降雨と火山噴火の関係

 降雨と火山噴火の関係についての研究(Farquharson, and Amelung., 2020)が公表されました。2018年5月のハワイ島キラウエア火山の亀裂貫入と噴火は、少なくともこの200年間で最も特異な噴火推移の一つですが、その引き金となった機構はまだよく分かっていません。この噴火では、2018年5月から8月にかけて火山の周囲に地割れができ、山頂では爆発的噴火が複数回発生し、カルデラが崩壊しました。降雨は、地震事象を誘発し、火山活動を変化させると知られていますが、そうした降雨の影響が観測されたのは火山の地下の浅い部分に限られており、降雨により深部マグマの動きが活発化するのかどうか、明らかになっていません。そのため、噴火前の数ヶ月間は異常に降水量が多かった2018年5月のキラウエア火山についても、降雨が浅部の火山活動を変化させる可能性は指摘されてきましたが、マグマ輸送に関連する深部で影響を及ぼし得るのか、まだ分かっていません。

 この研究は、噴火の直前と噴火の最中に、降雨がキラウエア火山の地下に浸透したことで、深さ1~3 kmの空隙圧が0.1~1 kPa増大し、約50年間で最大の圧力に達したことを示します。この研究は、地溝帯内部の空隙圧の変化により火山体の弱化と力学的な破壊が生じ、これに乗じて岩脈の貫入が起こり、最終的に噴火が促進された、との見解を提示しています。降雨により誘発される噴火の引き金は、山頂部の前兆的膨張が見られなかったことと矛盾せず、この貫入が他の事例とは異なり、地溝帯への新たなマグマの強力な貫入を原因とはしない、と示しています。

 さらに、歴史的な噴火事象の統計解析により、キラウエア火山の噴火と貫入の時期と頻度に降雨パターンが大きく寄与している、と示唆されました。乾季よりも短い雨季に、1790年以降の火山噴火の約60%が起こっていました。したがって、火山活動は火山体の岩石破壊の引き金になる極端な降雨によって変化し得るため、火山災害の評価のさいにはそうした要因も考慮すべきである、と本論文は提言しています。とくに、現在進行している人為起源の気候変動に関連してますます極端になる気候パターンは、降雨が引き金になる火山現象の可能性を世界中で増大させるかもしれません。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用(引用1および引用2)です。


地球科学:キラウエア火山の噴火の引き金となったのは雨だった

 2018年に起きたキラウエア火山(米国ハワイ州)の噴火は、極端な降雨によって引き起こされたという考えを示した論文が、Nature に掲載される。この新知見は、火山のハザード評価を行う際に降雨を考慮に入れるべきことを示している。

 降雨は、地震事象を誘発し、火山活動を変化させることが知られている。しかし、そのような降雨の影響が観測されたのは、火山の地下の浅い部分に限られており、降雨によって、深部マグマの動きが活発化するのかどうかは、明らかになっていない。キラウエア火山の噴火は、複雑な多段階的過程だったが、何が引き金となったのかという点は解明されていない。この2018年の噴火では、同年5月から8月にかけて火山の周囲に地割れができ、山頂では爆発的噴火が複数回発生し、カルデラが崩壊した。

 今回のJamie FarquharsonとFalk Amelungの研究では、2018年の噴火に対する降雨の影響を調べた。ハワイでは、この噴火の前に数か月間にわたって降水量が異常に多い状態があった。今回の研究では、雨水が火山の地下に浸透し、噴火直前と噴火時の間隙圧がそれまでの約50年間の最高レベルに上昇したことが判明し、そのために火山の構造が弱体化して、マグマが侵入して噴火したという考えが提示されている。また、FarquharsonとAmelungは、過去のキラウエア火山の噴火の統計解析を行い、乾季よりも短い雨季に1790年以降の火山噴火の約60%が起こっていたことを明らかにした。このことは、過去のキラウエア火山の噴火と降雨との相関関係を示唆している。

 FarquharsonとAmelungは、降雨と火山噴火の関係の解明が進めば、将来的に、降雨が誘発する火山活動の予測に役立つ可能性があるという考えを示している。


火山学:極端な降雨が引き金となった2018年のキラウエア火山の亀裂噴火

Cover Story:噴火と雨:2018年のキラウエア火山の噴火を極端な降雨が誘発した可能性

 表紙は、米国ハワイ島のキラウエア火山の2018年の亀裂噴火時の溶岩流である。今回J FarquharsonとF Amelungは、極端な降雨によって大量の溶岩の流出が生じた可能性を示す、モデル化による証拠を提示している。降雨によって浅部の火山活動が変わり得ることは知られているが、降雨がマグマの移動に関連するより深部にまで影響を及ぼし得るかどうかはよく分かっていなかった。著者たちは、2018年の噴火前の数か月間に降った記録的な大雨がキラウエア火山の地下に浸透し、地下水の圧力をこの50年で最も高い値まで増大させたと提唱している。これによって、岩盤が弱くなり、割れ目ができてマグマが新たな場所へ上昇できるようになり、最終的に噴火が生じたと思われる。著者たちは、1790年以降のキラウエア火山の噴火史を改めて調べ、噴火の約60%が、1年の最も湿潤な時期に起こっていることを見いだした。彼らは、降雨と火山活動のつながりをより深く理解すれば、火山活動の予測を改善できる可能性があると示唆している。



参考文献:
Farquharson JI, and Amelung F.(2020): Extreme rainfall triggered the 2018 rift eruption at Kīlauea Volcano. Nature, 580, 7804, 491–495.
https://doi.org/10.1038/s41586-020-2172-5

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