大河ドラマ『青天を衝け』第9回「栄一と桜田門外の変」

 今回は安政の大獄の影響を中心とした話となりました。栄一は江戸から一時的に戻った長七郎から政治情勢を聞き、感化されていきます。当時、このように留学や公務などで江戸に行き地方に戻った人々が地元の人々に思想的影響を及ぼしていき、そうした構造はすでに幕末動乱以前にかなりの程度築かれていたのでしょう。まだ栄一の農村部の話と「中央政界」の話とが直接的には接続していませんが、幕末の歴史ドラマとしてなかなか上手い構成になっているように思います。栄一が江戸留学で喜作に先を越されて焦っているところは、青春群像劇的性格が強く出ていて、ドラマとしてなかなか面白くなっています。

 井伊直弼は、安政の大獄を中心とした話だったのに、予想していたよりも出番が少なかったのですが、将軍の家茂とのやり取りや桜田門外の変では見せ場がありました。まあ、井伊直弼は知名度の高い人物ですが、本作では主人公と直接的に関わるわけではないので、桜田門外の変の描写がやや長めだったことからも、優遇されて出番は多かったと言うべきでしょうか。本作の井伊直弼は、自信がなく頼りなさを自他ともに認めており、これまでの大河ドラマで多かったように思われる、大物感溢れる人物像とはかなり異なっていました。この新たな井伊直弼像は、今後の幕末時代劇に影響を与えるかもしれません。井伊直弼とともに徳川斉昭も今回で退場となります。史実に近いのでしょうが、本作の徳川斉昭もこれまでの大河ドラマのように奇矯な人物として描かれており、強い印象を残しただけに、寂しいものです。