イスラエルのティンシェメット洞窟遺跡

 イスラエルのティンシェメット洞窟(Tinshemet Cave)で発掘調査が進められており、公式サイトが公開されています。ティンシェメット洞窟では中部旧石器時代の石器や人類遺骸が発見されているそうです。この時期に、ヨーロッパ起源のネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)とアフリカ起源の現生人類(Homo sapiens)がレヴァントで遭遇したと考えられており、ティンシェメット洞窟では人類遺骸と石器が発見されていることから、注目すべき遺跡と言えるでしょう。

 少なくとも5個体分となる人類遺骸は、2017~2019年の発掘で発見され、その中には部分的に関節がつながっている子供の骨格や、遊離した歯のある2個の頭蓋もあり、まだ発掘中の人類遺骸もあるそうです。これらの人類遺骸の分類はまだ同定されておらず、現生人類、ネアンデルタール人、他の中期更新世後期~後期更新世前期の人類の可能性がある、と指摘されています。詳細な年代は公表されていないませんが、熱ルミネッセンスや光刺激ルミネッセンスやウラン系列法などで年代測定が進められているそうです。

 石器は、ムステリアン(Mousterian)と関連する多くの剥片が発見されています。ティンシェメット洞窟遺跡石器群の特徴は、剥片の製作にルヴァロワ(Levallois)技法が用いられていることです。大量の石屑があることから、ティンシェメット洞窟で石器が製作されていた、と示唆されます。石材はおもに地元の燧石(フリント)でした。また、遠方からオーカーや特別な意思が持ち込まれており、当時のティンシェメット洞窟の中部旧石器時代の住人における、複雑な象徴的および社会的行動が示唆されます。

 ティンシェメット洞窟では、さまざまな非ヒト動物遺骸も発見されています。発見された動物遺骸は地元の種で、ティンシェメット洞窟の中部旧石器時代の住民がより大型の獲物に重点を置いていた、と示されます。具体的には、オーロックス(Bos primigenius)やイランダマシカ(Dama mesopotamica)やマウンテンガゼル(Gazella gazella)やウマ類です。これらの非ヒト動物遺骸の堆積の主因はヒトだった、と推測されています。

 異常が現時点で公開されている主な情報ですが、ヒト遺骸も非ヒト動物遺骸も多くの石器も発見されており、人類進化史において重要な中部旧石器時代のレヴァントに関する多くの情報が得られるのではないか、と大いに期待されるので、今後の研究の進展がひじょうに楽しみです。人類遺骸がどの種に分類されるのかも気になりますが、同じくイスラエルのセフニム洞窟(Sefunim Cave)で中部旧石器時代層の堆積物から非ヒト動物のミトコンドリアDNA(mtDNA)断片が回収されているそうなので(関連記事)、ティンシェメット洞窟でも堆積物からのDNA解析が期待されます。もちろん、遺骸から直接DNAが解析できればもっとよいわけですが、まだイスラエルと同程度以下の緯度の地域で発見された、中部旧石器時代以前の遺骸からのDNA解析には成功していないでしょうから、貴重な人類遺骸をごく一部とはいえ破壊してDNA抽出を試みることは、さすがに当分はなさそうです。

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