高齢の野生チンパンジーの社会行動

 高齢の野生チンパンジーの社会行動に関する研究(Rosati et al., 2020)が公表されました。日本語の解説記事もあります。社会情動的選択性理論(SST)は、年を取るにつれて人は老い先短いという感覚ゆえに確立されたポジティブな関係を優先させるようになり、新しい友達を作るより最も親密で最も古くからの最も大切な友達と過ごす方を選ぶ、という理論です。こうした傾向は、未来について独自の複雑な論理的思考を行なうと考えられているヒト全体に広く見られますが、この行動が自分の未来の時間に関する明確な感覚により引き起こされているのかどうか、判断は容易ではありません。一部の最近の証拠では、加齢に伴う社会情動的目標の変化は、未来時間展望とは無関係という可能性も示されています。

 この研究は、ヒトとヒト以外の社会性動物の比較研究により、ヒトの社会的行動とその起源が分かるという方法を利用して、ヒトの社会的高齢化の主要要素が野生チンパンジーと共通するのかどうか、調査しました。この研究は、ウガンダのキバレ国立公園で20年間にわたって実施した調査を用いて、15~58歳の野生の雄チンパンジー21頭の社会的交流について報告しました。その結果、若いチンパンジー同士の関係は一方的で敵対しており、高齢のオスのチンパンジーの交友関係は若いチンパンジーのそれより相互的でポジティブだ、と明らかになりました。また、高齢のチンパンジーは単独になりがちではあるものの、大切な社会的パートナーとの交流も多めと明らかになりました。この結果は、社会的選択性の強化は未来時間展望が充分ではない状態で起こり得ることを示しています。このような行動様式は、ヒトという種を超えて一般的だと考えられ、よく発達した時間概念や寿命についての自覚には依存しない可能性がある、というわけです。


参考文献:
Rosati A. et al.(2020): Social selectivity in aging wild chimpanzees. Science, 370, 6515, 473–476.
https://doi.org/10.1126/science.aaz9129

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