先史時代のアンデスにおける頭蓋穿孔

 先史時代のペルーのクスコ地域で、オカルト的民間療法としてではなく、医療目的としての頭蓋穿孔が行なわれていたことを指摘した研究(Andrushko et al.,2008)が報道されました。これは、従来の通説をさらに補強する研究となります。

 この研究では、ペルーのクスコ地域の埋葬地から、頭蓋穿孔のある66人分の頭蓋骨が調べられました。何人かには複数の頭蓋穿孔があったため、合計では109の頭蓋穿孔が観察されました。全体の生存率は83%と高く、感染症もほとんどありませんでした。年代別にみると、初期の生存率が1/3ていどだったのに、後期は8~9割と高くなっており、経験の蓄積による頭蓋穿孔技術の改善があったと考えられます。

 頭蓋穿孔は頭蓋骨の左側に集中しており、右利きの戦士が多いので、戦闘のさいに右手の棍棒で相手の頭部を殴ることが多く、その結果として生じた膜下血腫を取り除くために、このような外科手術が広く実施されたのではないか、と分析されています。

 先スペイン期のアメリカ大陸のさまざまな技術のなかには、現在では失われてしまったものも多くあると思われますが、そのなかにはこのように解明されつつあるものもあります。今後、先スペイン期のアメリカ大陸のさまざまな技術が、さらに解明されることが期待されます。


参考文献:
Andrushko VA, and Verano JW. et al.(2008): Prehistoric trepanation in the Cuzco region of Peru: A view into an ancient Andean practice. American Journal of Physical Anthropology, 137, 1, 4-13.
http://dx.doi.org/10.1002/ajpa.20836

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