エキソーム塩基配列の解読および解析

 エキソーム塩基配列の解読および解析に関する研究(Backman et al., 2021)が公表されました。ヒトの遺伝学の大きな目標は、自然に生じた変動を用いて、ゲノムの各タンパク質コード遺伝子の変化が表現型に及ぼす影響を理解することです。2017年にイギリスバイオバンクは約50万人のイギリス人の一塩基多型遺伝子型決定データを発表し、多くの形質や疾患について、ありふれた多様体との遺伝的関連解析に用いられてきました。

 この研究は、イギリスバイオバンク研究の参加者454787人について、全エキソーム塩基配列解読(WES)を行ない、タンパク質を変化させる多様体およびその影響を調べました。その結果、約1200万のコード多様体が特定され、そのうち約100万が機能喪失多様体、約180万が有害なミスセンス(アミノ酸が変わるような変異)多様体である、と明らかになりました。これらの多様体について、3994の健康関連形質との関連を検討したところ、564の遺伝子が形質と関連する、と示されました。

 稀な多様体の関連は、ゲノム規模関連研究(GWAS)で明らかになった座位に多く存在しましたが、大半(91%)はありふれた多様体のシグナルとは無関係でした。また、肝疾患や眼疾患や癌などに関連する形質の危険性を高めるいくつかの関連に加えて、高血圧(SLC9A3R2遺伝子)、糖尿病(MAP3K15およびFAM234A遺伝子)、喘息(SLC27A3遺伝子)の危険性を低下させる関連も見つかりました。6つの遺伝子が脳画像表現型に関連しており、そのうち2つは神経発生に関わる遺伝子(GBE1およびPLD1遺伝子)でした。

 別のコホートでの利用可能で再現性に充分な検出力のあるシグナルのうち81%が確認され、さらにこれらの関連シグナルは、ヨーロッパ系とアジア系とアフリカ系の人々の間でおおむね一致していました。この研究は、遺伝子と形質の関連を特定し、遺伝子機能を解明し、GWASシグナルの根底にあるエフェクター遺伝子をより大規模に明らかにする上での、エキソーム塩基配列解読の能力を示しています。人類の進化や拡散の歴史に関する研究でも大いに活用できそうで、注目されます。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用です。


遺伝学:英国バイオバンク参加者45万4787人のエキソーム塩基配列の解読および解析

遺伝学:50万人近くのエキソームの遺伝的関連解析

 4年前、英国バイオバンクは50万人の英国人のSNPジェノタイピングデータを発表した。このデータは以降、数え切れないほど多くの形質や疾患について、ありふれたバリアントとの遺伝的関連解析に用いられている。M Ferreiraたちは今回、同じコホートの45万4787人について全エキソーム塩基配列解読(WES)を行い、タンパク質コードバリアントと3998の健康関連形質との関連を調べ、564の遺伝子と492の形質が関わる、計8865の関連(2283の冗長性のない関連)を特定している。これらの関連の多くは、近傍にある既知のありふれたバリアントとは無関係で、これによってWESデータの作成がさらなる価値をもたらすことが実証された。研究チームはさらに、シングルトンバリアントとの関連、疾患との防御的な関連、量的形質との関連、血液中の体細胞変異との関連など、特定の関連についてより詳細に調べている。今回の研究には、祖先系統に特異的な関連解析や、このような大規模なデータセットでまれなバリアントのインピューテーションを行う能力を評価する解析も含まれている。



参考文献:
Backman JD. et al.(2021): Exome sequencing and analysis of 454,787 UK Biobank participants. Nature, 599, 7886, 628–634.
https://doi.org/10.1038/s41586-021-04103-z

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