中村計『佐賀北の夏 甲子園史上最大の逆転劇』

 新潮文庫の一冊として、新潮社から2011年8月に刊行されました。本書の親本は、同じ題名でヴィレッジブックス社から2008年7月に刊行されました。先月(2020年5月3日)、NHKのBS1で2007年に開催された第89回全国高校野球選手権大会決勝戦(佐賀北対広陵)が再放送されたので、以前古書店で購入したままになっていた本書を思い出し、読みました。本書からは全体的に緻密な取材が窺え、その人物・心理描写はたいへんに読みごたえがありました。スポーツノンフィクションとして、ひじょうに優れていると思います。

 本書は、佐賀北の百崎監督を中心に、吉富部長や各選手の人物像と、ある場面でどのような思考・心理状態だったのか、読みやすい文章で描写していきます。また、百崎監督の関係者や対戦相手への取材成果も取り入れられており、これも本書の客観的な描写につながっています。当時、佐賀北の試合は録画も含めてそれなりに視聴したと記憶していますが、印象に残っている場面で佐賀北の監督や部長や選手、さらには対戦相手の監督や選手がどのような思考・心理状態だったのか、描かれており、テレビで見ていただけの私にとって、たいへん新鮮で興味深い内容でした。

 著者の力量もあるのでしょうが、本書に登場する人物は個性的で魅力的です。もちろん、本書は登場人物を単に称賛するだけではなく、その欠点と言えるところも描写しており、そこがスポーツノンフィクションとしての本書の優れた点とも言えるでしょう。個性的な高校生たちをまとめていく監督や部長の苦労が窺えるとともに、高校生の視点に立つと、思春期らしい苦悩が見えてきて、この点でも興味深い内容になっています。本書は教育の点でも示唆に富むところが多く、野球部指導者のみならず、教師にとっても有益な一冊となるでしょう。もちろん、さらに普遍的な読み方もでき、人生の目標や人間関係の構築といった点でも、教えられるところが少なくありません。

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