森安孝夫『シルクロード世界史』

 講談社選書メチエの一冊として、2020年9月に刊行されました。電子書籍での購入です。本書は「陸のシルクロード」と「前近代ユーラシア世界」を同一視する著書の立場からの「前近代ユーラシア世界史」です。冒頭の歴史学と歴史教育に関する提言には、教えられるところが少なくありません。本書で重点的に取り上げられる「中央ユーラシア」は、東西は旧満州西部からハンガリーまで、南北はチベット高原からシベリア南返までとなる乾燥地帯です。また本書の前近代史の主要な舞台はユーラシアとアフリカ北部だけで、それは他地域の文明がヨーロッパ人の侵略により破壊され、その後のグローバル世界史につながらなかったから、とされています。これについては異論が多いかもしれません。

 経済力と軍事力と情報伝達能力を重視した本書の8段階の時代区分はなかなか興味深いものです。それは、11000年前頃以降の農業革命(第一次農業革命)、5500年前頃以降の四大文明の登場(第二次農業革命)、4000年前頃以降の鉄器革命(第三次農業革命)、3000年前頃以降の騎馬遊牧民集団の登場、1000年前頃以降の中央ユーラシア型国家優勢時代、500年前頃以降の火薬革命と海路によるグローバル化、200年前頃以降の産業革命と鉄道・蒸気船(外燃機関)の登場、100年前頃以降の自動車・航空機(内燃機関)と電信の登場です。本書は疑問が呈されていることを認識しながら、あえて「四大文明」という概念を提示しますが、やはりその有効性には疑問が残ります。ただ、全体的にはなかなか適切な時代区分だと思います。もちろん本書も指摘するように、世界史の時代区分は他にもあり得ます。

 本書は、この時代区分にしたがって農業開始からの世界史を概観した後、世界史における中央ユーラシアの重要な役割を解説していきます。これは、馬の家畜化、とくに騎乗技術の開発が大きく、移動力の飛躍的発展をもたらした騎乗技術の拡散により各地で大規模な国家(帝国)が成立します。遊牧国家の発展・維持に不可欠だったのが「国際」商業、つまりシルクロードを通じた貿易で、遊牧民の日常生活の維持に必要だったのが、境界地帯での農耕民との交易でした。この北方の遊牧民勢力と南方の農耕民勢力との相克は、ユーラシアにおいて東(匈奴と漢など)から西(スキタイとギリシア・ローマなど)まで広範に見られる、と本書は指摘します。また本書は、シルクロード貿易の本質が奢侈品だったことを強調します。

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