Emmanuel Todd『「ドイツ帝国」が世界を破滅させる 日本人への警告』第2刷

 エマニュエル・トッド(Emmanuel Todd)著、堀茂樹訳で、文春新書の一冊として、文藝春秋社から2015年6月に刊行されました。第1刷の刊行は2015年5月です。本書は著者への複数のインタビューで構成されており、本書自体すでに5年近く前の刊行と古いのに、インタビューは2011年11月から2014年8月までのものですから、今になってこうした時事評論的性格の強い本を読む意味があるのか、とも思ったのですが、古書店で安かったことと、著者が碩学であることは疑いないので、読む価値はじゅうぶんある、と判断しました。

 著者の基本的な主張は、家族構造が社会、さらにはその上に成立する国家の性格・行動を強く規定する、というもので、本書でもそれは簡潔に言及されていますが、本書の理解にはある程度予備知識が必要かな、とも思います。著者はたびたび、自分はドイツ嫌いではない、と強く主張していますが、正直なところ、私には著者がドイツ嫌いだと思えました。もっとも、これに関しては、私が碩学の著者の深い洞察をよく読み込めていない、という側面も多分にありますから、著者がドイツ嫌いだと強く主張するつもりはありませんが。

 著者は、ドイツがEUとユーロを利用して周辺諸国を従属させて搾取し、巨大な力を有して暴走・迷走することが、ヨーロッパ、さらには世界に大きな悪影響を及ぼす、と主張します。これは、アメリカ合衆国が相対的国力の低下によりドイツを制御できなくなったことと関連している、と著者は指摘します。このドイツの暴走・迷走により、EU、さらにはヨーロッパ世界も迷走している、と著者は指摘します。一方、ヨーロッパでは悪評の定着したプーチン政権のロシアは、周辺地域への影響力行使も含めて自国の安全保障の観点から行動しており、それはドイツに引きずられて迷走するヨーロッパとは対照的に合理的である、と著者は評価します。中国への評価の低さや日本の技術力の過大評価(と思われます)など、本書の見解を鵜呑みにすることはもちろんできませんが、イギリスのEUからの離脱など予測させた的中もあり、さすがだと思わせるところも多々あります。著者のその後の見解も、できるだけ追いかけていきたいものです。

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