrichtensisと命名)とされ、化石記録の空白部分を埋める上で役立つかもしれない。

 Daniel Fieldたちの論文で、このAsteriornisの化石は、保存状態がよく、ほぼ完全な3次元の頭蓋骨が含まれていることが報告されている。この化石には、陸鳥のような特徴と水鳥のような特徴が組み合わさっており、例えば、嘴は、現代の陸鳥に類似している。Asteriornisという名称は、ギリシャ神話に登場するウズラに姿を変えた流星の女神Asteriaに由来している。この名称は、白亜紀末期の小惑星の衝突が間近に迫っていたことと家禽との類似性を反映している。Fieldたちは、Asteriornisの体重を400グラム弱と見積もった。このように比較的小型で、海洋堆積物の中から発見されたことは、Asteriornisが海岸に生息する鳥であった可能性を示しており、鳥類のクラウングループの多様性のかなりの部分の起源が海岸に生息する鳥に類似しているという仮説を裏付けている。


古生物学:ヨーロッパの後期白亜紀の新鳥亜綱の鳥類化石から明らかになったクラウン群鳥類の起源

古生物学:初期の鳥類

 新種の化石鳥類Asteriornis maastrichtensisがベルギーの白亜紀末期の地層から出土した。この化石鳥類は現生鳥類と同様の姿をしており、カモ類やニワトリを生じた系統から古くに分岐した分類群に属する。今回の発見は、現生鳥類に似た鳥類が、近縁の恐竜類が絶滅するはるか以前にすでに分岐し始めていたことを示している。他にこれと近い年代でよく知られているクラウン群鳥類は、南極で発見されたVegavis iaaiのみである。



参考文献:
Field DJ. et al.(2020): Late Cretaceous neornithine from Europe illuminates the origins of crown birds. Nature, 579, 7799, 397–401.
https://doi.org/10.1038/s41586-020-2096-0


追記(2020年3月24日)
 ナショナルジオグラフィックでも報道されました。

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