アスガルド類古細菌の多様性および真核生物との関係

 アスガルド類古細菌の多様性および真核生物との関係に関する研究(Liu et al., 2021)が公表されました。アスガルド類は最近発見された古細菌の上門で、真核生物に最も近縁な古細菌を含む、と推測されています(関連記事)。真核生物の祖先古細菌がアスガルド上門に属するのかどうか、また、その祖先が他の全ての古細菌類と姉妹群の関係にあるのかどうか(すなわち、生命系統樹が2つのドメインからなるのか、それとも3つのドメインからなるのか)については、議論が続いています。

 本論文は、アスガルド類古細菌の完全またはほぼ完全なゲノム162例について、比較解析の結果を提示します。このうち75例はメタゲノム再構築ゲノム(MAG)で、これまで未報告のものです。得られた結果は、アスガルド類の系統発生学的多様性を著しく拡大するもので、これに伴い、新たに6つの門が提案されます。これらには、暫定的に「ウーコンアーキオータ(Wukongarchaeota)」と命名された深い分岐の1系統が含まれます。

 この系統ゲノミクス解析の結果は、真核生物が古細菌内に起源を持つのか(生命系統樹の2ドメイン説)、それとも古細菌と真核生物が共通祖先らから分岐したのか生命系統樹の(3ドメイン説)、という真核生物とアスガルド類古細菌との間の進化的関係を明確に解明するものではありませんが、系統発生の構築に用いる種や保存遺伝子の選択に依存して、真核生物のアスガルド類起源(拡大されたヘイムダルアーキオータ–ウーコンアーキオータ系統の姉妹群として)、あるいは真核生物祖先の古細菌内でのより深い分岐のいずれかを支持しています(2ドメイン説)。

 アスガルド類ゲノム162例を用いた網羅的なタンパク質ドメイン解析の結果、真核生物に特徴的なタンパク質(ESP)の一群が大幅に拡大されました。アスガルド類のESPには不均一な系統分布および多様なドメイン構造が認められ、これは遺伝子の水平伝播、遺伝子喪失、遺伝子重複、ドメインシャッフリングを介した動的な進化を示唆しています。アスガルド類古細菌の系統ゲノミクスは、真核生物の祖先古細菌(アスガルド類内またはアスガルド類外)において、古細菌の可動性の「ユーカリオーム(eukaryome)」の要素が、大規模な遺伝子水平伝播を介して蓄積したことを示しています。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用です。


進化学:アスガルド類アーキアの拡大された多様性およびその真核生物との関係

進化学:アスガルド類アーキアの新たなメタゲノム再構築ゲノム

 アスガルド類アーキアは、真核生物に特徴的なタンパク質(ESP)を多数コードしており、アーキアと真核生物の間の進化的関係を解明する試みにおいて重要な上門だと見なされている。今回E Kooninたちは、アスガルド類アーキアのメタゲノム再構築ゲノム(MAG)75例を新たに再構築し、それらを、公開されている87例のMAGと合わせて比較解析を行った結果を報告している。彼らは、アスガルド類アーキアのオルソログ遺伝子のクラスターを構築して系統発生学的解析に用いることで、新たに6つの主要なアスガルド類系統を発見した。著者たちはさらに、アスガルド類アーキアのコア遺伝子の一群を明らかにするとともに、アスガルド類ゲノムの真核生物的特徴を描写している。今回の解析結果は、真核生物がアーキア内に起源を持つのか(生命系統樹の2ドメイン説)、それともアーキアと真核生物が共通祖先らから分岐したのか(同3ドメイン説)という疑問を完全に解決するものではないが、今回示された系統ゲノミクス解析の結果は、真核生物が、アスガルド類内から生じたか、アーキア内のより深い分岐を持つ系統から生じたという筋書き(つまり2ドメイン説)と一致する。



参考文献:
Liu Y. et al.(2021): Expanded diversity of Asgard archaea and their relationships with eukaryotes. Nature, 593, 7860, 553–557.
https://doi.org/10.1038/s41586-021-03494-3

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 0

この記事へのコメント