アメリカ合衆国大統領選挙結果

 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)による新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響を大きく受けている中で、世界的に注目されたアメリカ合衆国大統領選挙が今月(2020年11月)3日に行なわれました。嫌われ者で現職の共和党のトランプ大統領と、魅力に欠ける民主党のバイデン前副大統領との対決となり、第1回討論会が酷評されるなど、お世辞にも内容が高く評価される大統領選挙ではありませんでしたが(そもそも、過去にどれだけ立派な大統領選挙があったのか、という問題もありますが)、一応は現時点で世界最強と言える国の大統領選挙だけに、世界中で大きな注目を集めたように思います。

 世論調査ではバイデン前副大統領の優勢が伝えられていましたが、基本的には州ごとの勝者総取りという特異な選挙制度もあり、前回は優勢を報道されていたクリントン候補が負けたので、今回は勝敗の判断に慎重な記者・評論家が多かったように思います。また、終盤になってのトランプ大統領の追い上げも一部で報道されていました。私も、前回の大統領選挙の記事ではクリントン候補の勝利を想定した予定稿を準備しており、ほとんど使い物にならなくなったので、今回はどちらかの候補の勝利を前提とした予定稿を用意しませんでした。

 結果は、新型コロナウイルス感染症の流行もあって郵便投票が激増したこともあり、まだ確定していませんが、現時点での開票が認められれば、バイデン前副大統領の勝利は確実なようです。また、得票率でもバイデン前副大統領が3%ほどの差をつけそうです。しかし、多くの人が予想した通り、トランプ大統領は敗北を認めないようで、これから訴訟で揉めそうです。2000年の大統領選挙も確定に時間がかかりましたが、今回はそれ以上となりそうです。

 結局、トランプ大統領が11月3日消印までの郵便投票込みでも選挙人数と総得票数で上回るか、バイデン前副大統領が郵便投票抜きでも選挙人数と総得票数で上回るしか、早期の決着はあり得なかったのかもしれません。前回の大統領選挙の記事でも、アメリカ合衆国社会の亀裂が深まりそうだ、と述べましたが、今回の大統領選挙の結果さらに深まりそうで、これはトランプ大統領とバイデン前副大統領のどちらが勝っても変わらなかったでしょう。世界最強の国であるアメリカ合衆国の政治・社会的混迷は世界に悪好影響を与えるでしょうから、今後の情勢が懸念されます。新型コロナウイルス感染症の流行もあって、アメリカ合衆国も含めて世界的な混乱が続くなか、アメリカ合衆国の政治的混乱が長引くのは、何とも困ったものです。

 バイデン前副大統領に魅力が欠けていることは否定できませんが、それ以上に問題なのは民主党の分裂も深刻なことで、バイデン政権が民主党の両極に挟まれて迷走する可能性は低くなさそうです。トランプ大統領を引きずり降ろしたいという強い想いから消極的にバイデン前副大統領に投票した人は多いでしょうから、トランプ大統領に投票した人々はもちろん、バイデン前副大統領に投票した人でも多くがすぐにバイデン政権に不満を抱きそうで、バイデン政権の支持率はすぐに低迷しそうです。バイデン前副大統領が来年1月の大統領就任時に78歳と高齢なことも気がかりで、1期での退任が確実視されていますが、1期もたない可能性も低くないと思います。カマラ・ハリス上院議員は初の女性副大統領に就任することになり、次回の大統領選挙の有力候補と考える人は多いでしょうが、バイデン政権の支持率が低迷すると、副大統領であることが足枷になり、次回の大統領選挙で勝ち抜くのは難しいかもしれません。もちろん、副大統領であることは、知名度を上げ、実績を積む好機ともなるわけですが。

 正直なところ、トランプ大統領はあまりにも自己愛が強く、政治を不動産業と同じように考えているところも見られ、まったく支持できませんでした。前回の大統領選挙の直後だったと記憶していますが、現実主義者(気取り)がトランプ大統領の頭の良さを褒め、優れた大統領になる、と予想していました。しかし、率直に言って、トランプ大統領は頭が良いとはいっても、それは詐欺師・扇動者としての才能で、政治家にそうした才能が不要とは言いませんが、トランプ大統領のようにそうした才能に特化した人が世界最強の国の政治面での最高指導者では困ります。前回の大統領選挙の記事では、何とも不安ではあるものの、発足後は「意外と現実的で穏和」と言われるような運営を願っています、と述べましたが、同盟国軽視は懸念された通りで、残念ながら希望は叶いませんでした。

 そういうわけで、トランプ大統領が敗北したことにやや安堵していますが、新型コロナウイルス感染症によるアメリカ合衆国の混乱がなければ、おそらく経済は(少なくとも表面的には)好調なままだったでしょうから、党内分裂が深刻な民主党の候補は敗北していたでしょう。そう考えると、やや複雑な気持ちではあります。もちろん、こうした私の見解がひじょうに偏っており、数十年後と言わず数年後には、バイデン政権を誕生させたことは大きな誤りだった、との評価が定着している可能性もあるとは思いますが。

 前回の大統領選挙の時から、トランプ大統領の日本観はアメリカ合衆国で日本叩きが激しかった1980年代頃の古いものと言われていましたし、安倍前首相がトランプ大統領と「親密な関係」を築いたとはいえ(トランプ大統領の性格を読んで、少なくとも表面的には徹底的に媚びただけとも言えますが、これは必ずしも悪いことだけではなかったように思います)、日本人の私としては、その世界観には警戒せざるを得ませんでした。トランプ大統領の中国叩きに喝采を送る日本人は少なくないようですが、黄禍論の観点(関連記事)からも、日本人の私としては、ヨーロッパや北アメリカ大陸での中国叩きには警戒せざるを得ません。日本では、トランプ大統領の再選で「リベラル」派が悔しがるのを楽しみにしている、といった発言もTwitterで見かけましたが、「リベラル」派から見れば「ネトウヨ」に他ならない私でも、さすがに日本への影響も大きいアメリカ合衆国の大統領選挙で、そうした気分にはなれません。

 大統領選と同時に行なわれた上院選(議席数の1/3の改選)と下院選の結果、上院では民主党の議席数は選挙前より増えそうなものの、過半数に届くのか微妙です。下院は、議席数を減らしそうですが、引き続き民主党が過半数を制しそうです。上院を共和党が制した場合、バイデン政権は政策遂行もままならず、早々に行き詰まるかもしれません。アメリカ合衆国の政治制度は権力の分散化が徹底されており、それに起因する政争の不毛さも指摘されているので、バイデン政権も苦しみそうです。しかし、おかしな大統領が出現した時にその暴走を抑止するという意味で、トランプ政権ではその制度設計が役立った、とも言えそうです。