翼竜類の飛行効率

 翼竜類の飛行効率に関する研究(Venditti et al., 2020)が公表されました。生物多様性の長期的な蓄積の過程では、生物による新たな生態学的機会の利用を可能とする、大規模な進化的移行が繰り返し起きてきました。1億5000万年以上にわたって空を支配し、白亜紀の終わり(約6500万年前)に非鳥類型恐竜と共に絶滅した中生代の飛行性爬虫類(翼竜類)は、そうした移行の産物でした。翼竜類の祖先は、小型でおそらく二足歩行の初期の主竜類で、間違いなく陸上でのロコモーションによく適応していました。翼竜類は前期三畳紀(約2億4500万年前)に恐竜類の祖先から分岐しましたが、最古の翼竜類化石の年代はその2500万年後の後期三畳紀とされています。したがって、原始的な翼竜類の化石が存在しないことから、この動物群で飛行が最初にどう進化したのか、研究することは困難です。

 本論文は、翼竜類の新たなロコモーションへの適応の進化的動態について報告します。既知で最古の翼竜類は飛行が可能で、その後、有能で効率の良い飛行動物になった、と推測されています。しかし、陸上から空中へのロコモーション様式の移行が、初期の翼竜類に対して高いエネルギー負荷を課すことで問題を突きつけ、その飛行にそうした負荷を相殺できるような何らかの適応度利益の提供を要求したことは明らかと考えられます。本論文は、系統発生学的な統計学的方法および生物物理学的モデルを化石記録から得られた情報と組み合わせて用いることで、数百万年にわたって飛行効率を向上させるように働いた自然選択の進化的シグナルを発見しました。

 これらの結果は、飛行の出現後に効率の面でまだ大きな改善の余地があったことを示しています。ただし、巨大化が認められるクレード(単系統群)であるアズダルコ類(Azhdarchoidea)において、飛行への依存度が低下していたという仮説を検証したところ、このクレードでは飛行効率に対する選択が弱かった、と示す証拠が見つかりました。この研究の手法は、地質年代を通した機能的およびエネルギー的な変化を、これまでは不可能だったより繊細なレベルで客観的に研究するための青写真を提供します。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用です。


古生物学:翼竜類の飛行

 空飛ぶ爬虫類である翼竜類は、1億5000万年にわたる進化の過程で、より効率よく飛行できるようになったことを明らかにした論文が、Nature に掲載される。今回の研究は、陸上に生息していた翼竜類の祖先がどのようにして空を飛ぶようになり、さらに進化したのかを解明する上で役立ち、今回用いられた研究方法は、機能性とエネルギーの微妙な変化を地質時代を通して調べるための青写真になると考えられる。

 翼竜類は恐竜に近い近縁種で、三畳紀(約2億4500万年前)に出現し、白亜紀の終わり(約6500万年前)に非鳥類型恐竜と共に絶滅したが、最古の翼竜類の化石についての研究は進んでいない。そのため、翼竜類がどのようにして飛行するようになったのかを調べることが難しくなっている。今回、Chris Vendittiたちの研究チームは、新しい統計的手法、生物物理学的モデル、化石記録から得られた知見を用いて、翼竜類の出現から絶滅までの間、その飛行効率は、自然選択の作用によって一貫して向上していたことを明らかにした。翼竜類は、当初は短距離しか飛べない非効率的な飛行をしていたが、その後、長時間にわたって長距離を飛ぶことができる能力を身につけた。

 しかし、この進化パターンには例外がある。白亜紀に生息していたアズダルコ科の巨大な翼竜(QuetzlcoatlusとTapejaraを含む)については、陸生動物の生活様式に近かったことを示唆するさまざまな適応が見られるため、その飛行能力は、論争の的になることが多い。今回の研究でVendittiたちは、アズダルコ科の翼竜は飛行できたが、その飛行能力は時間がたっても向上しなかったことを明らかにした。このことは、アズダルコ科の翼竜にとって飛行効率が他の翼竜類ほど重要ではなかったことを示唆している。



参考文献:
Venditti C. et al.(2020): 150 million years of sustained increase in pterosaur flight efficiency. Nature, 587, 7832, 83–86.
https://doi.org/10.1038/s41586-020-2858-8