土器破片の食物残渣からの年代測定

 土器破片の食物残渣からの年代測定に関する研究(Casanova et al., 2020)が報道されました。土器は遺跡から最も一般的に出土する人工物の一つです。そうした土器の型式学に基づく相対年代の決定は1世紀以上にわたってきましたが、放射性炭素年代測定法を用いる土器の正確な年代測定は、有機物の混和材の残存に限界があり、目に見える残渣に関する信頼性が低いため、きわめて困難と分かっています。本論文は、分取ガスクロマトグラフィーで精製した2種類の脂肪酸であるパルミチン酸とステアリン酸を用いた、土器に吸収されていた食物残渣中の炭素14の加速器質量分析に基づく考古学的土器の直接的な年代測定法について報告しています。

 本論文は、土器から抽出された脂質の正確な化合物特異的放射性炭素年代測定の結果を示しています。得られた年代は、年輪年代学的な年代、ならびにこれまでに放射性炭素年代が決定されている他の物質を含有する遺跡の包含物や地域的編年との比較により、厳密に評価されました。注目されるのは、土器に含まれるパルミチン酸およびステアリン酸それぞれから得られた化合物特異的な年代は、結果の内部精度管理として機能し、年代が測定されている他の一般的な物質の年代と完全に適合していたことです。

 土器の正確な放射性炭素年代測定からは、(1)土器の使用年代、(2)特定の食品が利用されていた時期など、有機物残渣の古さ、(3)従来の手法で年代測定可能な物質の存在しない遺跡の編年、(4)土器の型式編年の直接検証が得られます。本論文は、この方法による、イギリス・アナトリア半島・ヨーロッパ中部および西部・アフリカのサハラ地域で出土した新石器時代の土器に残る、乳製品および肉製品の利用年代を明らかにしました。たとえば、ロンドンの新石器時代の遺跡では、微量の乳脂肪が新たな手法で年代測定され、5600年前頃と明らかになっています。これは、イギリスに農耕が到来した6000年前頃からわずか400年後のことで、最初にイギリスに農耕・牧畜をもたらした集団との関係が想定されます。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用です。


考古学:考古学的土器の正確な化合物特異的14C年代測定

考古学:洗っていない土器は歴史に残る

 考古学者なら誰でも、割れた土器の破片が古代史を再構築するための重要な情報資源であることを知っている。問題は、その年代をどうやって正確に測定するかだ。R Evershedたちは今回、土器の破片に安定的に吸収された食物残渣の脂質から正確な放射性炭素年代を得る方法を提示している。彼らは、他の方法で年代がよく知られているさまざまな遺跡にこの方法を適用するとともに、得られた年代を用いて英国のロンドンからアフリカのサハラ砂漠まで、実に多様な地域から出土している土器の年代を明らかにしている。



参考文献:
Casanova E. et al.(2020): Accurate compound-specific 14C dating of archaeological pottery vessels. Nature, 580, 7804, 506–510.
https://doi.org/10.1038/s41586-020-2178-z

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