外来のマングースによる在来のカエルの進化

 外来のマングースによる在来のカエルの進化に関する研究(Komine et al., 2021)が公表されました。日本語のサイトからの解説記事もあります。もともと強力な捕食者がいない島の在来種は、あまり「逃げず」、新たに侵入してきた外来の捕食者に簡単に食べられてしまう、と知られています。その中でも、新たな捕食者からうまく逃げられない個体が頻繁に食べられ、少しでも上手く逃げられる個体が生き残りやすい、と考えられます。これは、高い逃げる能力という性質が世代を超えて受け継がれていく可能性を意味します。ここから、外来捕食者の強い影響を受けた島の在来種は、新たな捕食者に応じた逃避能力を発達させる、と予想されます。しかしこれまでは、新たな外来の捕食者に対して在来種がどのように応答しているのか、その詳細は知られていませんでした。

 奄美大島に1979年に導入されたマングースは、島全域には拡大しなかったものの、導入地点に近い地域では多くの在来種を減少させました。その後、環境省の駆除活動によりほとんどのマングースは駆除されましたが、もし在来種の逃避能力がマングースの捕食圧により進化したのであれば、マングースがいなくなっても、その変化が持続している、と予想されます。また、奄美大島には在来の捕食者としてヘビ類がいます。ヘビ類は待ち伏せ型の捕食者ですが、マングースは追跡型の捕食者です。ヘビ類などの待ち伏せ型の捕食者から逃げるためには瞬発的に逃げればよいものの、マングースなどの追跡型の捕食者(捕食性哺乳類)から逃げるためには、逃げ続ける能力(持久力)が必要と考えられます。

 この研究は、こうした捕食者のタイプの変化に在来種のカエルがどのように応答しているのか調べるため、2015年と 2016年の6~8月にマングースの影響が異なる地域において、逃避に関わる脚の長さや持久力の指標となるジャンプ可能回数などを計測しました。脚の長さはノギスを用いて計測し、ジャンプ可能回数は、手持ち網の中で何回までジャンプを繰り返す事ができるのか、その上限を計測しました。その結果、マングースの影響が強かった地域のカエルは、他地域と比較して相対的な脚の長さが長く、ジャンプ可能回数が多い、と明らかになりました。

 これは、マングースという追跡型の捕食者に応答し、わずか数十年の間にカエルの形態や持久力が発達した事を示しています。また、この調査を行なった時点では、環境省によりほとんどのマングースが駆除されています。ここから、マングースがいなくなっても、一度発達した形態や持久力はすぐには戻らない事が示されました。これは、マングースによりカエルの形態や持久力がわずかな時間で急速に進化し、世代を超えて受け継がれた可能性を示す結果です。外来種は、「逃避能力が低い」という島嶼生物ならではの性質を短期間のうちに変化させている、と明らかになりました。

 外来種による在来種の減少についてはとても多くの報告がありますが、形態や運動機能といった性質への影響は解明が始まったばかりです。この性質の変化という観点で外来種と在来種の関係を見ると、他の多くの生物でこれまで知られていなかった影響が明らかになるかもしれません。たとえば、外来種と問題なく共存しているように見える在来種も、実際は、本来持つ様々な性質が外来種によって変化しているかもしれません。また、外来種を駆除する事で数が回復した在来種も、その性質は本来持っていた性質とは異なるかもしれません。とりわけ、これまで多くの島嶼生物が外来種によって絶滅してきた、と知られていますが、たとえ絶滅に至っていない場合でも、本来の性質が変化している可能性も考えられます。島嶼生物の性質は、強力な捕食者がいないという特殊な環境で独自に進化してきた歴史を反映しています。進化の独自性を反映する性質への影響を評価することで、外来種による在来種への影響の実態や根深さが明らかになる、と期待されます。


参考文献:
Komine H, Iwai N, and Kaji K.(2021): Rapid responses in morphology and performance of native frogs induced by predation pressure from invasive mongooses. Biological Invasions, 23, 4, 1293–1305.
https://doi.org/10.1007/s10530-020-02440-0

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