ムカシトカゲのゲノム

 ムカシトカゲのゲノムに関する研究(Gemmell et al., 2020)が公表されました。ムカシトカゲ(Sphenodon punctatus)は、かつてゴンドワナ大陸全域に広く存在したムカシトカゲ目爬虫類に属する唯一の現生種で、ニュージーランドに固有の象徴的な種です。絶滅したステム群爬虫類からは恐竜類・現生爬虫類・鳥類・哺乳類が進化しましたが、このステム群爬虫類との重要な接点であるムカシトカゲは、祖先的な羊膜類に関して重要な手掛かりをもたらします。

 この研究は、ムカシトカゲのゲノムを解析しました。ムカシトカゲのゲノムは約5 0億塩基対で、これまでに解読・構築された脊椎動物ゲノムの中で最大級となります。このゲノム解析と、他の脊椎動物ゲノムとの比較からは、ムカシトカゲの特異性を強める結果が得られました。系統発生学的解析からは、ムカシトカゲの系統が約2億5000万年前にヘビ類およびトカゲ類の系統から分岐した、と示されました。また、ムカシトカゲ系統の分子進化速度は速くはなく、断続的な進化が起きていたことも明らかになりました。

 このゲノム塩基配列解析からは、タンパク質・ノンコーディングRNAファミリー・反復エレメントの拡大が明らかになり、反復エレメントについては爬虫類の特徴と哺乳類の特徴との混合が示されました。これにより、ムカシトカゲの極めて低い活動時の体温・きわめて長い寿命・感染症に対する抵抗性を説明する、候補遺伝子群が明らかになりました。ムカシトカゲゲノムの塩基配列解読結果は、ムカシトカゲの生物学的研究や保全のみならず、四肢類の詳細な比較解析を行なうための価値ある情報資源となります。この研究はまた、ゲノム塩基配列解読に関連する技術的課題と文化的責務の両方に関する重要な洞察を提示しています。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用です。


ゲノミクス:ムカシトカゲのゲノムから明らかになった羊膜類進化の古い特徴

ゲノミクス:象徴的な爬虫類のゲノムアセンブリ

 ムカシトカゲ(Sphenodon punctatus)は、他の全ての爬虫類との共通祖先を約2億5000万年前に有する爬虫類系統の最後の生き残りである。今回N Gemmellたちは、ムカシトカゲ1個体のゲノムを解読・構築することで、約5 Gbpというゲノムサイズを示し、注釈付けによって遺伝子1万7448個を明らかにするとともに、ゲノム全体に多くの反復配列が見られることを報告している。また、その進化速度はかなり遅いこと、さらには、ムカシトカゲの極めて低い活動時の体温、極めて長い寿命、感染症に対する抵抗性を説明する候補遺伝子群が明らかになった。



参考文献:
Gemmell NJ. et al.(2020): The tuatara genome reveals ancient features of amniote evolution. Nature, 584, 7821, 403–409.
https://doi.org/10.1038/s41586-020-2561-9