白亜紀の2種の哺乳形類の掘削性と進化的発生

 白亜紀の2種の哺乳形類の掘削性と進化的発生に関する研究(Mao et al., 2021)が公表されました。哺乳形類(Mammaliamorpha)は、トリティロドン類および哺乳類の最終共通祖先と、その全ての子孫から構成されます。トリティロドン類は非哺乳型類(nonmammaliaform)の植食性犬歯類で、後期三畳紀に出現し、ジュラ紀に多様化を遂げ、前期白亜紀まで存在しました。真三錐歯類は、異論はあるものの、一般に絶滅した哺乳類群と考えられてきました。

 本論文は、中国の熱河生物相から新たに発見された、前期白亜紀(1億4500万~1億年前頃)のトリティロドン類および真三錐歯類について報告します。一方の化石は、遼寧省の九仏堂累層から出土したトリティロドン類(哺乳類様爬虫類)の一種で、熱河生物相では初めて特定されました。その体長は316mmで、「Fosiomanus sinensis」と命名されました。もう一方の化石は正三錐歯目(有胎盤哺乳類と有袋類の現生種と遠縁の関係にある動物種)の一種で、熱河生物相では一般的に見られ、「Jueconodon cheni」と命名されました。これは遼寧省の義県累層で発見され、体長はFosiomanusより小さい183mmです。

 熱河生物相では、真三錐歯類は一般的ですが、トリティロドン類はこれまで見つかっていませんでした。これら2種は互いに遠縁ですが、掘削生活に適応した収斂的な特徴を有しており、この生物相で知られる最初の「引っかき型の掘削動物」です。また、これら2種はともに、単弓類や哺乳類の祖先的状態と比較して仙前椎の数が多く、体節性変化およびホメオーシス変化が確認されました。とくに、トリティロドン類の標本は、既知の単弓類(哺乳類およびその絶滅近縁生物からなり、石炭紀までさかのぼります)と比較して、仙前椎の数が最も多く、胸郭が最も長い、と確認されました。

 これらの化石は、脊椎動物の進化学と発生生物学に関する数々の研究で注目されてきた、哺乳形類の軸骨格の進化的発生に光を当てます。これらの化石に記録されている表現型は、現生の哺乳類に認められるような、軸骨格の体節形成およびHOX遺伝子発現における発生学的な可塑性が、ステム群哺乳形類にすでに備わっていたことを示しています。こうした発生機序と自然選択との相互作用が、哺乳形類のさまざまなクレード(単系統群)で独立に進化したボディープランの多様な表現型を支えていた、という可能性がある。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用(引用1および引用2)です。


古生物学:遠縁の関係にある2種の穴掘り哺乳類が発見された

 中国北東部の前期白亜紀の熱河生物相から発見された、哺乳類の祖先である哺乳形類の2種の化石について記述した論文が、Nature に掲載される。これら2種は、遠縁の関係にあるが、収斂進化を示す穴掘り生活様式の特徴を複数有しており、この生態系で初めて発見されたスクラッチディガー(引っかき掘りをする穿孔哺乳類)となった。

 今回、Jin Meng、Fangyuan Maoたちの研究チームは、前期白亜紀(約1億4500万~1億年前)の、遠縁の関係にある2種の動物の化石について報告している。第1の化石は、遼寧省の九仏堂累層から出土したトリティロドン類(哺乳類様爬虫類)の一種で、熱河生物相では初めて特定された。その体長は316ミリメートルで、Fosiomanus sinensisと命名された。第2の化石は、正三錐歯目(有胎盤哺乳類と有袋類の現生種と遠縁の関係にある動物種)の一種で、熱河生物相では一般的に見られ、Jueconodon cheniと命名された。この動物種は、遼寧省の義県累層で発見され、体長は183ミリメートルでFosiomanusより小さかった。

 穴を掘る生活様式に適応した哺乳類は、穴掘りのための特殊な特徴があることで識別される。Mengたちは、FosiomanusとJueconodonが、遠縁の関係にあるにもかかわらず、こうした特殊な特徴を共に持っていたことを見いだした。例えば、この2種は、共に前肢より後肢が短く、短い尾と強靭な爪のある幅広の前肢を持っており、胸椎の数も多かった。Mengたちは、この2種に共通する特徴は、同じような選択圧の下で独立に進化したと結論付けている。


古生物学:白亜紀の2種の哺乳形類の掘削性と進化的発生

古生物学:穴掘り動物を発掘する

 今回、中国の熱河生物相で新たに発見・記載された、前期白亜紀の2種の化石哺乳類において、穴掘りの生活様式への収斂適応が見いだされている。一方の標本は、現生の有胎盤哺乳類および有袋類に遠縁の真三錐歯類のもので、体長は約180 mmだった。真三錐歯類は熱河生物相ではごく一般的な哺乳類である。もう一方の標本は、この生物相では非常にまれな、いわゆる哺乳類型爬虫類の中で最も哺乳類に近い動物であるトリティロドン類のもので、これまでに見つかったトリティロドン類の標本の中でも最も保存状態が良好で最も年代が新しい。そのサイズは、体長300 mm以上と、真三錐歯類の標本の2倍であった。これら2種の関係は、カモノハシとセンザンコウ以上に遠縁だが、いずれも掘削への顕著な適応の数々を有していた。これらの適応には、胸椎と肋骨の数が通常より多く、胸部と腰部の境界が不鮮明であることなどが挙げられる。特に、トリティロドン類の標本は、既知の単弓類(哺乳類およびその絶滅近縁生物からなり、石炭紀までさかのぼる)と比べて仙前椎の数が最も多く胸郭が最も長い。今回の発見は、現生哺乳類の椎骨数の変動に関する研究に、時間的な奥行きという極めて達成の難しい要素を加えるものである。



参考文献:
Mao F. et al.(2021): Fossoriality and evolutionary development in two Cretaceous mammaliamorphs. Nature, 592, 7855, 577–582.
https://doi.org/10.1038/s41586-021-03433-2