ヒトの幼児の食べ方の学習

 ヒトの幼児の食べ方の学習に関する研究(Nonaka, and Stoffregen., 2020)が公表されました。日本語の解説記事もあります。この研究は、日本国内のある保育園の0歳児クラスの昼食場面を10ヶ月間縦断的に観察し、スプーンを乳児が使い始めた直後の食事場面を抜き出して、(1)養育者による介助、(2)乳児のスプーン使用、(3)乳児が養育者に向ける視線、という三者の時間的関係を検討しました。

 その結果、養育者は皿の位置や皿の上の食物の配置を調整し、乳児が自分で食べることを可能にする卓上の機会を絶え間なく調整しており、こうした調整の直後に乳児がスプーンを食物に向ける行為が偶然より多く生起していた、と示されました。また、乳児は食事場面では養育者の「顔」よりも「手」を見ている時間がはるかに長く、さらに養育者が卓上の調整を行っている時は、他の状況よりも8倍も多く養育者の「手」を見ている、と明らかになりました。また、食事場面で乳児が養育者の「顔」を見る状況は、「手」を見る状況とは明確に異なっており、乳児が自分で食物をスプーンで口に運んだ直後か、食事と無関係な遊びにスプーンを用いた直後に、自分のしたことを養育者が見ていたかをチェックするかのように、養育者の「顔」を見ることが偶然より多い、と示されました。

 以下、この行動を示した図です。(a)養育者が支える皿に入った食物にスプーンを向ける乳児。(b)皿の上の食物を食べやすくまとめる養育者の介助と、食物にスプーンを向ける乳児。(c)乳児がスプーンで口に食物を運ぶ際に肘に手を添える養育者。(d)食事と無関係な遊びにスプーンを用いる乳児。
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 これらの結果は、食事場面で養育者の「手」に向ける視線と「顔」に向ける視線が異なる役割を担うことを示すとともに、乳児が一人でスプーンを食事にふさわしい方法で使うようになる過程において、(1)養育者による周囲の機会の調整と、養育者の手に乳児が向ける注意の結びつき、(2)乳児の行為に反応を示す養育者と、養育者の顔に乳児が向ける注意の結びつきという、養育者の行為と乳児の注意の間の二種類の双方向の結びつきが存在することを示しています。こうした学習も、人類進化の過程で獲得されてきた認知的基盤に基づくのでしょう。


参考文献:
Nonaka T, and Stoffregen TA.(2021): Social interaction in the emergence of toddler’s mealtime spoon use. Developmental Biology, 62, 8, 1124–1133.
https://doi.org/10.1002/dev.21978