多層的メカニズムによる短い染色体の減数分裂期組換え

 多層的メカニズムによる短い染色体の減数分裂期組換えに関する研究(Murakami et al., 2020)が公表されました。ほとんどの生物種における減数分裂のさいには、正確に染色体を分離するため、少なくとも1ヶ所のDNA交叉(乗り換え)により相同染色体間の組換えが必要とされます。組換えがランダムな位置で起こると、短い染色体での不分離が多くなる恐れがあるので、組換えの開始反応であるDNA二本鎖切断(DSB)の起こる位置はランダムではない、と考えられています。現在までに、DSBのタイミング・局在場所・数を調節するいくつかの経路が知られていますが、DSBのノンランダムな分布がどのように制御されているのかは分かっていません。減数分裂期のDSBは、ほぼ全ての真核生物に見られるSpo11と、Rec114やMer2などの補助的DSBタンパク質が染色体上で会合することにより生じます。

 この研究は、出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)を用いて、時間的に異なる複数の経路が統合的に働き、染色体上のRec114とMer2の結合を調節することにより、DSB形成を可能とする期間を制御している、と明らかにしています。減数第一分裂前期の終盤で相同染色体が互いに密着するさいに、Rec114とMer2が解離されます。一方、減数第一分裂前期の序盤では、複製のタイミングとセントロメアまたはテロメアからの距離が、Rec114とMer2の結合に影響します。さらに序盤に働くもう1つの機構により、Rec114とMer2の最も短い染色体への特異的結合が促進されます。この機構は選択圧の影響下にあり、高頻度で組換えを起こしやすいという、これら短い染色体に備わった特性が維持されます。このように、ある生物の核型と、これに付随する減数分裂時の染色体不分離のリスクが、その組換えの全体像の形態と進化に影響を及ぼします。これらの結果から、DSBを全ての相同染色体対へと確実に分配する多面的で進化の制約下にあるシステムについて、まとまった知見が得られました。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用です。


遺伝学:多層的メカニズムが短い染色体の減数分裂期組換えを保証する

遺伝学:短いものへの配慮

 減数分裂の際には、各染色体が複製される。各染色体が確実に1コピーずつ娘細胞に分配されるように、各染色体対は少なくとも1か所のDNA交叉(乗り換え)によって連結されている。この交叉はDNAの二本鎖切断(DSB)によって始まるが、切断はランダムに起こるので、最小の染色体では切断が1つも起こらない可能性がある。今回S Keeneyたちは、出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)で、最も短い染色体であっても少なくとも1か所は確実にDSBが起こるようにする仕組みを明らかにしている。このような染色体へのDSB導入を強化する仕組みは複数あり、そのうちの1つは、最も短い染色体に特異的に働くらしい。



参考文献:
Murakami H. et al.(2020): Multilayered mechanisms ensure that short chromosomes recombine in meiosis. Nature, 582, 7810, 124–128.
https://doi.org/10.1038/s41586-020-2248-2

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