乳児期の言語獲得の遺伝的影響

 乳児期における言語獲得の遺伝的影響に関する研究(Pourcain et al., 2014)が公表されました。じゅうらいの研究でも、乳児の語彙獲得に遺伝的影響のあることが指摘されていました。この研究は、生後15~30か月の乳児10000人以上から得た言語熟達度データを用いて、語彙評価の結果と遺伝子多様体との関連を調べました。その結果、発達初期における1語の獲得と有意に関連する特定の1つのゲノム領域が同定されたものの、その後の2語の組み合わせが発達する時期と関連するゲノム領域は同定されなかった、とのことです。この新たに同定されたゲノム領域は、難読症や言語関連疾患との関わりが指摘されている3番染色体上の特定の部分にあるROBO2遺伝子の近くに位置しているそうです。言語能力に関わる遺伝子としてはFOXP2が有名で、言語能力には複数の遺伝子が関わっているのでしょう。人間(に限らず全生物)の表現型の多くは、単一の遺伝子ではなく複数の遺伝子が関わっているのではないか、と思います。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用です。


【遺伝】赤ちゃん言葉の基盤

 乳児を対象とした研究で、初期の言語獲得に関連する遺伝子が新たに同定されたことを報告する論文が、今週掲載される。この新知見で、発話の発達と難読症などの言語関連障害に関与する経路に関する理解を深められるかもしれない。

 子どもは生後約10~15か月で言葉をしゃべり始め、その後、話し言葉の語彙と文法の複雑度が急速に向上する。2語の組み合わせで自己表現することが多い生後24か月の双生児に関する過去の研究では、この語彙の獲得に遺伝性が認められることが明らかになっていた。

 今回、Beate St Pourcainたちは、生後15~30か月の乳児10,000人以上から得た言語熟達度データを用いて、語彙評価の結果と遺伝子多様体との関連を調べた。その結果、発達初期における1語の獲得と有意に関連する特定の1つのゲノム領域が同定されたが、その後の2語の組み合わせが発達する時期と関連するゲノム領域は同定されなかった。

 この新たに同定されたゲノム領域は、3番染色体上の特定の部分にあるROBO2遺伝子の近くに位置している。3番染色体は、難読症や言語関連疾患と関連することが過去の研究で明らかになっており、ROBO2遺伝子がコードするタンパク質は、複数の神経過程で重要な役割を担っている。



参考文献:
Pourcain B. et al.(2014): Common variation near ​ROBO2 is associated with expressive vocabulary in infancy. Nature Communications, 5, 4831.
http://dx.doi.org/10.1038/ncomms5831

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