遺伝子組み換え綿花の導入による弊害

 バチルス=チューリンゲンシス(Bacillus thuringiensis)という土壌細菌由来のタンパク質を発現する遺伝子組み換え作物は、Bt作物と呼ばれています。Bt作物は、害虫を駆除し、新たに殺虫剤を必要とすることなく、収穫量を上げることができます。しかし、中国北部で10年間にわたり実施された現地調査から、Bt綿花の栽培により、中国北部における害虫の個体群数のバランスが崩れ、以前はきわめて少数であった害虫のカメムシが、近年になって急増していることが明らかになった、との研究(Lu et al., 2010)が公表されました。

 この研究では、中国北部での遺伝子組み換え作物導入後、従来の殺虫剤使用が減少したため、カメムシの個体群数が最近になって急増したことが示唆され、カメムシが多様な植物を食べるため、葡萄、林檎、桃、梨などのほかの植物にとっても新たな脅威になっている、と指摘されています。この研究結果は、ある特定の害虫に限定した駆除戦略が、標的外の害虫を急増させる可能性を警告するものであり、地域全体を対象とする駆除戦略を実施する前に、同じような可能性の有無を検討する必要性が指摘されています。遺伝子組み換え作物の導入がもたらす環境への影響について、具体的な事例が報告されたのは意義深く、今後、遺伝子組み換え作物を導入するにあたって対策を講じる際に、寄与するところが少なくないでしょう。


参考文献:
Lu Y. et al.(2010): Mirid Bug Outbreaks in Multiple Crops Correlated with Wide-Scale Adoption of Bt Cotton in China. Science, 328, 5982, 1151-1154.
http://dx.doi.org/10.1126/science.1187881

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