鱗竜類の起源

 鱗竜類の起源に関する研究(Martínez et al., 2021)が公表されました。双弓類爬虫類の初期進化については、主竜形類(ワニ類や鳥類や非鳥類恐竜類)と鱗竜形類の間で、起源および初期進化に関する理解に顕著な差異が存在する、という特徴があります。鱗竜類は有鱗爬虫類で、有鱗目(トカゲ類とヘビ類)とニュージーランドで見られる爬虫類のトゥアタラなどのムカシトカゲ目が含まれます。主竜形類には三畳紀の多様な系統にわたって数百もの化石種が存在するのに対して、11000種以上から構成され、最も多様な現生陸生脊椎動物の分類群となる鱗竜形類には、わずかな断片的化石からなる極めてまばらな初期の化石記録しかなく、そのほとんどは系統発生学的な類縁関係が不確かで、分布もヨーロッパに限定されています。そのため、鱗竜類の姉妹系統群(ワニ類を含む主竜様類、鳥類型恐竜、非鳥類型恐竜)と比較して、初期進化についてはほとんど分かっていません。

 本論文は、アルゼンチンで発見された後期三畳紀の新属新種の爬虫類(Taytalura alcoberi)の三次元的に保存された頭蓋について報告します。この標本は、さまざまなデータタイプおよび最適性基準を用いて、系統発生学的に進化の最初期の鱗竜形類であることが強く推定され、既知の最古の鱗竜類の化石となる可能性があります。頭蓋のマイクロCTスキャンによって、この新種鱗竜類の頭蓋が初期の双弓類からどのように生じたかが詳細に明らかになり、従来はムカシトカゲ類と関連づけられていた複数の形質が実は鱗竜形類進化のはるかに早い時期に生じていた、と示唆されました。この新種鱗竜類は、ムカシトカゲ類の進化的によく保存された頭蓋構造が全ての鱗竜類の原始形質状態であること、三畳紀にはステム群とクラウン群の鱗竜類が少なくとも1000万年にわたり同時に存在していたこと、初期の鱗竜形類が従来考えられていたよりもはるかに広範な地理的分布を有していたことを示唆しています。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用(引用1および引用2)です。


古生物学:鱗竜類の起源

 三畳紀のアルゼンチンに生息していたトカゲ似の爬虫類の頭蓋骨化石について記述された論文が、今週、Nature に掲載される。この化石の年代測定が行われて、約2億3100万年前のものとされ、ヘビ、トカゲ、ムカシトカゲの進化へとつながる分類群の起源を解明するための手掛かりが得られた。

 鱗竜類は、有鱗爬虫類で、有鱗目(トカゲ類とヘビ類)とムカシトカゲ目[トゥアタラ(ニュージーランドで見られる爬虫類)など]が含まれる。鱗竜類は、1万1000種以上からなり、最も多様な現生陸生脊椎動物の分類群だが、断片的な化石記録しかないため、その姉妹系統群(ワニ類を含む主竜様類、鳥類型恐竜、非鳥類型恐竜)と比べて、初期進化についてはほとんど分かっていない。

 今回Ricardo Martínezたちが記載したのは、保存状態の良い爬虫類の頭蓋骨化石で、有鱗目とムカシトカゲ目の分岐が起こる前のものとされ、鱗竜類の出現に近い時期のものであり、これまでで最も古い鱗竜類の1つとなる可能性がある。この頭蓋骨には、現生種のトゥアタラと共通の特徴があり、ムカシトカゲ目に特有と考えられるいくつかの解剖学的特徴が鱗竜類進化の初期に出現したことが示唆されている。この化石は、ヨーロッパで最古の鱗竜類よりも約1100万年後のもので、南米で最古の鱗竜類とほぼ同時代のものだ。今回の知見は、鱗竜類のステム群とクラウン群が、三畳紀の少なくとも1000万年間にわたって共存しており、初期の鱗竜類の地理的分布が、以前考えられていたよりもかなり広いことを示している。


進化学:三畳紀のステム群鱗竜類が明らかにするトカゲ様爬虫類の起源

Cover Story:ギャップを埋める:爬虫類の進化における大きな遷移に光を当てるTaytaluraの頭蓋化石

 表紙は、新たに発見され、Taytalura alcoberiと名付けられた三畳紀のトカゲに似た動物の想像図である。爬虫類の進化を示す化石記録は、鱗竜類、すなわち有鱗類(トカゲ類とヘビ類)およびムカシトカゲ類を包含する分類群に関してはいささかまばらである。今回R Martínezたちは、アルゼンチンで発見され、年代が約2億3000万年前と推定されたT. alcoberiの頭蓋化石を用いて、このギャップを埋めるのに寄与している。この保存状態の良い頭蓋は、有鱗類とムカシトカゲ類が分岐する前に進化した系統を代表するもので、従って既知で最古の鱗竜類の一種となる。著者たちは、Taytaluraと現代のムカシトカゲの頭蓋には共通した特徴があると指摘し、ムカシトカゲ類にのみ見られると推測されてきたいくつかの解剖学的特徴は、鱗竜類の進化の初期に生じたはずであると示唆している。



参考文献:
Martínez RN. et al.(2021): A Triassic stem lepidosaur illuminates the origin of lizard-like reptiles. Nature, 597, 7875, 235–238.
https://doi.org/10.1038/s41586-021-03834-3