野口実『武門源氏の血脈 為義から義経まで』

 2012年1月に中央公論新社より刊行されました。著者は武士見直し論の代表的研究者の一人で、ネットで評判になっていましたし、今年の大河ドラマ『平清盛』の時代背景をもっと詳しく知るという目的もあって、購入して読みました。本書では、平安時代末期の武門源氏の代表的人物である為義・義朝・頼朝・義経が取り上げられ、近年の研究成果に基づいてその事績が紹介され、通俗的な歴史観とは異なるところの多分にある解釈が提示されています。著者は武士見直し論の代表的研究者の一人だけに、本書では武士と貴族を対立的に把握するという通俗・伝統的歴史観が批判・相対化されており、こうした通俗・伝統的歴史観は今でも根強いようにですから、人物伝という一般にも理解しやすい形式での本書の刊行は有意義だろう、と思います。

 今年の大河ドラマ『平清盛』では、為義は小物感全開の人物として描かれていますが、本書では、日本列島各地の流通拠点に子息を配し、地方の武力を直接掌握しようとする先鋭的な構想が為義にあったことや、為義が院から疎外される要因とされてきた粗暴なふるまいについても、家人の保護を一義的に考えたことによる側面が見出せることなど、武門源氏の低迷期に不遇をかこっていた、という通説的な為義像を修正するような見解が提示されています。また本書を読むと、頼朝の覇権は父の義朝の遺産によるところが大きかったことも了解されます。義朝は結果的に政治的敗者として生涯を終えたために、一般的にはあまり高く評価されていないように思われるのですが、鎌倉幕府成立の前提として、義朝の果たした役割はひじょうに大きかったように思います。

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