地球環境の変化を引き起こした42000年前頃の地磁気逆転

 地球環境の変化を引き起こした42000年前頃の地磁気逆転に関する研究(Cooper et al., 2021)が公表されました。日本語の解説記事もあります。地質記録には、地球の磁極反転の事例が多数残されています。現在こうした事象が起これば、現代的な電子技術や衛星技術に大混乱をきたすことはほぼ間違いないでしょう。しかし、こうした事象が環境に及ぼし得る影響はほとんど分かっていません。

 最近の大規模な地磁気反転であるラシャンプ・エクスカーションは、41000年前頃に起きた比較的短期間の地磁気事象で、地球磁場の極端な変化が及ぼし得る影響を研究するうえで、最高の機会を提供します。しかし、この事象と同時期に大規模な環境変化および生態系変化が起こったことを示唆するような、有力な証拠が古環境記録から得られているにもかかわらず、この事象の特徴を正確に表し、同時期に起こった地球規模の変化におけるその役割(もしあれば)を解明する方法は、放射性炭素年代測定に限られていました。

 この研究では、正確に年代を特定した大気中放射性炭素記録が新たに提示されました。この記録は、ニュージーランドの湿地帯で数千年間保存されていた古代カウリマツの年輪から得られたものです。失われた要石のようにこの新しい記録を使うことで、地球規模の放射性炭素や氷床コアに残るその他の記録とラシャンプ・エクスカーションの時期とを、上手く一致させることができました。

 この研究は、磁場強度が弱まって極性反転が生じた時期に、大気中放射性炭素が大幅に増加したことを確認しました。この増加の影響をモデル化することにより、地球磁場の極小期(当時の地球磁場は現在の値のわずか6%ほどだったと推定されます)が、大気中オゾン濃度と大気循環に大きな変化をもたらした、と明らかになりました。こうした変化は、42000年前頃に起きたことが別の気候記録に残っているような、地球規模の気候変化や環境変化を同時期に引き起こした可能性があります。地球磁場の変動が大気の温度と循環に地球規模で影響を及ぼし得るというこれらの知見は、変則的で突発的な古環境変化を理解するためのモデルを提供する、と指摘されています。

 ラシャンプ・エクスカーションが起きた41000年前頃は、ネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)の絶滅直前の時期と推測されているので(関連記事)、その観点からも注目されます。ラシャンプ・エクスカーションにより、大きな環境変化や絶滅事象、人類の行動の長期変化が引き起こされた、と推測されていますが、ネアンデルタール人の絶滅もそうした文脈で解釈できるのかもしれません。もっとも、ネアンデルタール人はおそらく数十万年以上ヨーロッパで存続してきた人類集団で、大規模な環境変化を何度も生き延びてきたでしょうから、ネアンデルタール人の絶滅要因は、究極的には現生人類(Homo sapiens)との競合と考えるべきでしょう。もちろん、現生人類とはほぼ無関係に、一部のネアンデルタール人集団は環境変化が原因で絶滅した可能性も高そうですが。


参考文献:
Cooper A. et al.(2021): A global environmental crisis 42,000 years ago. Science, 371, 6531, 811–818.
https://doi.org/10.1126/science.abb8677

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