『卑弥呼』第47話「凶手」

 『ビッグコミックオリジナル』2020年10月5日号掲載分の感想です。前回は、クラトが穂波(ホミ)の重臣であるトモに、恋仲のミマアキの殺害を依頼したところで終了しました。今回は、伊都(イト)に講和の使者として赴いていたミマアキが、山社(ヤマト)に帰還する場面から始まります。伊都のイトデ王から山社へは王冠も含めて豪華な献上品が送られ、イクメもヌカデも目を見張ります。ヌカデが見たことのない石だと思ったのは、瑠璃(今回はガラスを指します)でした。ミマアキは、瑠璃が漢からもたらされた工芸品で、熱を用いて作られ、天竺(インド)より西方で生まれたものだ、と説明します。ミマアキとイクメとヌカデの報告から、山社と伊都・那(ナ)・末盧(マツロ)との同盟が確定したことを把握したヤノハは、3人に休みを与えます。姉のイクメから、穂波(ホミ)に派遣されたクラトの帰還にはもう数日かかるだろう、と聞かされたミマアキは嘆息します。

 夜、楼観で休んでいるヤノハはアカメから報告を受けます。ヤノハの予想通りだった、とアカメは報告し、ヤノハは顔をしかめます。これが何を指すのか、今回は明かされませんでしたが、クラトが裏切り者であることをヤノハは疑っているのでしょうか。ヤノハはアカメとともに楼観から降り、警備兵の注意をそらし、ナツハがいる(軟禁されている、と言うべきでしょうか)小屋を訪ねます。ヤノハは、ナツハがミマアキの報告通り喋れないと判断します。ナツハの顔を初めて間近で見たヤノハは、何か気づいたようですが、それを追求しようとはしません。ナツハが弟のチカラオかもしれない、とヤノハは気づいたのでしょう。ナツハが心から自分の配下になったのか、まだ鞠智彦(ククチヒコ)の僕なのか分からないが、一つ頼みを聞いてほしい、とヤノハは言い、ナツハに回収していた狼や犬を自在に操る土笛を渡します。

 穂波では、ヲカ王がクラトに、山社に献上する特産の米や器類を託していました。これら献上品を運ぶ奴婢の1人が腰を痛め(おそらく穂波の重臣であるトモの指示なのでしょう)、トモ自分の奴婢に代わりを命じます。その奴婢はアチという名の巨漢でした。穂波から山社への帰還の道中、夜になり休憩しているところで、クラトはアチに、どの武器を使うのか、尋ねます。アチが使うのは、紐の先に金属製の鏃のようなものを装着した縄鏢(ジョウヒョウ)という武器でした。アチは一撃で鹿を倒し、縄鏢の威力をクラトに見せつけます。アチに昼の王となるべき人物の殺害の具体的な計画を問われたクラトは、聖地の山社には特別な許可がなければ、参拝目的以外で余所者は立ち入れないので、帰るふりをして一刻ほど森で待機し、穂波の特別な土産を渡し、内々の話があるといって、自分が昼の王となるべき友人を砦の外に呼び出す、と答えます。親友を殺すとはさぞ気が重いだろう、とアチに言われたクラトは沈んだ表情を浮かべます。アチに昼の王となるべき友人の名を問われたクラトが、葛藤しているような表情を浮かべつつ、ミマアキと答えるところで今回は終了です。


 今回注目されるのは、まずクラトによるミマアキ暗殺計画です。これはおそらく失敗するのでしょうが、ヤノハがアカメに調べさせていたこととの関連が気になります。ヤノハはミマアキとクラトが恋仲であることをヌカデに聞かされるまで知りませんでしたから、そこでクラトに何らかの疑念を抱き、アカメに調べさせていた、ということでしょうか。あるいは、クラトとは無関係のことをアカメに調べさせていたのかもしれませんが、ヤノハがナツハに狼や犬を自在に操る土笛を返却したことから考えて、クラトのミマアキ暗殺計画を阻止するよう依頼した可能性が高いように思います。クラトとミマアキの運命が気になります。おそらく、ミマアキはこの危機を切り抜けるでしょうから、クラトが死に追いやられるか亡命することになりそうです。ただ、ヤノハは大胆ですから、クラトを改心させて今後も使い続け、クラトが通じているトモとも接触し、日下(ヒノモト)にいるとされるサヌ王(記紀の神武天皇と思われます)の末裔の動向を探るのかもしれません。また、ナツハの顔を初めて間近で見たヤノハの心境も注目されます。おそらくヤノハは、ナツハが弟のチカラオだと気づいたのでしょうが、それを追求せず、重要な依頼をするところは、これまでに描かれてきた冷徹な判断ができる人物像と合致します。ヤノハとナツハの今後の関係も、本作の見どころの一つとなりそうで楽しみです。

チンパンジーの行動多様性と環境

 チンパンジーの行動多様性と環境に関する研究(Kalan et al., 2020)が公表されました。生物種や生物個体群において発達する行動特性と文化特性は、その生物種や生物個体群が生息する環境によって形成される場合もあります。たとえば、行動の種類が多ければ、長期間にわたって環境の変動性に対処する上で役立つ可能性があります。この研究は、個体群レベルでの31のチンパンジーの行動(洞穴の使用や水浴びから、採餌戦略、道具の使用まで)に関するデータベースを用いて、この関係を検証しました。この研究は、144のチンパンジーの群れによる特定の行動の使用が、いろいろな時間スケールで、(1)降水量の変動性、(2)サバンナ生息地と森林生息地の使用状況、(3)氷河期の避難地であった森林からの距離という3つの環境変動性の尺度に関連しているのか、分析しました。

 その結果、250万~1万年前となる更新世の氷河期に避難地であった森林から遠く離れた場所で生活していたチンパンジー個体群の方が、行動レパートリーの多様性が高い、と明らかになりました。この研究は、長い期間をかけて避難地の森林から離れていった個体群の方が、森林の近くから動かなかった個体群よりも新しいタイプの文化的行動を採用する可能性が高かった、と推測しています。また、チンパンジーの行動多様性は、サバンナで生活したチンパンジー個体群の方が森林生息地で生活した個体群よりも高く、大きな降雨の季節性を経験した個体群においても高い、と明らかになりました。これは、行動多様性が現在の環境変動性によっても形成されることを示唆しています。環境の変動性が、大型類人猿の行動と文化の多様化を促進する要因だったことを示唆する結果で、チンパンジーに限らずゴリラや人類の進化史においても注目される観点です。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用です。


動物学:変動性の高い環境で生活するチンパンジーの群れの方が行動の多様性が高い

 過去と現在に変動性の高い環境で生活したチンパンジーの群れの方が、より安定した環境で生活したチンパンジーの群れよりも行動のレパートリーの多様性が高いことを明らかにした論文が、今週、Nature Communications に掲載される。144の野生のチンパンジー群集のデータを使った今回の研究から、環境の変動性が、大型類人猿の行動と文化の多様化を促進する要因であったことが示唆された。

 生物種や生物個体群において発達する行動特性と文化特性は、その生物種や生物個体群が生息する環境によって形作られることがある。例えば、行動の種類が多ければ、長期間にわたって環境の変動性に対処する上で役立つ可能性がある。今回、Ammie Kalanたちの研究チームは、個体群レベルでの31のチンパンジーの行動(洞穴の使用や水浴びから、採餌戦略、道具の使用まで)に関するデータベースを用いて、この関係を検証した。Kalanたちは、144のチンパンジーの群れによる特定の行動の使用が、いろいろな時間スケールで、(1)降水量の変動性、(2)サバンナ生息地と森林生息地の使用状況、(3)氷河期の避難地であった森林からの距離という3つの環境変動性の尺度に関連しているかを分析した。

 この分析結果によれば、更新世(約250万~1万年前)の氷河期に避難地であった森林から遠く離れた場所で生活していたチンパンジー個体群の方が、行動レパートリーの多様性が高かった。Kalanたちは、長い期間をかけて避難地の森林から離れていった個体群の方が、森林の近くから動かなかった個体群よりも新しいタイプの文化的行動を採用する可能性が高かったと考えている。また、チンパンジーの行動多様性は、サバンナで生活したチンパンジー個体群の方が森林生息地で生活した個体群よりも高く、大きな降雨の季節性を経験した個体群においても高かった。このことは、行動の多様性が、現在の環境変動性によっても形作られることを示唆している。



参考文献:
Kalan AK.. et al.(2020): Environmental variability supports chimpanzee behavioural diversity. Nature Communications, 11, 4451.
https://doi.org/10.1038/s41467-020-18176-3

大河ドラマ『麒麟がくる』第24回「将軍の器」

 1565年(以下、西暦は厳密な換算ではなく、1年単位での換算です)、将軍の足利義輝は松永久秀の息子である久通を含む三好勢に襲撃されて殺害されます(永禄の変)。次の将軍の有力候補と目される、義輝の弟の覚慶(足利義昭)は興福寺一条院に幽閉されます。義輝を殺すつもりがなかった久秀は覚慶を訪ね、覚悟を問い質します。久秀の意を受けた細川藤孝は、覚慶を甲賀へ脱出させます。永禄の変を知った明智光秀(十兵衛)は、久秀を訪ねて義輝殺害について問い質し、見通しが甘かった、と久秀は答えます。久秀は激昂する光秀に銃を渡して自分を撃てと言いますが、光秀は何とか思いとどまります。久秀は、幕府を擁護すべきなのか、迷っていました。朝倉義景は光秀に覚慶が将軍の器なのか確かめさせようとしており、久秀からそれを聞かされた光秀は甲賀の覚慶を訪ねます。率直に死にたくないと打ち明ける覚慶が将軍の器に相応しいのか、光秀は不安に思いますが、それを知りつつ、三淵藤英と細川藤孝は覚慶を擁立しようとします。光秀は朝倉義景に問われて、覚慶は将軍の器ではない、と答えます。この間に朝廷では、足利義栄が将軍に推挙されました。

 今回は、義輝の殺害とその後の将軍位をめぐる政争が描かれました。光秀が義昭の擁立により出世していったことを考えると、光秀が覚慶の将軍としての器量に疑問を抱き、擁立に消極的である、という話になったことは意外でした。もっとも、後に光秀は将軍に就任した義昭を見限っているわけで、今回の光秀と覚慶の出会いは、その伏線なのかもしれません。これまでの義輝との関係や実直な人物像からは、光秀が覚慶の将軍としての器量に不安を抱くことは、自然なように思います。今後、光秀がどのような心境の変化で覚慶を擁立していこうとするのか、注目されます。