巨大なハイギョゲノムから明らかになる脊椎動物による陸上進出

 巨大なハイギョゲノムから脊椎動物による陸上進出を明らかにした研究(Meyer et al., 2021)が公表されました。ハイギョ類が属する肉鰭類は、デボン紀に陸地を「征服」し、最終的にはヒトを含む全ての陸生脊椎動物を生み出した分類群です。この研究は、あらゆる動物の中で最大のゲノムを持つことが知られているオーストラリアハイギョ(Neoceratodus forsteri)の染色体品質のゲノムを決定しました。オーストラリアハイギョのゲノムは規模がヒトゲノムの約14倍とひじょうに巨大で、その大部分は、反復配列がひじょうに多い(約90%)巨大な遺伝子間領域およびイントロンに起因しており、条鰭類のものよりも、おもに長鎖散在反復配列からなる四肢類のものに似ていました。

 このハイギョゲノムは、サンショウウオ類の巨大なゲノムとは異なる機構を介して、独立に拡大し続けている、と明らかになりました(その転位性遺伝因子は、今なお活性を有しています)。完全にアセンブリされた17のハイギョ大染色体は他の脊椎動物の染色体とのシンテニー(異なる種の染色体間の遺伝子の同じ順番の配置・領域)を維持しており、全ての小染色体は祖先的な脊椎動物の核型との保存された古い相同性を維持していました。この系統ゲノミクス解析は、ハイギョが四肢類に最も近縁な現生動物群として進化的に重要な位置を占める、という過去の報告を裏づけるもので、陸生化に関連する多くの新機軸を解明する上でのハイギョの重要性を強調しています。

 ハイギョの陸上生活への前適応には、肉鰭内のhoxc13やsall1といった発生遺伝子での肢様の発現の獲得が含まれます。ハイギョ類に見られる四肢類様の生物学的特徴には、進化速度の増大と、肺サーファクタントや嗅覚受容体遺伝子ファミリー(空気中のにおいの検知に関わるタンパク質をコードする遺伝子群)の拡大といった、絶対的な空気呼吸に関連する遺伝子の重複が寄与したと考えられます。これらの知見は、脊椎動物進化におけるこの重大な移行についての理解を進展させるものです。


参考文献:
Meyer A. et al.(2021): Giant lungfish genome elucidates the conquest of land by vertebrates. Nature, 590, 7845, 284–289.
https://doi.org/10.1038/s41586-021-03198-8